DISEASE_NAME 病気の名前から探す
糖尿病② 診断に必要な検査
糖尿病の診断について紹介します。(→「糖尿病 どんな病気か・・」も併せてご覧ください!)
糖尿病の紹介でも解説した通り、糖尿病は「インスリンの作用が不足して慢性的な高血糖となることで身体中の血管がダメージを受ける病気」です。よって高血糖の状態を評価することが診断には必要です。
糖尿病の診断には2つの項目を使用します。そしてその病態を理解するために追加の検査が行われます。それぞれの検査と診断について紹介します。
血糖値及びHbA1c の検査が必要です。(血糖値、HbA1cについてはこちら→)コンセプトとしては今まさに高血糖であるか、を血糖値で確認し、ここ1-2か月慢性的な高血糖状態にあったかをHbA1cで検査する、と言えます。
血糖値の検査は、空腹時血糖または随時血糖、そして75gOGTT(75グラムオージーティーティー、75g経口ブドウ糖負荷試験)に伴う血糖値のどれかを使います。
糖尿病の診断基準は以下のように定められています。
まず、血糖値とHbA1cについて、それぞれ「糖尿病型」が設定されています。
このどちらも糖尿病型であればその時点で糖尿病の確定診断となります。1項目のみが該当する場合は1か月以内の再検査を行います。この時重要なのがHbA1cのみ「糖尿病型」であっても糖尿病の診断には至らないという事です。必ず血糖値が高い状態、の確認が必要です。
上記のフローチャートで糖尿病の疑い、となった場合は境界型の糖尿病として早速生活習慣の改善にとる組むとともに3か月~半年毎に検査を繰り返し、糖尿病に至らないかチェックしていくことが必要になります。
・血中インスリン値
さて糖尿病と判定された場合、インスリンの量が不足気味なのか、インスリン量は保たれているのに効きが悪いか、またはどちらもあるのか、を調べる必要があります。
それが血液中のインスリン濃度を調べるインスリン分泌指数やHOMA-IRの検査です。詳細は割愛しますが、血糖値の上昇に対してどれくらいインスリンを出せるか調べるのがインスリン分泌指数、現在の血糖値に対してどれくらいのインスリンが必要とされているか(効き具合を調べる)を見るのがHOMA-IR検査です。
・空腹時血中Cペプチド/24時間尿中Cペプチド排泄量
インスリンが膵臓で作られるときにインスリンと同量できるのがCペプチドという物質です。(インスリンとCペプチドが一つずつくっついたものを酵素が切り離すとインスリンができるため、自動的に同じ量のCペプチドが産生されることになります)この物質の量を測れば間接的にインスリンの分泌量が評価可能です。
・抗GAD抗体
やや難しい話になりますが・・自分の身体を間違って自分の免疫が攻撃、破壊してしまう病気があります。自己免疫疾患です。この自己免疫疾患の一つに抗GAD抗体という免疫物質が膵臓の細胞を攻撃してしまい→結果としてインスリンが不足し糖尿病になるという病型があります。この抗GAD抗体陽性の糖尿病は一見最もありふれたII型糖尿病に似た経過を辿りますが、実は別の病型として初期から糖尿病専門医による厳格な治療を要します。(初期からインスリンを使用することが多いようです)よって、一般的なII型糖尿病であるのか、実は抗GAD抗体が陽性の別の病型であるのかを見極めるためにこちらの検査も必要になります。
その他一般的な血液検査も重要です。
・腎機能(BUN、Cre)
・肝機能
・脂質
これらを総合的に判断し、糖尿病の状態を把握していくことになります。
血糖値(BS:Blood Sugar);血液中の糖の値を測定します。指先の簡便な採血でも確認可能です。前日夜以降絶食状態で測った空腹時血糖、特に食事に関係しないタイミングで測定した随時血糖、下記75gOGTTで測定した2時間値などが診断に用いられます。
HbA1c (へもぐろびんえーわんしー):血液中のヘモグロビンのうち、糖と結びついたヘモグロビンの割合を示します。上記の血糖値が食事や体調によってダイナミックに変化する一方、こちらのHbA1cはおおむね1-2か月の平均血糖値を反映します。よって数日の血糖変化ではHbA1c自体に変動はなく、もし異常値が出ればここ1-2か月血糖値が高め(または低め)であったことがわかります。基準値はHbA1c 4.6~6.2%であり、6.5%を超える場合は糖尿病型となります。
75g経口ブドウ糖負荷試験の略称です。日本語にすれば分かりやすいかもしれません。75gのブドウ糖液を飲んで→血糖値の変化を見る検査です。血糖値は飲む前、飲んでから30分後、1時間後、2時間後に測定を行います。上述の通り、もしブドウ糖液を飲んで2時間後の血糖値が200㎎/dlを超えていれば「糖尿病型」と診断されます。1時間後の値は必須の検査項目ではありませんが、実は1時間後の血糖値が180㎎/dlを超える場合、例え2時間後の値が正常範囲内であっても今後糖尿病になってしまうリスクが高いことが知られており、リスク因子の把握のためには必要な検査と言えそうです。
以下実際の流れを紹介します。
検査前の注意点
⓪十分に糖質を含む食事(150g以上)を3日以上摂取する(糖質制限をしている場合、普段の糖質量が少なく、インスリンがすぐに十分量分泌されなくなるため)
⓪前日から10~14時間の絶食後、朝から検査を行う
実際の流れ
①空腹時採血:血糖値、必要に応じてインスリン値を測定する
②5分以内にブドウ糖75gを溶かした糖液を飲み干す
③30分、1時間、2時間後に採血を行う(この間水以外摂取禁止+運動や喫煙も禁止)
以上です。とても簡単ながら情報量の多い検査と言えます。