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JATEC① 備忘録

※知識整理のために備忘録として記録したいと思います。

最近非常勤でお世話になっている救急外来で外傷の診療を行うことも増えてきました。元々研修医の時期以降は内科メインで診療を行ってきたこともあり、決して得意!と言えない分野ですが、一分一秒を争う現場でそのようなことは言っていられないのも事実です。

そこで、外傷診療に関し、勉強しつつその記録を残していこうと考えています。

今回はJATECの内容について確認します。

JATECはJapan Advanced Trauma Evaluation and Careのであり、JTCR(日本外傷診療研究機構)が設定している外傷診療に関わるコースです。

JTCRが示している「外傷初期診療ガイドライン」の標準的な診療が実践できるよう「JATECコース」が開催されており、外傷の診療に必要な知識と救急処置を、模擬診療を介して学習するトレーニングコースです。私自身も研修医時代にこちらのコースと、その小児VerであるJPTECを受講しました。

外傷診療のイロハが詰まったコースであり、まずはその要点を確認しました。

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①救急隊からの受け入れ要請:この時点でMIST(Mechanism,Injury、Sign、Treatment)すなわち受傷起点、怪我の状況、バイタルサイン、現場での処置を確認します。

→Mechanismの分類はこちら

②人員確保

救急隊からの情報共有+感染対策+医療器具の準備

医療器具;エコー、蘇生用具、末梢点滴ルート(20G~、温めた生食やラクテックなどの外液)、採血スピッツ(血算、生化学、凝固、血ガス、血液型など)

③救急車到着

④First Impression 15秒でABCDEの異常を見つける

傷病者の脈を確認しつつ冷や汗、冷感などCの異常を確認。話しかけつつ見当識等(Dの異常)を確認。胸部の動き(Bの異常)や呼吸の様子(Aの異常)を観察する。

~ストレッチャーへの移乗~

バックボードに固定されて到着するため、救急隊の力も借りつつ衝撃少なく病院のストレッチャーに移動します。

・酸素は10Lリザーバーで継続投与(SpO2によらない+COPD患者(=CO2ナルコーシスのリスクがあっても))

・モニター装着:心電図、血圧、SpO2、体温

・ルート確保の依頼+採血

・Unpackaging:傷病者には自力で動かないように指示をしつつ、頭部から固定をはずします。足側から外すと、誤って患者が動いた場合に頸部に負荷がかかるため、必ず頭側から固定を外します。

→ABCの確認 ~Primary Survey~

A)Airway 気道が開通しているかを確認します

気道閉塞の可能性がある場合、呼吸原性心停止のリスクもあるため、すぐに介入、気道を開通させる必要があります。

具体的には吸引、気管挿管輪状甲状靭帯穿刺、輪状甲状靭帯切開が挙げられます。 →気道管理はこちら

B)Breathing 呼吸状態が安定しているかを確認します

この時頸椎カラーの前面を開き、頸部観察を行います。頸部の所見から閉塞性ショックの機転を判断することが可能となります。

具体的には

・経静脈の怒張なし、呼吸補助筋の使用なし、皮下気腫なし、気管の偏移なし を確認します。

・つづいて胸郭外表所見(外傷の有無)、胸郭の動きの左右をを目視で確認、聴診、触診(胸壁の皮下気腫や肋骨圧痛など)を行います。

・呼吸数は重要であり、特に頻呼吸(RR>30回/分)は何らかの重篤な病態が隠れている可能性を示唆します。

C)Circulation 重要臓器、末梢に十分な循環が保たれているかを確認します

・ショック(血圧低下、循環動態の破綻)の所見を確認します。皮膚に触れ、冷や汗、冷感、湿潤、蒼白を確認します。また、活動性の外出血を確認し、出血が持続する場合は圧迫止血を試みます。

※高齢者や頻脈に対する内服を行っている患者の場合、ショックでも頻拍にならない場合があるため注意

・補液:基本的には外液1-2Lは負荷する心づもりで  ただし心不全や透析患者さんでは適宜見極めも臨床現場で重要になる

・ポータブルX線:胸部Xpで大量血胸の有無と多発肋骨骨折を確認

骨盤部Xpで明らかな骨盤骨折の有無をさっと確認

・FAST実施:エコーで心窩部から数字の4を描くように心嚢水、胸水、腹水の貯留を確認する すべて貯留液なければ「FAST陰性です」

心嚢液の貯留があり、心タンポナーデを疑う場合は心嚢穿刺を行う(エコー下)

D)Dysfunction of CNS 緊急で処置が必要な「切迫するD」の存在を確認します

・GCS

・瞳孔 対光反射の有無、左右差(Anisocoria)の有無

・四肢の麻痺

を確認します。

切迫するDは①GCS8以下 ②急速な意識レベルの低下(GCS2点以上の低下)、脳ヘルニア兆候(Anisocoria、片麻痺。高血圧+徐脈)です。これらの所見を認める場合は外傷に伴う何らかの頭蓋内イベント(出血等)が予想されるためSecondary Survey実施の一番最初に頭部CTの撮像を行います。

E) Exposure +Environmental Control

脱衣+体温測定を行います。基本的には外傷患者さんは保温を要します。

Primary Surveyのまとめ

ここまでで一旦Surveyを終え、まとめを行います。一緒に治療を行うチーム内で患者さんの病態を共有する重要な機会となり、また口頭で確認することでSurveyの漏れ、処置の漏れも認識することが出来ます。

Primary Surveyで重要な点は

・バイタルサインの変化があれば再度Aの評価に戻る

・処置の前後で必ずバイタルを確認する

・重篤な病態であるTAF3XMAPDを確認する。

※ Tamponade、Airway obstruction、Flail chest、open pneumothoraX、tension pneuomothoraX、massive haemothoraX、Massive haemothorax、Abdominal haemorrhage、Pelvic flacture、切迫するD

 

次回JATEC②でSecondary surveyを確認します。(こちら→

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