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好酸球性血管浮腫 ~突然の四肢の浮腫(むくみ)~
好酸球という種類の白血球がいます。アレルギーや寄生虫感染症に関係の深い血球です。
この好酸球が特に理由なく(原因不明のまま)増多し、手足に突然強い浮腫を起こす疾患があります。それが好酸球性血管性浮腫です。
血液検査を行うと好酸球の増加が目立ち、血管性浮腫というタイプの浮腫が主に手足に突然出現します。基本的には勝手に治ってしまうことも多く、良性の経過をたどります。再発が何度もみられるEAE (Episodic angioedema with eosinophilia)いうタイプと再発がないNEAE(Non-Episodic angioedema with eosinophilia) とがあります。
あまりなじみのない好酸球性血管性浮腫について、紹介します。
*好酸球とは?
人の血液には主に外敵と戦う免疫をつかさどる白血球と酸素を運搬する赤血球、止血にかかわる血小板が含まれています。白血球は実はもっと細かく分類することができ、細菌やウイルスと戦う好中球やリンパ球、あまり何をしているかはっきり解明されていない好塩基球、そして主にアレルギーや寄生虫疾患などで登場する好酸球がいます。
好酸球は酸性の色素でよく染まる顆粒(粒)を細胞内に持っているため、酸が好き=好酸球、という名前がついています。
こちらの好酸球、比較的メジャーな存在でありながら、その機能がまだまだ解明され切れていない不思議な血球です。多すぎれば組織を傷つける一方、アレルギーにかかわるマスト細胞という細胞が作るヒスタミンなどの物質を無力化する作用もあったり・・アレルギーの現場で見られる細胞であるものの、必ずしもその量がアレルギーの程度とは比例しなかったり・・不思議な細胞の一つですし、これからどんどん研究が進むと新たな発見がありそうです。
→とても詳しい好酸球の紹介ページです(外部リンク):秋田大学大学院総合診療・検査診断学講座HP
*何故浮腫が起こる?
はっきりとした機能が不明の好酸球ですが、こちらの細胞が持つ顆粒に組織を傷つける作用があることはよく知られています。そして、この好酸球が周囲との調和を無視して暴走する病気がいくつかあります。好酸球増多症候群、好酸球性喘息、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性蜂窩織炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、好酸球性多発血管炎性肉芽種症(チャーグ・ストラウス症候群)などです。これらは難病(特定疾患)に指定されているものもあるなど、非常に治療に難渋することも多い病気です。
これらとは別に血液中の好酸球値が増加し、四肢に浮腫を起こす(だけの)好酸球関連ながら比較的症状が軽い疾患もあります。それが好酸球性血管浮腫です。
残念ながら何故四肢に強い浮腫が起こるかはまだ解明されていません。
*症状は?
四肢の強い浮腫が特徴です。アレルギーの関与が疑われるため、蕁麻疹がある場合もありますが、必発ではありません。
基本的にその他の重要な臓器、肺腎臓や肝臓、神経などには症状を来たしません。
若い女性に多く見られるのが特徴です。(10代~)
*治療は?
症状が強くない場合は経過観察でも浮腫は改善し、特に再発を繰り返さないタイプの場合は完全に治ってしまうこともあります。
浮腫が強い場合はステロイドという免疫抑制剤を用いる場合があります。たいてい非常によく効きますので、徐々に減量し、ステロイドは中止していきます。
蕁麻疹に対して抗ヒスタミン剤も用いられますが、効果に関しては議論があります。あまり副作用が出やすい薬ではないため、試してみて効果がなければ中止、でよいかと考えています。
*何科にかかるのが良い?
基本的にはまず内科クリニックにご相談をいただくのが良いと思います。
突然現れた浮腫に関しては好酸球性血管浮腫を第一に考えることはあまりありません。腎臓、心臓、内分泌系(ホルモン)の異常などより重篤な内科疾患が隠れている場合もあり、まずは内科クリニックで一通りの検査を行う必要があります。(血液検査、尿検査、胸部レントゲン、心電図など)
その他の異常が認められず、血液検査で明らかに好中球が増加している場合、好酸球性血管浮腫を疑い、治療を始めることになります。
*最後に
大学院生の時に見たことがないくらい手足がむくんだことがありました。この時はこの疾患の存在をしらず、そのまま放置していましたが、蕁麻疹も出現し、中々つらい日々でした。その後気づいたらすっかり治っていたため、忘れていましたが、最近になり何人か若年女性の浮腫を見てこの疾患と診断したことから、あの時の浮腫みは好酸球性血管浮腫であったのでは?と思っています。普段の靴が履けないくらい足がむくみ、なんとなく身体が熱っぽくなり・・とても不快でつらい症状でした。
汚い写真ですみませんがこのくらいむくんでいました・・皮膚が赤いのは蕁麻疹です。
突然の浮腫がある時は何らかの重大疾患が隠れている場合もあり、是非放置せず内科クリニックでの相談もご検討ください。