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痛風 風が吹いただけでも痛む関節・・

この病名を聞いたことがない、という人はあまりいないと思います。イメージとしてはちょっと太り気味の中年男性が沢山お酒やつまみを食べ過ぎた後に足の親指を痛がっている、というものでしょうか。このイメージ、決して間違いではないのですが、若くても、女性でも痛風を起こすことはあります。

とにかく痛くて靴も履けない!とりあえず痛みを取ってほしい!!と来院される方がクリニックには時々いらっしゃいます。

今回は痛風について紹介します。

痛風とは?

原因は?

症状は?

診断は?

治療は?

予防は?

最後に

 

痛風とは?

痛風とは、血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶化し、関節などの組織に貯まり、炎症を引き起こす病気のことです。結晶化した尿酸が関節にたまって炎症が起こると、急激な痛みや腫れを伴う痛風発作を引き起こします。尿酸の結晶は足の指だけでなく足首や肘、膝関節に炎症を起こすこともありますし、足の甲、アキレス腱のつけ根、耳介(耳の軟骨)に痛風結節という塊や尿路結石が作ることもあります。

原因は?

血液中の尿酸値が上昇(高尿酸血症)し血中に溶けていられる限界の飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩が結晶となってしまいます。この結晶は関節にとって異物にあたるため、白血球が不要物として処理を開始しますが、この時、痛風発作(急性の関節炎)が発症します。

高尿酸血症が背景にある場合が多く、健診でUA(尿酸)が高めで推移していた、という方も多いです。

尿酸は遺伝子を作る核酸の代謝過程で生まれるプリン体を更に分解した時に出てきます。通常尿酸は腎臓、一部腸管から適宜排泄されますが、尿酸の生成量が増えてしまったり、排出量が減ってしまうと高尿酸血症となり、痛風発作に繋がります。

 

尿酸が高くなる原因としては

〇最終的に尿酸となるプリン体(遺伝子の核酸)の摂取過多

〇尿酸の代謝、排泄の低下

〇高尿酸血症を来すような薬剤の使用

〇脱水(尿酸が結晶化しやすくなる)

が挙げられます。

飲酒に関しては、ビール常飲で尿酸が上がる事実はありますが、実はアルコールそのものにプリン体の代謝を促進し尿酸生成を促す作用、尿酸の排泄を阻害する乳酸が高くなる作用があるため、高尿酸血症だからとビールだけ避けても何ら意味がなく、アルコール摂取そのものを控える必要があります。

症状は?

典型例では、何となく疼く感覚があった後、強い痛みが一つの関節に生じます。足の親指の付け根におこることが多いのですが、足の甲や足の関節など色々な所に生じる場合があります。関節は真っ赤に腫れ、少し触れただけで痛みが強く、靴が履けずに片足だけ草履で来院される方もいます。

また、高尿酸血症を放置すると尿酸の結晶が関節の内側を覆う膜や軟骨、関節付近の骨に蓄積し、そのうちその周囲の皮膚の下にも沈着していきます。これが痛風結節です。痛風結節は、腎臓など他の臓器の中や、耳の皮膚の下にもできる可能性があります。

 

診断は?

確定診断をする場合は関節の中に尿酸塩の結晶が出現していることを証明する必要がありますが、基本的には症状と経過から臨床的に診断がつきます。

 

治療は?

痛風発作が起こってしまうと痛みが強いため、まずは鎮痛を図ります。内服薬の使用がメインですが、クリニックでは痛みが強い場合は点滴治療をすることもしばしばあります。

治療の3本柱

〇コルヒチン:特に痛風発作の前兆期に使用することで、発作を抑えられる可能性があります。

〇NSAIDs(鎮痛剤):最もよく使われる種類の痛み止めです。痛風そのものに適応がある薬剤は限られています。この鎮痛剤を通常より多めに、短期間にがつっと内服して痛みを抑え込みます

〇ステロイド剤:強い抗炎症作用があります。内服、点滴等複数の投与経路があります。

内服の場合は急に中止が出来ないため、必ず医師、薬剤師の指導のもと

内服方法を確認し、順守する必要があります。

 

※痛風発作が起こっているときに尿酸値を下げる薬を開始するとむしろ痛風発作が悪化することがあるため、痛風発作が落ち着いて2週間くらいしてから血液検査で尿酸値を確認し、尿酸を下げる薬を開始します。

発作後しばらく経過してから血液検査を実施し、尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症が見つかった場合は、以下のフローチャートに則って治療方針を決定します。薬を使う場合は尿酸の生成を抑える薬、尿酸の排泄を促す薬などを、体調、体質に合わせて使用します。

予防は?

尿酸値が6.0mg/dLを下回れば通常痛風発作は起こらないと言われています。よってもし健診や普段の診察で高尿酸血症を指摘された場合、尿酸を下げることが最も効果的な予防になります。日々の生活でも尿酸を上げないような工夫が重要です。

尿酸を下げるには

〇内服薬を使用する;最も確実に尿酸値を下げることが出来ます。

〇食生活:尿酸値を上げやすい食べ物の過剰摂取を避けます。

Ex)プリン体は肉類や魚介類をはじめ、ほとんどの食品に含まれていますが、特に肉や魚の内臓、魚の干物、乾物、珍味などに非常に多く含まれるため、これらの食品(レバー等)の過剰摂取に注意しましょう。

〇運動:高尿酸血症はメタボリックシンドロームが基礎にある場合が多く、適切な運動習慣は尿酸を低下させるにも重要です。ただし、いわゆる筋トレ、ダッシュのような無酸素運動はむしろ尿酸値を上げてしまうため、有酸素運動、ストレッチが勧められています。

 

最後に

痛風発作の患者さんはとにもかくにも「痛い!」ということで来院されます。実際腫れた関節は見ているだけでこちらまで痛みを感じそうな赤味、腫れを呈しています。尿酸値はそれが高いだけの場合、特に自覚症状もなく、血糖値やコレステロール値に比べ健診で引っかかってもあまり重視してもらえないことも多いのが事実ですが、一度痛風になると「あの痛みを再度体験するのはごめんだ!」として、やっと高尿酸血症の治療を始める方もいます。内服薬で副作用が出てしまうことは多くなく、薬で適切な尿酸値を維持しておくことは重要です。健診で尿酸値が8~9mg/dLを超えてしまう場合、是非一度内科受診をお勧めします!痛風は予防できる病気です!

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