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低体温症 備忘録

色々と経験する症例から学んだこともせっかくなのでHPに記録していこうと思います。

一方であまりに専門的な話題は一般の方には無縁のため、「ん」の項目でまとめていきます。

以前低体温症の症例を経験しました。自宅内で体動困難となり、28℃以下の著明な低体温を来たしていました。心電図変化(高度徐脈)に加え低血圧もきたしており、点滴や外からの復温による加療をおこないました。低体温症の病態と治療についてまとめます。

低体温症の定義

低体温症には甲状腺機能低下など内因性によるものと、寒冷環境への暴露により体温が下がってしまう偶発性低体温に分類されます。今回は偶発性低体温について記載します。

低体温症の定義は「深部体温35℃以下」です。

※深部体温(⇔体表温):膀胱温、直腸温、鼓膜温など体内の温度 ただし膀胱温や直腸温は復温時の体温変化を迅速に反映しないので注意が必要

低体温はさらに体温低下の程度によって3段階に分類されます

軽度低体温 35~32℃

中等度低体温 32~28℃

高度低体温  28℃以下

低体温症の病態

体温は熱産生と熱喪失のバランスで決まります。よって熱産生が低下するような病態±熱喪失が増加する状況、で低体温が出現します。

熱産生の低下;各種内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎不全等)、低血糖、低体温、高齢

熱喪失の増加;寒冷環境に加え、飲酒や薬物による末梢血管の拡張や皮膚疾患は体温を外に逃がしやすくなり、熱喪失を助長します。

その他脳の体温調節中枢の機能障害も体温以上の原因となります。

低体温に伴う生体反応

 

低体温症の心電図変化

低体温では種々の心電図変化を認めます。動物モデルが作りやすいこともあり、多くの研究がなされている分野です。

ここでは特徴的な心電図変化とその機序を簡単に確認しておきます。

①体温の低下により交感神経優位となるとまずは頻脈が出現します。

②さらに体温が下がり32度以下になるとPace maker細胞への直接作用による洞性徐脈が生じます

③陰性T波、P-Q、QRS、Q-T間隔の延長

④心房細動や心房粗動 どの程度の低体温で出現するかは様々な報告があるようです。

⑤心室筋の興奮亢進→軽い刺激でVfなどを来す

その他有名な心電図波形の変化にJ波(オズボーン波)がありますが、これは低体温だからと言って必ずしも全例に出現するわけではありません。ただし、J波が出現していると心室細動に移行しやすく、また敢えて過換気としてCO2を吐かせてしまい、アシドーシスを是正すると消失することも知られています。

低体温の治療

まずはABCの確認、そして復温です!!とにかく復温が出来ないと様々な病態の評価するできないということで、積極的な復温を目指します。

A(Airway)/B(Breathing):末梢の血管は収縮しておりSpO2は測定困難な場合も少なくありません。早めの動脈血ガスの評価が必要です。熱産生のために酸素需要が増大するため、酸素投与を継続する意義はありそうです。

C(Circulation):低血圧、徐脈がありさらに末梢がしまっているため、心停止を見逃しやすい状況です。PEAに注意を要します。

補液は太いラインから42度程度に温めた外液を入れます。

→心停止の場合、32-35度程度に復温されるまで蘇生処置は継続します。(低体温の場合、復温で後遺症なく心停止から復活する場合もあるため)

続いて積極的な復温ですが・・復温には大きく3つの段階があります。

①軽度低体温の場合→寒い環境から離脱させる=室温↑、濡れた服など除去=PER Passive External Passive External Rewarming

②中等度~高度低体温の場合→積極的に温める=電気毛布、温風、温かな浴槽など=AER Active External Rewarming

③高度低体温→体内から温める=42度程度の外液の大量補液、腹腔還流、体外循環による復温=AIR Active Internal Rewarming

復温時の注意点

・After drop 先に末梢循環が改善すると、冷えた血液が中枢に戻るため、深部体温がむしろさらに低下する

・Acidosisの増悪 末梢の酸性血が戻ってくる時にAcidemiaとなる

 

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