045-264-6590
CLOSE

SYMPTOM

下痢 ~原因と受診のタイミング~

下痢 クリニックに訪れる方は大きく2つのパターンがあります。

①急な下痢、嘔気(ないこともありますが)、発熱で来院

②慢性的に下痢で困っているため来院

つまり下痢は急性の経過をたどる場合と慢性的なものがあるということです。今回は下痢の原因や治療法、病院受診のタイミングの目安について紹介します。

*下痢とは?

*原因は?

*診断は?

*治療法は?

*受診のタイミングは?

*まとめ

 

*下痢とは?

下痢、そもそもしっかりした定義はあるのでしょうか?医学的には一般的に、水分量の多い液状の糞便を頻回に排出する状態で、1 日に200g以上の便がある場合と定義されています。排便習慣は個人差も大きいものの、便の量は健康成人では100-200g/日と言われており、200gを超えると便中の水分量が多くなった状態が示唆されます。

※食物繊維の多い食事をする方は体積の大きい便が排泄されるが、これは下痢の定義にはあてはまりません。

便の水分量はおおむね70%でちょうど有形便(バナナ状)となりますが、この水分量が80~90%となると泥状便(形のないどろどろの便)となり、90%以上となると水様便(サーっと流れるように出る便)となります。

*原因は?

下痢の原因はメカニズムから大きく3つにわけることができます。まずはそちらをご紹介します。

口から摂取した食物や飲み物は胃から十二指腸、小腸を経て大腸に送り込まれます。さらに食物を分解するための消化液が加わるため、 1日に消化管に流入する水分量は合わせて 10Lに及びます。そのうち 8lL以上は小腸で吸収され,大腸には 1.5~2L が流入します。通常はその大部分が大腸で再吸収され,糞便には約 0.1L(=100ml) の水分が排泄されるのみです。この排泄される水分量が増えると便の量が増え、下痢になります。

ではどのようなメカニズムでこの水分量が増えてしまうのでしょうか?

①腸の動きが活発化し、水分を吸収する間もなく便が腸管を通過してしまう(運動亢進性下痢)

→このパターンの場合、ストレスや香辛料の過剰摂取、腸管の動きを促す下剤の使用によって腸の蠕動運動が活発になります。すると通常より短い時間で消化物が大腸の中を通り過ぎるため、十分に水分の再吸収ができないまま便となり、下痢として排泄されることになります。

②何らかの原因で腸液の分泌量が増え、水分量がUp、下痢となる(分泌性・滲出性痢)

→例えば感染による炎症や炎症性の腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)により粘膜の損傷があり、水分が異常に分泌されたり染み出してしまう病態です。

③消化管の中身の浸透圧が高いため、水分が腸管に引き込まれ、下痢となる(浸透圧性下痢)

→吸収されにくい高浸透圧性の物質が腸管内に多量に存在するため、水分が腸管の中に移動して起こる下痢。わかりやすいのは飲酒後の下痢やマグネシウム製剤の内服による下痢です。また、脂肪の吸収不良があったり、キシリトールなどの過剰摂取があっても浸透圧性の下痢をきたします。原因物質を取り除けば自然に下痢はおさまることになります。

*診断は?

原因によって治療法も異なります。まずは発症の経過や不随する(その他の)症状から原因を探ることが重要です。

①急性の下痢 →発熱や嘔気を伴う下痢の場合、何らかの感染による下痢の可能性が考えられます。細菌性の腸炎やウイルス性の腸炎が鑑別に挙がります。他にも下剤の使用、下痢を引き起こす薬剤の使用、炎症性腸疾患などの重篤な疾患の初期症状、悪性腫瘍も下痢の原因となる場合があります。

②慢性の下痢 →慢性の下痢の場合、診断はより複雑になります。まず慢性の下痢の診断ですが、1日3回以上の下痢が3週間以上続く場合を慢性の下痢と定義します。慢性の下痢の場合、まずは以下の可能性を念頭に検査を行うこととなります。

*炎症性腸疾患;腸管の中で慢性的に炎症が起こる疾患です。クローン病と潰瘍性大腸炎があり、併せて炎症性腸疾患と称されます。安倍元総理大臣が患っていらっしゃったのもこの炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎でした。この疾患は慢性的な腸管の炎症により、下痢や血便、腹痛、発熱などの症状が持続することが特徴です。

