045-264-6590
CLOSE

SYMPTOM

胸の痛み ~どこがどう痛むか、、時に緊急疾患の可能性があります~

胸が痛い、様々な疾患の可能性がありますが、中でも決して見逃せないのは心筋梗塞です。胸部にある臓器とともに、どのような疾患が考えらえるか、確認しましょう。

※突然の締め付けられるような左胸~胸の真ん中の痛み、冷汗、息苦しさなどがあれば心筋梗塞、狭心症発作を含め緊急疾患の可能性があります。すぐに病院受診をお願いします。

胸部にある臓器

胸痛の原因

チェックリストと受診のタイミング

最後に

 

胸部にある臓器

胸とは医学的には首と腹部の間・・おおむねこの画像の範囲を指します。胸腔、という言葉もありますが、その場合は横隔膜より上、肺と心臓、そして縦郭という部分が含まれる領域を指します。

胸部にある臓器は外側から、皮膚、脂肪、乳腺、筋肉、肋骨、胸膜、肺(左右)、心臓、縦郭(気管、大動脈や太い静脈、食道、リンパ節、胸腺を含みます)ということができます。このどこかに異常があれば胸の痛みが出現することになります。

 

胸痛の原因

胸痛の原因ですが、上述のようにたくさんの臓器が存在するため、その原因も多岐に渡ります。すべてを網羅することができませんが、より危険な胸痛と少し様子を見ても良い胸痛に分けて考えたいと思います。以下、原因となる病気、緊急度を示します。

 

心筋梗塞

緊急度=高

胸痛の種類=締め付けられるような痛みや重い痛み(鈍痛、象が乗っている等の表現をする方もいます)

痛みの出現=突然痛みが出現する場合もあれば、徐々に痛みが出現、悪化したり改善がなかったりします

言わずと知れた緊急疾患の心筋梗塞ですが、実は症状は様々です。気持ち悪い、実際に嘔吐した、胃のあたり(みぞおち)が痛い、左肩が痛い、顎が痛い、なんとなく元気がないなどありとあらゆる症状が心筋梗塞の兆候である場合があります。心臓の筋肉を栄養する血管が詰まることが原因のため、やはり中年~高齢者に多く、生活習慣病に基づく動脈硬化のリスクが高い場合に危険性が増します。疑う場合は心電図検査を行い、直ちに治療が必要となる怖い病気の一つです。

→心筋梗塞について

大動脈解離

緊急度=高

胸痛の種類=背部痛を訴える方もいます。痛みが移動する場合も多いのが特徴です

痛みの出現=突然の強い痛みの場合もあれば徐々に背部痛が出現し、胸部にも痛みが出てくるなど様々なパターンがあります

大動脈は心臓から押し出された血液を全身に送る非常に太い動脈です。この動脈の壁に傷がつき、壁の間に血液がメリメリと入り込むのが大動脈解離(壁が解離するということ)です。壁が剥がれていくため、枝分かれの部分が閉塞し、血液が行かなくなったり、壁が破ければ大量出血のリスクもある非常に危険な病気です。もし大事な動脈の枝が閉塞してしまうと脳梗塞や腕の血流不足が起こります。やはり動脈硬化や高血圧がリスクになります。痛みも強いことが多く、救急搬送されてくることが多い一方、何となくの背部痛→検査で大動脈解離発見という場合もあるため、医師泣かせの疾患でもあります。

気胸

緊急度=中~高

胸痛の種類=左右どちらかの持続的な胸の痛みが突然出現します。その他呼吸困難感や咳などの症状が伴う場合もあります。

肺が破け、肺の周りに空気が漏れ出す病気です。自然気胸という特に原因がないものから、基礎にCOPD(慢性閉そく性肺疾患)による肺の壁の菲薄化がある場合、肺がんによる場合、けがによる場合(外傷性気胸)など原因は様々です。自然気胸は若年、細身、長身の男性に多く、漏れ出た空気の量によっては必ずしも治療が必要でない場合もあります。一方、漏れ出した空気が多すぎる場合、肺はどんどんつぶされてしまい、呼吸困難や血圧の異常が出現する場合もあります(緊張性気胸)。この場合はすぐに漏れ出て溜まった空気を抜く処置が必要になります。

マロリー・ワイス(Mallory-Weiss)症候群

緊急度=低~中

胸痛の種類=みぞおちあたりから胸の下あたりに痛みが出現する

マロリーワイス症候群は嘔吐によって食道に裂傷が起こり、出血する疾患で、吐血の原因となります。食道の裂傷によって胸の痛みが出現することがあります。自然に出血がおさまる場合から内視鏡による止血が必要な場合、最重症の場合は手術が必要な場合まで重症度は様々です。いずれにしても嘔吐→吐血+胸の痛みというエピソードから診断をつけることができる疾患です。

