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糖尿病① どんな病気か・・

糖尿病 名前を知らない人はいないかもしれません。それほどありふれた疾患の一つです。一方で「どんな病気か?」と聞かれるとたちまち答えられない人が多くなるのではないでしょうか。

「血糖が高くなるやつ」「どうも病気が治りづらくなるらしい(コロナでさんざん話題になりました・・)」「太ってると危ないらしい・・」そういうイメージをお持ちの方も多いと思います。

今後少しずつ糖尿病の検査や治療についても紹介しますが、今回はまず「糖尿病とはどんな病気か」について記載します。

□糖尿病とは?

□何が問題?

□日本にはどれくらいの患者さんがいるの?

□健診で注目すべき項目は?

□最後に

 

□糖尿病とは?

糖尿病とはどんな病気か一言で表すならインスリンの作用が不足して慢性的な高血糖となることで身体中の血管がダメージを受ける病気と言えます。

我々は食事を摂取し、エネルギー源の一つとして糖が体内に入ると膵臓からインスリンというホルモンを血液中に分泌し、それらの糖を細胞に取り込み適切に血糖値を保ちつつエネルギー源として利用できるようになっています。

しかし、①インスリンが不足したり、②細胞がうまくインスリンに反応できなくなったり すると食事で摂取された糖はいつまでもエネルギー源として細胞に取り込んでもらうことが出来ず、結果として血糖値が高い状態となってしまいます。

このインスリンの作用が不十分な状態が続けば常に血糖が高い状態が続きます(=慢性的な高血糖)。この高血糖、血管にとっては良い環境ではありません。血管の内側の壁を作る細胞(内皮細胞)に徐々にダメージが蓄積、結果として動脈硬化が進行することになります。血液は身体中くまなく血管をめぐりますので、高血糖によるダメージは大きくて太い血管から細い血管まで漏れなくダメージを与えてしまうことになります。

これが糖尿病です。

□何が問題?

個人的には名前が悪いと思うのですが・・「糖尿病」尿に糖が出る病気というイメージは何となくことの重大性を覆い隠してしまっていると思います。

血液中から細胞中に適切に糖が輸送されず高血糖状態が持続すると、尿にも糖が排泄されるようになります。よって糖尿病患者さんで尿中の糖が陽性なのは・・まぁそうだよね、と言えますが、だから何?と思いませんか?

糖尿病の問題点は決して尿に糖が出ることではありません。尿に糖が出るほど高血糖な状態が続き、血管にダメージを与えてしまってることが重大な問題です。

ダメージが蓄積した血管は様々な疾患の温床となります。

太い動脈のダメージ;心筋梗塞や脳梗塞、大動脈解離、足の血管の閉塞による壊死など

細い動脈のダメージ:神経障害(しびれ感や触覚の低下等)、視力低下(目の網膜には細い動脈が網目のごとく走ります)、腎機能障害(腎臓で尿を作るために血液を濾しているのは細い動脈です)など

繰り返しになりますが、糖尿病の問題点は高血糖が持続→血管にダメージが蓄積 することであり。このダメージを背景にあらゆる病気へとつながっていきます。

 

□日本にはどれくらいの患者さんがいるの?

現在日本には320万人を超える糖尿病患者さんがいると言われます。血糖が高いまま放置していたり受診に至っていない潜在的な患者さんは1000万人ともいわれます。

非常にありふれた病気と言えそうです。

 

□健診で注目すべき項目は?

糖尿病にはいくつか種類があります。I型糖尿病はインスリンを作る膵臓の細胞が何らかの理由で破壊されてしまうもので、基本的にインスリンの注射が絶対に必要な病型です。子供さんの糖尿病も多くはこの型であり、最初から糖尿病専門医による適切な治療、インスリン投与の計画が必要となります。

II型糖尿病はいわゆる我々が想像しやすい糖尿病であり、食生活・運動習慣などの生活習慣の積み重ねの中でインスリンが不足したり、効きが悪くなり高血糖となってしまう病型です。当然この病型の患者さんが一番多く、町のクリニックでもこれらの患者さんの治療を行っていくことになります。

※その他遺伝子の異常や薬、化学物質によるものなど続発性の糖尿病もあります。(ここでは割愛)

このII型糖尿病患者さんの多くは無症状のことが多く、健診などでたまたま血糖値の異常が指摘され、糖尿病が発見されることが多くなります。

健診では以下の項目に注意して結果を確認してみましょう

①血糖値:できれば前日夜以降絶食状態で測った空腹時血糖を見たいところです。空腹時血糖が110㎎/dl未満であれば正常域と判定されます。一方126㎎/dlを超える場合、糖尿病の可能性がでてきます。110~126㎎/dlは境界型と判定されます。

もし健診日に朝ごはんを食べてしまっている場合、その血糖は随時血糖ということになります。随時血糖が200㎎/dLを超える場合、糖尿病の可能性が出てきます。

②HbA1c (へもぐろびんえーわんしー):血液中のヘモグロビンのうち、糖と結びついたヘモグロビンの割合を示します。上記の血糖値が食事や体調によってダイナミックに変化する一方、こちらのHbA1cはおおむね1-2か月の平均血糖値を反映します。よって数日の血糖変化ではHbA1c自体に変動はなく、もし異常値が出ればここ1-2か月血糖値が高め(または低め)であったことがわかります。基準値はHbA1c 4.6~6.2%であり、特に6.5%を超える場合は糖尿病の可能性があり、追加検査が必要になる可能性があります。

 

□最後に

糖尿病・・非常にありふれた病気にも関わらず身体中の血管を侵す恐ろしい病気です。しかしその他の生活習慣病同様、初期には特に症状がなく、高血糖自体は薬を飲んで改善してもあまり実感できる体調変化もないことから治療の継続が難しい病気の一つでもあります。(個人的にはもう少し病態に見合った、治療しておきたくなる病名になればいいのに、と思っています。)

生活習慣を改善すればそれだけで糖尿病にならずに済むこともあり、日々のちょっとした工夫が重要な疾患です。また、もし糖尿病になってしまっても初期から適切な薬を用いることで悪化を防いだり、特に支障なく生活を継続していくことも可能な病気です。

当院でも今後積極的に検査、加療を進めていきたいと考えています。健診でひっかかった・・家族に糖尿病が多くて心配・・など気がかりなことがあれば気軽にご相談ください。

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