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糖尿病性ケトアシドーシス 備忘録

糖尿病自体はThe慢性疾患、ですが、救急対応をしている中で糖尿病における急激な合併症の患者さんを診療することがあります。

色々な検査値が”異常すぎて”驚きつつの診療となります。

今回は急性期の合併症として重要な糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高浸透圧高血糖状態の病態についてまとめてみます。

糖尿病自体はインスリンの不足/作用不足による糖代謝障害が本態ですが、急激なインスリン作用の低下や異常な高血糖によって上記DKAや高浸透圧高血糖状態を引き起こします。

どちらもクリニックレベルでは太刀打ち困難な病態です。

□DKA

インスリン欠乏±コルチゾールなどインスリン拮抗ホルモンの増加による高血糖(BS>250㎎/dl)と脂質代謝異常による高ケトン血症、ケトン体によるアシドーシスが起こった病態です。

多くはインスリン依存状態である1型糖尿病患者や急激にインスリン不足を来す清涼飲料水多飲による糖尿病の患者で認める病態です。したがって発症年齢は若い(30歳代以下)のが特徴です。

高血糖による浸透圧利尿によって大量の水分、Na、Kを喪失し、多くの場合高度の脱水があります。

インスリン作用不足によってブドウ糖の利用障害が起こると、体内ではグリセロール、遊離脂肪酸、アラニンの代謝を亢進させエネルギーを産生しますが、この時代謝産物としてケトン体が産生されます。本来ケトン体産生を抑えるインスリンはそもそも不足しているため、ケトン体産生は際限なく行われることになります。

これらの病態が相まって、高血糖+アシドーシス+昏睡(意識障害)で搬送されてくるのがDKAです。

治療は不足しているものを補う、ことがメインになります。

①水分補正;高度の脱水があるため、通常500-1000ml/Hr の大量輸液を要します。外液を使用します。

②K補正;浸透圧利尿で大量に喪失しているにも関わらず、インスリン作用不足で細胞外のKが一見正常範囲に見えてしまう場合も少なくありません。この場合、補正を開始したとたん高度の低K血症から不整脈を来すリスクがあり、DKAで加療を始める段階で[K]が5.0mWq/L以下であれば、体内の総カリウム量は不足していると判断し、40mEq/L/Hrで補正しながらの加療が必要になります・

③インスリン補正;元凶となっているインスリン不足を補います。低K補正後、少量持続静注でインスリンの投与を行います。速効型インスリン(HumR等)を0.1単位/Kg/時でシリンジポンプを用いて投与します。

もちろん通常のA、B、Cの評価も重要です。

高浸透圧高血糖状態

著しい高血糖(BS>600㎎/dl)とそれに伴う高度脱水で高浸透圧血症となり、循環不全を来した病態です。アシドーシスを認めない点がDKAと異なります。

元々2型糖尿病のある患者さんが種々のストレス(感染症やけが、手術、ステロイド投与など)によって高血糖を来たし→数日の経過で発症するのが典型的です。

治療は高血糖の是正と脱水や電解質の補正です。

具体的には

①水分補正;まずは生食の大量投与を要します。15~20ml/㎏/時間が目安なので、50Kgの患者さんでは750~1000ml/Hrの投与となります。この時、ナトリウムの補正値も考慮する必要があります。適宜血液検査を施行しつつ、Na値に合わせ時には生食→半生食(1号液)への変更も検討が必要です。

②インスリン補正;最初の1Lの生理食塩水静注後に0.1単位/kgをボーラス投与、続いて0.1単位/kg/時で静注を継続します。血糖値が急激に低下すると当然血清浸透圧が急激に低下します、その時に脳浮腫を来す恐れもあり注意が必要です。暫定的には目標血漿血糖値は250~300mg/dL(13.9~16.7mmol/L)程度であり、これ以上に頑張って下げに行く必要はありません。急性期を脱した時点で用量を調整したインスリンの皮下注射に切り替えていきます。

③カリウム補正:DKAと同じ機序により、高血糖→浸透圧利尿で体内のKは不足状態となっています。補正による急なK値の低下に注意し、来院時正常~低カリウム血症があれば、水分の補正と同時にKの補充も必要です。血清カリウム値が3.3mEq/L未満であれば40mEq/時で補正を開始します。

血清浸透圧:通常はNa、グルコース、尿素窒素によって規定される血液の浸透圧です。各種パラメーターの測定値と血液検査の実測値をくらべることが可能です。

計算式:血清浸透圧=2(Na)+血糖/18+尿素窒素/2.8
基準値は280~290 mOsm/L

上記式からも高血糖の場合、浸透圧が上昇するのがわかります。一方、計算値と実測値に解離がある場合、通常の血液検査では検出できない物質によって実際の血清浸透圧が高くなった病態が想定されます。例えばエタノール、メタノール、グリセロールやマンニトールの高値です。

最後にDKAと高浸透圧高血糖状態を表にまとめておきます。(糖尿病治療ガイド(文光堂)を引用+改訂)

 

 

 

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