*過敏性腸症候群;最近増えている疾患のようです。特に大腸カメラや血液検査では何ら異常がないにも関わらず便秘や下痢を繰り返す疾患です。小腸内の細菌の影響などが提唱されています。プロバイオティクスや漢方による症状緩和や止痢剤の使用が必要になる場合もあります。

*内分泌疾患(甲状腺機能亢進症や糖尿病);甲状腺ホルモンの増加により腸管の動きが活発化し、運動亢進性下痢を引き起こすことがあります。他にも動悸や血圧上昇、イライラなどの精神症状が不随します。血液検査や甲状腺エコーが重要です。糖尿病も自律神経障害から下痢をきたす場合があります。喉の渇きや多尿などの症状や血液検査から診断をつけていくことになります。

*大腸がん:意外かもしれませんが、下痢の原因が大腸がんの場合もあります。大腸がんの場合、物理的に腸が細くなるため、便秘しがちと思われますが(実際便秘や便が細くなる症状は他大腸がんの可能性を考える重要な症状です)慢性的な下痢の検査のために大腸カメラを行い、がんが見つかる場合もあります。

 

*治療は?

原因よって治療は異なります。

感染性の下痢の場合、症状がそこまで重度でなければ整腸剤、鎮痛剤程度で水分補給をしっかりしながら下痢がおさまるのを待つことができます。発熱や腹痛の症状が重い、食中毒など細菌性の腸炎がある場合は、場合によって抗生物質の投与が必要になることもあります。

また、著しい下痢で体内のミネラル分のバランスが崩れてしまう場合は絶食の上(腸管を休ませます)、点滴による水分補給が必要になることもあります。

慢性下痢の場合は原因検索とそれぞれに対する加療がより重要になります。炎症性腸疾患の場合は消化器の専門医のもとで免疫を抑える薬の導入を慎重に検討していくとになります。内分泌関連の疾患がある場合は、内科や内分泌化にて、その疾患ごとの対応が必要です。

過敏性腸症候群の場合、特に下痢がひどく日常生活に支障があるような場合は止痢剤を使用したり乳酸菌製剤・漢方などを用いて症状緩和を図っていくことになります。

 

*受診のタイミングは?

症状が強くない場合水分補給をしっかりしながらご自宅で様子を見ていただくことは可能です。また下剤やアルコールや油分の多い食事の摂取など思い当たる節がある方は、その原因を取り除くことも必要です。

一方、腹痛がひどかったり発熱を伴う、嘔吐もあり十分に水分摂取できない、便に血が混じるなど症状が強い場合は内科の受診を検討してください。以下のチェックリストを目安にしてください。

□発熱を伴う →感染性腸炎や虫垂炎、憩室炎の可能性があります

□便に血が混じる →炎症性腸疾患や腸結核、腸管出血性大腸菌感染の可能性もあります

□嘔吐を伴い水分が取れない →大人の場合数日食事が摂れなくても急に致命的経過をたどることはありませんが、水分の場合は1日でも摂取できないと容易に脱水や急性の腎障害をきたします。点滴による水分補給の必要性を判断するためにも病院、クリニックの受診が必要です。

□意識がもうろうとしている →下痢によるひどい脱水やミネラル分の喪失による意識障害の可能性があります。急を要する状態のため、本当に動けない、意識がもうろうとしてまともに疎通が取れない場合は救急要請も検討が必要です。(→#7119への相談も有用です)

 

*まとめ

排便習慣は非常に個人差が大きいものですが、やはり下痢はつらい症状の一つ。発症の経過や付随する症状によって原因も多岐に渡ります。特に慢性の下痢の場合は大腸カメラ検査が必須の場合も少なくないため、一般の内科では対応しきれないこともありますが、一方でまずはかかりつけで症状を相談いただき、その後の対応を決めていくことも可能です。

当院も内視鏡検査はできませんが、一般的な下痢や嘔吐、腹痛は診療を行っています。心配な症状がある場合は気軽にお問合せ・受診をしてください。

ページトップへ