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亜急性甲状腺炎~高熱と頸部の痛みがあれば疑います~

なにやら難しい病名です。亜急性甲状腺炎=亜急性に起こる甲状腺の炎症 を指す病名です。

甲状腺という首の前側にある内分泌臓器(甲状腺ホルモンを産生する臓器)に一時的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンが漏れ出すことで様々な症状を起こす疾患です。

あまり耳なじみのない病名ですが、その病気の特徴や治療法について簡単にご紹介します。

*亜急性甲状腺炎とは?

*原因は?

*症状は?

*検査・診断は?

*治療は?

*予後は?

*亜急性甲状腺炎とは?

上述のように亜急性(急性、よりももう少しゆっくりとした時間経過)に甲状腺に炎症が起こり、甲状腺ホルモンが血液中に漏出するために様々な症状を起こす病気です。通常甲状腺はほとんど目立つことなく、首の全面、のどぼとけの下あたりに存在しています。ここで作られる甲状腺ホルモンは簡単に言うと”体を元気にする”ホルモンであり、不足すれば体温が下がったり脈拍が少なくなったりします。一方、ホルモンが多すぎれば動悸が起こったり、体温が上昇したりします。こちらの病気は7-12倍程度女性に多く見られ、年代も20-50代に多いといわれます。

*原因は? 原因ははっきりとはわかっていません。何らかのウイルス感染によるともいわれますが、特定のウイルスが同定されているわけではありません。また、遺伝子の型との関係も指摘されています。少なくとも、これをやったら、これを食べたり飲んだりしたら亜急性甲状腺炎になってしまうよ!というような明確な原因はなく、ある日突然発症してしまいます。

*症状は? 甲状腺自体に炎症がありますので、それによる痛みが特徴です。首の前方、甲状腺のあたりの自発痛(何もしなくても痛い)や圧痛(押すと痛い)という症状が見られます。また、37.5~38.5℃程度の発熱を認めることもしばしばあります。痛みが下顎や耳に放散(ひびく)こともあるため、その場合は痛みのある場所から歯の異常,咽頭炎,耳炎などと間違えられてしまうこともあります。

さらに、甲状腺ホルモンの漏出による全身症状も特徴です。体を元気にする=戦闘態勢にするのが甲状腺ホルモンであるため、血液中の甲状腺ホルモンが多くなりすぎれば以下のような症状が出現します。

  • 発熱や全身倦怠感:午前中より午後から夜に熱が上がりやすい
  • 頻脈(脈のかずが多い)や動悸(どきどき感)
  • 発汗
  • 手のふるえ
  • 体重減少

*検査・診断は?

まずは症状からこの病気を疑うことが重要です。発熱、首の痛みがあれば疑うのは容易なようにも見えますが、痛みが歯や喉、という訴えがあれば、より頻度の高い咽頭炎や歯の疾患、扁桃炎などの可能性を最初に考えてしまうため、中々医師にとっても難しい疾患の一つです。

血液検査では体内の炎症を示すCRPなどの値が上昇しているとともに甲状腺ホルモンの値が増加、一方で普段甲状腺ホルモンを出すように働きかけるホルモン(TSH)はぎりぎりまで低下していることが特徴です。

甲状腺は皮下の浅いところにあるため、平時でもエコーによる評価が可能です。エコーでは甲状腺の炎症が起こっている部分の血流低下を確認することができます。

各種検査を行い、炎症所見が高く、甲状腺ホルモンが異常な高値を示し、その他の病気(バセドウ病が急激に悪化している)を除外できれば亜急性甲状腺炎の診断が確定します。

*治療は?

通常1-3カ月程度で改善するため、炎症を抑える抗炎症剤としてロキソニンなどのNSAIDsというタイプのお薬を使います。炎症の程度が重い場合は、ステロイド剤を使用し、より強力に炎症を抑える場合もあります。ステロイドは効果が明確であり、通常2日程度で深い症状は消えてしまいます。

甲状腺ホルモンの過多による症状が強い場合はそれを抑える目的でβ遮断薬という種類の薬を使う場合もあります。これにより血圧を下げたり動悸を抑えることが可能です。

これらの治療により完全に良くなってしまえば、その後の治療は不要です。しかし、甲状腺の炎症がとても強く、ホルモン産生をする細胞が破壊されてしまう場合、炎症がおさまっても今度は必要なホルモンが産生できなくなってしまいます。その場合は後遺症として甲状腺機能低下症が残るため、長期の甲状腺ホルモン補充治療が必要となってしまうこともあります。

*予後は? 

予後は悪い病気ではありません。炎症は未治療であっても自然に軽快し、数カ月で治ってしまうこともあります。ただし上述のように後遺症を残す場合もあるため、注意深く甲状腺ホルモンの変化を確認しておくことが重要です。

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