045-264-6590
CLOSE

DISEASE_NAME

食中毒 ~夏場に気をつけたい感染症~

今年も暑い暑い夏がやってきました。コロナの影響で例年とは全く違う日常となっていますが、コロナ以外にも注意が必要な病気はたくさんあります!

その一つが食中毒です。少しの腹痛や下痢、嘔吐程度の軽い症状で済めばまだ良いですが、時には命にかかわるのが食中毒です。

食中毒とは何か、特に夏場に注意すべき食中毒についてご紹介します。

 

□食中毒とは?

□症状は?

□食中毒の分類

□夏場に多い細菌性食中毒のまとめ

□治療

□予防

□受診の目安

 

食中毒とは?

食中毒とは、細菌やウイルス、化学物質などの有害物質に汚染された飲食物を口にすることでさまざまな健康被害を受ける病気のことです。キノコ毒やフグ毒、寄生虫(アニサキス)なども食中毒に含まれますが、主な原因はやはり細菌とウイルスです。

症状は?

食事を摂取して、しばらくしてから多くは急性の胃腸障害(嘔吐、腹痛、下痢などの症状)をおこします。発熱を伴うこともあります。原因となる食べ物を摂取してから症状がでるまでの潜伏期間は原因となる病原体によってかなり違います。(数時間~10日程度まで幅広いです)

食中毒の分類

①細菌性食中毒

細菌が原因となる食中毒です。カンピロバクターやサルモネラ、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などが有名です。夏季に多く発生し、食中毒の70~90%を占めます。

感染症の形態として、菌自体が悪さをする「感染型」と菌が作り出した毒素による「毒素型」に分けられます。

感染型:食物内で増えた細菌を摂取したり、食べ物に付着していた細菌が腸管内で増殖することでおこる食中毒です。代表的な原因菌としてサルモネラ、カンンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などがあります。

毒素型:食物中ですでに毒素を産生している場合(食品内毒素型)と体内で毒素を産生する場合(生体内毒素型)があります。前者として有名なのは黄色ブドウ球菌による感染症で、すでにできている毒を摂取してしまうため、原因となる食べ物を食べてから症状が出現するまでがとても早いのが特徴です。他にも代表的な原因菌としてボツリヌス菌、セレウス菌(嘔吐型)があります。後者の生体内毒素型の代表的な原因菌として腸管出血性大腸菌、セレウス菌(下痢型)などがあります。

②ウイルス性食中毒

なんと言っても有名で件数も多いのがノロウイルス感染症です。冬場に多く発生する。ノロウイルスの恐ろしいところは、たかがウイルス10個!程度の摂取でも発症してしまうほど感染力が高い点です。しかもノロウイルスは遺伝子の型がいくつもあり変異していくため、一度感染しても繰り返し感染、発症します。

夏場に多い細菌性食中毒のまとめ

*カンピロバクター

原因食物:食肉(特に鶏肉)、飲料水、生野菜

潜伏期間:1-7日

鶏、牛、豚などの腸管内に生息し、食肉(特に鶏肉!)、臓器や飲料水に存在しうる。
乾燥に弱く、また通常の加熱調理(65度以上、数分)で死滅する。感染後2週間程度でギランバレー症候群という重篤な神経疾患をきたすことがあります。

*サルモネラ

原因食物:鶏卵、またはその加工品、食肉(牛レバー刺し、鶏肉)

潜伏期間:数時間~3日

動物の腸管、自然界に広く分布している。いろいろな種類がいる。生肉、特に鶏肉と卵を汚染することが多い。
乾燥には強い。加熱調理(75℃1分以上)で対策可能。

*腸炎ビブリオ

原因食物;魚介類(刺身、寿司、魚介加工品)

潜伏期間:8-24時間

海水中に生息する菌。真水や酸には弱い。室温でも速やかに増殖してしまう。

*病原性大腸菌

原因食物;加工食品製品、水耕野菜(かいわれが話題になりましたね・・)、井戸水など

潜伏期間:O-157:数日、その他の病原性大腸菌:1~数日

※病原性大腸菌にはいろいろな種類があります。O-157はベロ毒素という毒素を産生し、出血性の下痢をきたす種類の大腸菌です。

*黄色ブドウ球菌

原因食物;乳・乳製品(牛乳・クリームなど)、卵製品、畜産製品(肉・ハムなど)、穀類とその加工品(握り飯、弁当)、魚肉ねり製品(ちくわ、かまぼこなど)、和洋生菓子など

→医学生としては傷のある手(黄色ブドウ球菌が傷口にいることが多い!)で握ったおにぎりで食中毒、といえば反射的に黄色ブドウ球菌を想起します。

潜伏時間:3-6時間 毒素型のためとにかく早い!!

毒素は100℃、30分の加熱でも無毒化されない!作ったらすぐ食べるのが重要です!

※ボツリヌス菌

治療

症状の重さによって治療も変わります。基本的に健康成人で、下痢や嘔吐があっても経口摂取ができる場合は十分な水分を摂って安静にし、発熱などに対して対症療法(解熱剤の使用)をしていれば数日~1-2週間で改善します。一方、症状が重く、口から水分が摂取できなかったり、基礎疾患がある場合は点滴や入院による加療が必要になる場合もあります。

日本国内で感染する細菌性食中毒の多くは抗生剤の使用は必要ありませんが、(外国帰りの下痢の場合はその限りではありません!)症状の重さによっては抗生剤の使用も検討が必要になります。いづれにしても症状が重篤な場合は早めに医療機関の受診が必要です。

予防

予防のコンセプトは非常に明確です。原因となる菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」という三原則が提唱されています。すなわち

「付けない」:調理環境の調整でたとえば鶏肉を切ったまな板や包丁でそのまま生野菜の調理をしない、など工夫が可能です。

「増やさない」:適切な温度、湿度での食物の保存を心がけること、また特に夏場は作ったらすぐ食べるなど長時間保管しないことで最近の増殖を避けることができます。

「やっつける」:一部の菌や毒素を除き、多くの菌は加熱調理で死滅させることができます。また調理器具も適切な洗浄、除菌(次亜塩素酸、ハイターの使用等)で清潔に保つことができます。

受診の目安

症状が軽くても嘔気、腹痛で受診をいただくのは全く問題ありません。整腸剤や解熱剤などで対処療法ができるからです。一方、基礎疾患がある方、高齢の方や以下に該当する方は早めの受診を検討してください。

  • 経口で水分の補給ができない(飲んでも同量吐いてしまうなら摂取はできていません!)
  • 一日に5~10回以上、嘔吐・下痢がある
  • 血便や吐血など嘔吐や下痢に血液が混じっている
  • 1週間以上腹痛が続く
  • 呼吸が不安定、意識が朦朧としている→救急要請も検討してください!
ページトップへ