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アナフィラキシー 重度のアレルギー反応 命にかかわります!
アナフィラキシー、蜂毒や食物、薬やワクチンなどのアレルゲン(アレルギーの原因物質)が体内に入った時に2つ以上の臓器に症状を来たす重度のアレルギー反応が起こった状態を指します。これに更に血圧低下が加わるとアナフィラキシーショック、という状態になります。
ワクチン接種によるアレルギー反応のキーワードとしてにわかにメディアでも目にすることが増えたアナフィラキシー、特に呼吸器に影響が出てしまうと数分で命にかかわる、決して侮れない緊急疾患です。今回はアナフィラキシーの定義、原因、症状と治療法について紹介します。
□最後に
アナフィラキシーとは「アレルゲン(アレルギーの原因物質)の体内への侵入により、複数の臓器にアレルギー反応が引き起こされ、生命に危機を与えうる過敏反応」と定義されます。これに血圧の低下、意識障害(失神を含む)を伴う場合を更にアナフィラキシーショック、と呼びます。
アナフィラキシーは重度のアレルギー反応です。原因となる蜂毒や食物、薬、ワクチンが体内に入って数分~数時間で免疫反応が引き起こされます。
身体には身体を守る免疫機構として「自分とそれ以外」を見極め、異物は排除するという機能があります。よって異物除去反応自体は正常な免疫応答の一部ですが、その症状が重度な場合、アレルギー、アナフィラキシー、アナフィラキシーショックなど様々な症状が出現することになります。
※ちなみにまさにOn Seasonの花粉症や食物アレルギーもアレルギー反応の一部であり、当然症状が重度になればアナフィラキシーにもなり得ます。
アレルゲンが体内に入り免疫細胞が「異物発見!排除!」と反応するといくつかの機序を経てマスト細胞という細胞からヒスタミンをはじめとする様々な物質が放出されます。(ケミカルメディエーターといいます)
このケミカルメディエーターが血中に放出されると血管から血液中の水分が周囲の細胞の間(間質:かんしつ)に染み出しやすくなります。(血管透過性の亢進)すると当然血管の水分が減少し、外の組織中の水分量が増えてしまいますので・・
血管の水分不足=血圧の低下
組織の水分過剰=全身のいろいろな場所の浮腫(むくみ)→蕁麻疹や口などの粘膜の腫れ、気道の閉塞、下痢
につながっていきます。
アナフィラキシーの原因は多数知られており、理論上はどんなものでも免疫反応を引き起こせばアナフィラキシーの原因となります。
良く知られる原因物質を紹介します。
◇食物:日本で最多は鶏卵、その他小麦、ミルク、甲殻類、ナッツ類、そば 等
◇昆虫:蜂(アシバガバチ>スズメバチ>ミツバチ)、ダニ
◇薬剤:ありとあらゆる薬剤はアナフィラキシーの原因となり得ますが、有名なのは抗生物質、ロキソニンなどの解熱鎮痛剤、抗がん剤、筋弛緩剤、造影剤などです。
その他 ワクチン、ラテックス(ゴム手袋等)、化学薬品(化粧品や洗顔料など)
アナフィラキシーの定義にも記載しましたが、アナフィラキシーでは全身の複数の臓器に症状が出現します。
診断基準に示される症状は、皮膚粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状、そして消化器症状に分類されます。複数の臓器にまたがる、という定義に則り、これらの臓器症状のうち2つが当てはまればアナフィラキシーの診断となります。
◇皮膚粘膜障害:蕁麻疹、発赤、腫れ、痒み、口の中の腫れや痒み、結膜の充血、涙の増加
◇呼吸器症状:鼻やのどのかゆみ、鼻閉、鼻汁、くしゃみ、のどの締め付けられ感、声がれ、喘鳴(ヒューヒューいう呼吸)、咳、息苦しさ
→最悪呼吸停止
◇循環器症状:動悸、不整脈(徐脈(脈拍が減る)場合もあり)、失神、失禁
→最悪心停止
◇消化器症状:腹痛、嘔気嘔吐、下痢
アナフィラキシーを疑う症状が出た場合、医療機関への受診が必須です。一般の方ができる対応は以下のようになると思います。冷静に判断して患者さんを医療機関に送り届けましょう。
①今まさに呼吸状態や意識の状態が悪い→迷わず119番を! 併せて人を呼んだりAEDも準備が必要です
②その上でもしエピペンを常備していれば使用を!→使い方がわからなければ救急隊員に渡しましょう
③症状はあるが救急車を呼ぶほどではなさそう→近くの病院、診療所の受診を またはかかりつけ医や#7119に電話で相談を
アナフィラキシーの場合、迅速な治療を要します。特に症状が最も重いアナフィラキシーショックの場合、アレルゲンが体内に入ってから呼吸や心臓が停止するまでの時間は薬剤で約5分(!)、蜂毒や食物でも15-30分と言われます。心臓や呼吸が停止してから脳が不可逆的にダメージを受けるまでわずか数分・・・まさに一分一秒を争う病態なのです。
医療機関における治療はフローチャートに則って迅速に行われます。
病院では点滴路の確保、アドレナリン(エピネフリン)の筋肉注射、その他治療薬の投与 などが行われます。
一度でも何らかの原因でアナフィラキシーを起こしたことがある人はそれ以降も注意が必要です。特に同じ物質でも2回目以降の方が激烈なアレルギー反応を起こすことがあります。
以下の項目に当てはまる方は注意、必要時はアレルギー専門医を受診しエピペンの携帯も検討しましょう
◇以前にアナフィラキシー/アナフィラキシーショックを起こしたことがある人 →エピペン携行が望ましい
◇食物や花粉などに対するアレルギーがある人(アレルギー素因あり、と言われます)
◇喘息の方
アレルギー体質の自分にとってもアナフィラキシーは他人ごとではありません。アナフィラキシーに準ずる状態になったこともありますが、とにかく息が苦しく「肺が拡がらない・・」という症状がでました。全身の皮膚が赤くなり、熱を持ちどういうわけか局所的に蕁麻疹も現れます。二度と体験したくない症状です・・・
適切な治療ができれば助けられるはずのアナフィラキシーですが、残念ながら毎年60人程度の方が命を落とします。少ないと感じる方もいるかもしれませんが、アレルゲンに出会う前まで元気にぴんぴんしていた若者でもアナフィラキシーショックから死に至る可能性があるわけで、決して軽んじていい数字ではありません。
いつ誰に起こるかわからないため、日ごろから頭の片隅に知識をとどめておくことが重要です。(とにかく疑ったら医療機関の受診が最優先です!)
□番外編
私自身が医師として経験したアレルギー例
*病院の待合で突然倒れた女性:お見舞いに来ていた一般の方でした。来院前に歯科にかかって抗生剤を内服してきていました→抗生剤アレルギー
*昼食後しばらくして失神した男性:普段から利用している定食屋のかきあげうどん摂取後、2時間程度してから失神しました。おそらく食物アレルギーですが、食べなれたものの摂取であり、アレルギー科へ紹介となりました。
*痛み止め内服後に呼吸が苦しくなった女性:朝出勤前に腰痛に対してロキソニンを内服、そのまま電車で通勤していたところ内服してから30分ほどで呼吸の苦しさ、全身の発赤が出現しました→鎮痛剤アレルギー