帯状疱疹

緊急度=低~中

胸痛の種類=左右どちらかの胸部皮膚にピリピリとした線状の痛みが出現します

帯状疱疹は一度罹患した水ぼうそうウイルスが神経の根元に住み着き→免疫力の低下などに合わせて再度活性化、神経を伝って現れてくる疾患です。神経に沿って現れるため、基本的に左右どちらか、肋骨に沿った線上にぴりぴりとした痛みや違和感が出現します。続いて水疱(水ぶくれ)が出来るため、診断は必ずしも難しくありません。しかし、水ぶくれができる前のピリピリ感は下記の肋間神経痛と見分けがつかないうえ、場合によっては帯状疱疹にも関わらず水ぶくれはできない場合もありますので、一筋縄ではいかない疾患の一つです。単独の神経における帯状疱疹であり、特に免疫力に異常がない場合は抗ウイルス薬や痛み止め、ビタミンB12 製剤の内服で外来で治療を行います。複数の領域にまたがる場合などは皮膚科専門医に紹介し、点滴による加療が必要となる場合もあります。

肋間神経痛

緊急度=低

胸痛の種類=左右どちらかの肋骨に沿った比較的鋭い痛みを訴える方が多い 電気が走るような、と形容する方もいます

肋骨に沿ってはしる肋間神経の神経痛です。ただの神経痛の場合からヘルニアなど脊椎に原因がある場合まで原因は多岐にわたります。深呼吸で悪化し、その他心臓や肺の疾患が否定できる場合、肋間神経痛としてまずは痛み止めで経過を診ていただくことも多くなります。比較的強い、鋭い痛みのため、不安を訴える方も多い一方、神経痛であれば時間経過で改善してくることも見込まれるため、まずは内科で心臓・肺の疾患を否定し、経過を診ることが重要な疾患です。特に原因がはっきりしない肋間神経痛はストレスが原因の場合も多いようです。長時間のPC作業などもリスクとなります。生活習慣の見直しのよい機会になるかもしれません。

肋骨骨折

緊急度=低~高

胸痛の種類=ケガによる場合は前後関係がはっきりした強い局所的な胸の痛みが出現します 骨粗しょう症や骨に癌の転移がある病的骨折の場合はけがのエピソードがなくても胸の痛みが出現、原因が肋骨骨折、という場合もあります

文字通り肋骨という胸腔を取り囲む骨の骨折です。明らかにぶつけた、などのエピソードがあれば疑うのは容易です。一方上述のように病的骨折の場合は咳などの極めて軽微な刺激で骨折してしまう場合もあり、胸の痛み→レントゲン検査で偶然見つかる場合もあります。特に骨のずれがない肋骨骨折の場合は痛み止め、必要に合わせたコルセットの使用で保存的に治療を行います。

複数の骨が複数個所で折れるような場合や、骨がずれて肺などにダメージが加わってしまっている場合は緊急での手術加療等が必要になる場合もあります。緊急度はその骨折の程度で様々です。

その他:胸の痛みの原因となる上記以外の疾患もあります。肺がんは肺自体が痛むことはありませんが、周囲の胸膜や神経、骨に浸潤(染み入ったり)したり転移すれば胸の痛みの原因となります。食道破裂は稀ながら非常に重篤な病気です。乳腺の疾患(乳がんや乳腺炎など)も胸部に痛みを起こします。筋トレ後の大胸筋周囲の筋肉痛や筋肉のケガも胸部の痛みの原因となります。

チェックリストと受診のタイミング

胸部の痛みが気になる場合は1回は内科の受診を検討していただくのが良いと思います。レントゲンや心電図で思いもよらない重篤な疾患が見つかる場合もあるからです。検査や診察で明らかな異常がなければ痛み止めの内服や湿布で様子を見るとしても不安感が軽減されます。受診の時は以下のチェックリストを確認していただくと受診がスムーズになります。

□いつから、どこが、どのように痛むか

□痛みに波はあるか

□深呼吸や上半身の動きで痛みが悪化するか

□最近のケガ、転落、筋トレなどはあるか

□呼吸困難、顔面蒼白などその他の付随症状があるか

□今までにかかった病気はあるか(既往歴)

□今飲んでいる薬はあるか(内服歴)

 

最後に

胸痛は患者さんも医師も緊張する症状の一つです。絶対に見逃せない心筋梗塞や大動脈解離といった重篤な疾患から、肋間神経痛、筋肉痛までその重症度は様々です。まずは見逃せない疾患を否定すること、これが医師の使命ですので、胸の痛みがあれば問診、聴診に加え心電図や胸部のレントゲン、必要に応じてエコー検査や血液検査を行う必要があります。怖い病気がおおむね否定できれば少し時間をかけて、痛み止めや湿布の効果を見つつ、経過を診ていくことが可能です。不安な症状があれば、気軽にご相談ください。

ページトップへ