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糖尿病⑥ 治療(薬物治療)

糖尿病の治療の中でも飲み薬やインスリンの注射を行う薬物治療について紹介します。糖尿病⑤でもご紹介したとおり、糖尿病治療には大きく2本の柱があります。薬を用いる薬物治療と食生活・運動習慣の見直しから行う非薬物治療です。前回は食事、運動について記事を記載しました。今回は糖尿病で一般的に用いられる薬の概要を説明します。

といっても糖尿病のお薬による治療はその種類も容量も患者さんによって異なります。よって、今回はどのようなお薬があるか、そのメカニズムにそって解説します。

 

何度も記載していますが、大事な事なので再度確認、糖尿病とは・・

インスリンの作用が不足して慢性的な高血糖となることで身体中の血管がダメージを受ける病気

です。よって不足したインスリンを補ったり、インスリンの効きを改善させる、そもそも血糖値が上がらないように糖の吸収を抑えたり排泄量を増やすことが治療につながります。

糖尿病①の記事で示した通り、食事から摂取した糖分は血液中にはいり、食後血糖値が上昇します。すると膵臓がインスリンを放出し、そのインスリンが全身の細胞に作用することで血液中から糖分をエネルギー源として吸収、結果として血糖値は正常範囲で維持されることになります。このインスリンが不足したり、インスリンの効きが悪くなることが糖尿病でした。

薬の効果ポイントを青の四角で示しました。

①糖の吸収を抑える;そもそも食事で摂取した糖の吸収を抑え、血糖値を上げづらくするようなお薬です。このメカニズムのお薬にはα- グルコシダーゼ阻害薬と呼ばれる種類の薬が当てはまります。小腸でブドウ糖の分解吸収を抑え、食後に高血糖になるのを防ぎます。

②糖の排泄を増やす;これもわかりやすいコンセプトのお薬です。多すぎる血液中の糖分を尿にさっさと排泄させてしまおう、というお薬です。このメカニズムのお薬にはSGLT2阻害薬と呼ばれる種類の薬が当てはまります。尿中に糖分を排泄させ、体内の糖分を減らす作用があります。人工的に尿糖を増やすため、このお薬を内服していれば尿糖は必ず陽性になります。

③インスリンの放出を増やす;少しずつ複雑になりますが、血糖値が上昇したとき、適切なインスリンが分泌されなければ体内の各組織はうまく糖分を取り込むことができず、血糖値が下がりづらくなります。よって、インスリンの放出を増やせば血糖値を下げる作用が期待できます。このメカニズムのお薬には、スルホニル尿素薬、即効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)、DPP4阻害薬などのお薬が当てはまります。それぞれ異なったメカニズムでインスリンの分泌を増やします。詳細は省略しますが、低血糖の起こしやすさやその他の副作用が異なるため、患者さん毎に合わせた薬剤選択が重要です。

④インスリンを効きやすくする;せっかく血糖値に反応して膵臓がインスリンを放出しても、受け取る側の反応が悪ければ(インスリンが効きづらければ)結果として血糖値は下がりづらくなります。このインスリンの効きの悪さ(=インスリン抵抗性)を改善するのがこの種類のお薬です。このメカニズムのお薬にはビグアナイド系、チアゾリジン系などのお薬が当てはまります。肝臓での糖の産生を抑えたり筋肉や脂肪でのインスリンの効きを改善し、血糖値低下を目指します。

⑤インスリン注射;①~④の内服薬でも血糖値が十分にコントロールできない場合はインスリンそのものを注射することが必要になります。足りないインスリンを外から注射で入れるため確実に血糖は下がります。食事に合わせて注射をしたり、夜1回注射したり、その種類も多岐に渡ります。基本的にインスリン注射が必要な糖尿病患者さんは専門医の受診が必須です。

糖尿病治療の基本は食事、運動療法です。しかし中々それだけで血糖コントロールが改善しない場合、やはり薬が必要になることも少なくありません。検査によってインスリンが不足傾向なのか、インスリンの効きが悪いのか、食後だけ血糖が上がりやすいのかなどを判定し、適切な薬剤を選択していく必要があります。

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