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寒くなると増える病気 ①心筋梗塞

1年目の研修医時代、11-12月に循環器内科(心臓の専門科)をローテーションしていました。急性心筋梗塞の患者さんが病院に運ばれるとほぼ全例、何時でも(真夜中でも!)呼び出しをうけるシステムでしたが、2カ月で日中も含め40回以上のコールがありました・・ものすごく大変だったものの非常に濃厚で有意義な2か月だったと記憶しています。寒くなる11-12月以降~心筋梗塞の発症率は明らかに増加します。(下グラフ:国立循環器病研究センターHPより抜粋)

冬になると増える疾患の一つが急性心筋梗塞です。こちらのホームページでも以前「病気の名前からさがす」でご紹介していますが(→心筋梗塞)、改めて急性心筋梗塞の注意点を記載します。気になる症状があれば早めの受診や救急要請を検討してください。

*心筋梗塞の症状

◎前胸部の締め付けられるような、重い痛み 何かに押されている、乗られているという表現をされる方もいます。必ずしも左胸ではなく、胸の中央部分に痛みを感じる方もいます。

◎ショック症状 心臓が十分に機能しなかったり強い痛みにより、血圧が下がったり冷汗をかいたり、顔面蒼白などの症状が現れます。

◎左肩や顎、喉の痛み 放散痛という種類の痛みです。左肩や顎の痛みで心電図検査を行い心筋梗塞が見つかる場合もあります。

◎消化器症状 みぞおちの痛みや吐き気、嘔吐が心筋梗塞の症状である場合もあります。

◎元気がない(特に高齢者) 心筋梗塞の症状は究極”何でもあり”と言えそうなほど多岐に渡ります。まったく胸の痛みがない(訴えない)患者さんでも元気がない、何かいつもと違うことから検査を行い、心筋梗塞の診断となる場合があります。

→典型的には突然うっと左胸を押さえて苦しみ出す、そんな印象もある急性心筋梗塞ですが、実は症状は多岐に渡り、そもそも一見心臓の病気を疑うことすら難しい場合もあります。(自戒をこめて・・)心電図検査はクリニックでも簡単に行える一方、特に心臓にかかわる疾患を調べるうえで非常に有用な検査です。心配な症状があれば迷わずかかりつけ医を受診してください。

*なぜ緊急疾患?

心筋梗塞は心臓の血管が詰まって、心臓の筋肉がダメージを受ける疾患です。筋肉がポンプのように収縮して血液を押し出す心臓にとって、心筋のダメージが大きければ適切なポンプ機能は保てないことになります。血管が詰まっても一定の時間以内に再開通、すなわち血液の通り道を再度確保してあげれば心筋のダメージは最小限に抑えることができます。したがってできる限り早急に循環器内科や心臓血管外科医のいる総合病院で加療を行うことが必要になります。

*何故冬に増える?

もちろん夏場にも心筋梗塞の患者さんはいます。しかし、グラフで見ても明らかなように、寒い時期になると心筋梗塞の発生率は増加します。冬に心筋梗塞が多い理由の一つとして、寒冷期の血圧の上昇、特に暖かい屋内から寒い部屋や屋外に移動する際の血圧の急激な変動があげられます。ヒートショックといわれるストレスが心臓の負担を増やし心筋梗塞を起こしやすくなります。また、寒さで心臓の筋肉を栄養している血管が過剰に収縮し血流不全に陥ることも心筋梗塞の一因である考えられています。

*予防

心筋梗塞の多くは動脈硬化を背景とした生活習慣病の一つです。したがって血管にダメージが蓄積するような高血圧、脂質異常症、糖尿病に関しては十分に治療を受け、食事や運動習慣を見直していくことが結果として心筋梗塞の予防にもつながります。一方、冬場は特に以下の注意を患者さんにはお伝えしています。

〇室内の温度変化をつけすぎない! 居間を暖かくしていても廊下やトイレ、ふろ場まで暖房をかけている方は少ないかもしれません。しかし自宅内でも温度差が大きければヒートショックによる心臓への負荷のリスクとなります。特に風呂上り、脱衣所がキンキンに寒くなっているのは非常に危険です。是非脱衣所にも暖房器具を設置するなどして温度差を減らす工夫をしてください。

〇水分摂取を十分に! 以外にも冬場は喉が渇きづらく、特に高齢の方は冬場でも脱水のリスクがあります。喉が渇いていなくても、こまめな水分摂取を心がけ、脱水を予防しましょう。

 

最後に

救急外来が猛烈にばたつく疾患の一つが心筋梗塞です。心筋梗塞を疑う患者さんがいらっしゃった瞬間からとにかく早くカテーテル治療につなげるべく医師、看護師さん、検査技師さん、とにかくすべてのスタッフが総動員で患者さんの心筋を救うべく動き出します。もちろん致命的な経過を辿ってしまう方も少なくない心筋梗塞、できるだけ早く受診⇒診断⇒治療につなげられるよう、気になる症状があれば早めのご相談をお願いします。

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