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胸痛症候群/前胸部キャッチ症候群(Precordial catch syndrome)

胸痛症候群/前胸部キャッチ症候群 ~若者の胸痛、痛いけれど心配なし~

胸痛は多くの重篤な疾患でKey wordとなる症状のため、自分に胸痛症状があればとても心配になります。一方で若い方の胸痛では命に関わるような原因が全くないものの、比較的強い胸痛があり、御家族が心配して来院される場合が多々あります。

実際自分も小学生~中学生の頃にかなり強い胸痛があり、「死の恐怖」を感じていたのを覚えています。ぎゅっと締め付けられるような痛みで、身の置き所がないような感覚が数分続いてよくなる、というものでした。気づいたらその症状は消失し、いつしか忘れていたのですが、クリニックを始めてから時々強い胸痛を訴える元来健康体の10代の患者さんに出会うことがあり、思い出しました。おそらく成長痛に近い「胸痛症候群」または「前胸部キャッチ症候群」というのが自分の痛みであったと思っています。今回はこの“胸痛症候群”および似たような疾患の“前胸部キャッチ症候群”を紹介します。

胸痛症候群とは?

前胸部キャッチ症候群とは?

注意すべき他の疾患は?

もしも痛みが出たら・・

最後に

胸痛症候群とは?

原因不明の胸痛の総称です。胸痛の原因になる疾患のすべてが否定された状態を仮に一括していっておく場合に用いられますので、もっとかみ砕けば、命に関わるような心筋梗塞、肺塞栓症、大動脈解離や肺炎、胸膜炎などの疾患はないものの、胸が痛む、特に命に関わることはない胸痛、ということになります。

この胸痛症候群の特徴としては

◆14歳から20歳までの若い女性にしばしば見られる

◆チクチク、ピリピリ、刺すような痛み、を訴えることが多い

◆痛みの範囲は指で指し示すことができる具体性がある(ピンポイントの痛み)

◆痛みは身体を伸ばしたり、体位を変えると消失したり、逆に出現したりする

◆通常は日が経つと自然に消失する

原因は分からないものの(分かったらそもそも胸痛症候群ではないので・・)成長期、思春期の年代によくみられることからも、筋・骨格系の成長痛のような胸痛であろうと考えられています。

 

Precordial catch syndrome(前胸部キャッチ症候群)とは?

似たような疾患ですが、もう少し若年の子供さんが胸痛を訴える時に疑うのが前胸部キャッチ症候群(Precordial catch syndrome)です。小児の胸痛の8~9割はこれ!とも言われるありふれた疾患である一方、あまり有名ではありません。突然の左前胸部の痛みで、胸の部分をつかむようにして(キャッチして)痛がる様子からこのような名前になりました。

この前胸部キャッチ症候群の特徴としては

◆特に6~12歳に多くみられる

◆誘因はなく、安静時に突然に起こる強い胸痛

激しい運動時や睡眠中は通常は起こらない

◆深呼吸で悪化し姿勢を伸ばすと軽快することが多い。 また、突然治まることも多い。

◆鋭く突き刺すような強い痛み ただし押してみても圧痛はない。

◆痛みの部位は左前胸部に多いが、側胸部、右前胸部にもありうる

胸痛症候群同様、1~2本の指でさせる限局した範囲に収まる

◆30秒~3分以内くらいで痛みは収まるが、時には30 分以上続くこともある

◆ 特別な治療法はなし 徐々に痛みは出なくなる

 

注意すべき他の疾患は?

基本的には基礎疾患がない小児、若者において動脈硬化を基礎にする心筋梗塞などの疾患がおこることは極めてまれです。ただし、胸痛である以上、これらの危険な疾患を除外した上で胸痛症候群や前胸部キャッチ症候群と診断をする必要があります。

胸痛を起こす疾患はこちら→

 

もし痛みが出たら・・

子供さんや若者が胸痛を訴えたらとても心配になると思いますし、万が一にも危険な疾患の可能性を考え、内科受診をしていただくのは良い選択肢だと考えています。

痛みの正常、程度年齢に合わせ、以下のような検査をして心臓や肺に異常がないことを確認しておけば、安心して経過を見ることが出来ます。

◆心電図検査;簡便に、かつ全く痛みなく心臓の様子が分かるため、有用な検査です。

心筋梗塞やそのた不整脈も捉えることができるため、基本的に胸痛があれば実施を検討します。

◆胸部レントゲン;簡単ですが一定程度の被ばくもありますので、小児の場合闇雲には実施しません。肺炎や胸膜炎、気胸のような肺や肺周囲の所見を見る必要があるような胸痛の場合に実施します。

◆血液検査;体内の炎症の値を見たり、その他臓器の異常を確認できる重要な検査ですが、一方で“痛い”検査のため、小児、若年者ですぐには行いません。必要性を判断して適宜実施することが必要です。

最後に

恐らく私が感じていた痛みは前胸部キャッチ症候群であったと自己診断しています。怖くて親にも相談できず、気がついたら症状が出なくなっていた、ということもあり、おそらく受診する患者さんの何倍、何十倍も胸の痛みを覚えたことのある人は多いのではないかと想像しています。危険な疾患さえ除外できれば痛みがあっても安心して様子を見ることが出来ます。もし子供さんが胸痛を訴える場合、適宜内科受診を検討してください。

もちろん顔色が悪い、息が苦しそう、意識が悪いなどの他の症状が伴う場合は緊急疾患が示唆されますので急いで受診が必要です。

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