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虫垂炎 ~右下腹部痛といえば・・~

「盲腸」の方が一般に知られた病名?かもしれませんが、盲腸は大腸の一部すなわち臓器の名称であり、一般に盲腸、と言われる病気でも盲腸には何ら異常がない場合も少なくありません。医学的にはいわゆる「盲腸」は虫垂炎という病名になります。すなわち、“虫垂”という盲腸からピロっと出た盲端の腸管に炎症が起こる疾患です。例外はゼロではありませんが、盲腸は必ず右下腹部に位置するため、虫垂炎では最終的に右の下腹部痛、発熱、などの症状が起こってきます。

今回は虫垂炎について紹介します。

*虫垂炎とは?

*症状は?

*治療は?

*まとめ

*番外編

虫垂炎とは?

盲腸からピロっと出た虫垂という行き止まりの腸の部分に炎症が起こる疾患です。読んで字の如くですね。原因はこの虫垂の部分に糞石(排せつ物が固まって石状になったもの)がはまったり、リンパ組織が発達し、閉塞することであり、炎症が腸管内部から徐々に外がわに広がっていきます。

一生のうち虫垂炎を経験する率は7-14%ともいわれますので、決してまれではない疾患と言えます。発症の年齢分布も幅広く、幼児期から高齢者までどの年代でも発症の可能性があります。ただし、10-20代での発症が多いとも知られていますので、若者の腹痛ではより鑑別の上位に挙がります。

 

 

症状は?

典型的には心窩部(みぞおち)辺りの痛みで発症、その後痛みが徐々に右下腹部(McBurney点 マックバーニー点と呼びます)に移動するとともに、吐き気や嘔吐、発熱など消化器症状や炎症症状が出現します。

腹痛の移動は有名ですが、これはまず内臓の痛みが起こり(内臓痛)→続いて炎症が悪化することで腸間膜(腸を包む膜)や腹膜にも痛みが生じる(体性痛)ためです。

腹痛は自発痛すなわち何をしなくても痛いだけでなく、圧痛(=押すと痛い)、反跳痛(=手で押したときより離した時に痛みが悪化する)まで出現することも多いです。特に反跳痛や歩くだけで右下腹部に響くような痛みがある場合は腹膜まで炎症が波及していることが示唆されます。

ただし、これらは教科書的な典型的経過であり、発熱が無かったり痛みの場所が限局しないなどの場合もあります。自己判断は禁物です。

 

治療は?

虫垂炎の治療は大きく2つ挙げられます。薬による保存的加療と手術による治療です。どちらの治療になるかは炎症の程度や患者さんの体力、その他さまざまな要因で決まります。薬物治療の場合は抗生物質の点滴や発熱に対する解熱剤、整腸剤などで治療を行います。手術治療の場合、最近はもっぱら腹腔鏡による手術が行われます。これはお腹にカメラを差し込んでその画面を見ながら手術を行うもので、従来の開腹手術に比べ傷が小さく、術後からの回復が早いのがメリットです。

いずれにしても虫垂炎を疑う場合、クリニックではお腹の所見をとったり血液検査をしたり、腹部エコーを使ってその可能性を見極めますが、それ以上の検査や治療に関しては外科の先生がいる総合病院で行う必要があるため、適宜総合病院にご紹介させていただいています。

 

まとめ

決してまれではない疾患の虫垂炎、もちろん抗生物質で速やかに改善することもあれば、手術で治療できる場合も少なくありません。しかし、時に炎症が高度であったり、適切な時期に受診をしない場合、虫垂が破れて腹膜炎や膿瘍(膿だまり)形成などより重篤で時に命にかかわるような状態になってしまうこともあります。いつもと違う腹痛や嘔気嘔吐、発熱(ない場合もあります!)など不安な症状がある場合は是非積極的にかかりつけの医師にご相談ください。

当院でも積極的に診療を行っております。気軽にお問合せください。

 

番外編

虫垂って必要な臓器なの?

虫垂はもともと草食動物がセルロースという食べた植物の細胞成分を分解するために発達した臓器であり、草食動物で圧倒的な長さを誇ります。コアラでは2mを超えるそうです。一方、人間では5~10㎝であり、手術で取り去ってしまってもあまり影響はないため、長い間無用なもの、むしろ役割もないのに虫垂炎を起こす厄介者として扱われてきました。しかし、近年虫垂が腸内細菌の善玉菌の供給場所であるなどその役割に再度注目が集まっています。

 

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