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高血圧 ~下の血圧(拡張期血圧)だけ高い場合~

高血圧患者さんは日本に4300万人いるともいわれます。基準は血圧測定で上の血圧(収縮期血圧)140mmHg以上/下の血圧(拡張期血圧)90mmHgですが、自宅血圧の目標は年々下がっており、75歳以下の特に既往(治療中の病気)のない方の場合、125/75mmHgが目標値となります。えっと驚く方も少なくないかもしれません。 ※高血圧についてはこちらもご覧ください。

高血圧は多くの場合無症状でありながら、着実に動脈硬化のリスクとなる厄介な病態です。

当院でもたくさんの患者さんが高血圧で受診してくださっていますが、お薬で正常域に下がるだけで、おそらく何年分かは健康寿命を延ばせているな、と密かに喜ばしく思っています。

そんな高血圧ですが、特に若い方の中には「下の血圧」だけ高血圧の基準に当てはまってしまう方がいます。 Ex)血圧135/102mmHgなど

これは医学的には孤立性拡張期高血圧(isolated diastolic hypertension:IDH)と呼ばれます。

このIDH、上の血圧が高い場合以上にあまり気にならない方も多いと思いますが、果たして治療の必要性はあるのでしょうか?

先に結論から述べてしまいますが、IDHに関してはその他に合併する病気(心筋梗塞、脳梗塞や糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病など)がなければおおむね上の血圧を120mmHg程度まで下げることを目標に生活習慣の改善や必要時はお薬を使用するのがよさそうです。※他の疾患の合併がある場合はそちらの治療との整合性を考えながら治療を選択する必要があります。

よさそうです、という曖昧な表現になっているのは現行のガイドラインは上の血圧、すなわち収縮期血圧についての言及がメインであり、実際に病気や死亡率との関連も収縮期血圧と強い関係があることが知られているため、あまり下の血圧、拡張期血圧関しては明確な降圧基準が示されていないためです。

健診などで下の血圧が高めと言われた場合は、是非一度クリニックでご相談ください。

ここからは血圧の成り立ちと、なぜ若い方で下の血圧が上がりやすいか、を説明します。

血圧は動脈を流れる血液によって動脈の壁にかかる圧力です。心臓が収縮し、血液が心臓から押し出されたときに血管にかかる血圧が上の血圧、収縮期血圧です。血液の通り道である心臓に近い太い大血管のしなやかさが失われると(つまり動脈硬化が進むと)収縮期血圧が上がります。これは同じ量の水を流すときに、しなやかなゴムホースを流す場合と金属の管を流す場合を想定するとわかりやすいかもしれません。

 

一方、下の血圧、拡張期血圧は心臓が血液を引き込む時に血管にかかる圧力です。上図にある太い血管より先(末梢)の血管のしなやかさにより規定されます。細い動脈(末梢血管)の動脈硬化により、しなやかさが失われると結果として血液が先に流れないため、太い血管にも高い圧力がかかる(残る)ようになり、下の血圧が上がります。

一般には大きな血管(大血管)の動脈硬化に比較してまず細い末梢血管から動脈硬化が進むため、若い人では下の血圧から上がってくる場合が多く見られます。そのまま動脈硬化への対策がなければ(脂質異常症や糖尿病の放置や喫煙などの不適切な生活習慣)太い血管にも動脈硬化が進行し、徐々に上の血圧も上昇します。実は太い血管にも動脈硬化が進行すると(わかりづらいのですが・・)結果として末梢に流れ込む血液量が減るため、下の血圧は徐々に下がってきてしまいます。したがって、むしろ全身の動脈硬化が進行すると下の血圧は低下し、上と下の血圧差(脈圧)が大きくなることになります。

同じ下の血圧70mmHgであっても、上の血圧が正常の場合と上の血圧も高い場合では身体の状態が全く異なります。

下の血圧だけが高い(IDH)のうちに是非適切な介入を行い、上の血圧の上昇を避けていきたいものです。

 

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