個人的にPCRキットを購入、自宅で検査ができるようになっているようです。これは、ずばり！医師として全くお勧めしません！！

その結果の取り扱いがはっきりと決まっていないからです。

私たち医師には特定の感染症を診断した場合（そして診断、が許されているのは医師のみです・・）感染症法に基づく報告の義務があります。

公衆衛生上きわめて重要な決まりです。感染症に罹っているの患者さんの全容を把握すべく、新型コロナウイルスのみならず例えば結核や食中毒、インフルエンザなども報告様式は異なりますが、報告を行っています。

ところが、現在の宅配PCR検査はその結果の取り扱いがしっかりと定まっていないようです。検査で陽性に出たら医療機関を受診しましょう・・と謳っているところもあるようですが、不用意に感染者に対して外出することを推奨している可能性もあり、無責任と言わざるを得ません。

郵送キットでの陰性も眉唾です。そもそも、その人唾液であると誰が証明するのでしょうか・・下手すれば水やペットの唾液をつかって陰性を手に入れる人もいるかもしれません。

陽性にでても不確か、陰性に出ても不確か、そういう検査によって検査を受けた本人だけでなく、家族、仕事の関係者を含め社会が混乱する可能性があります。

不安だからまずは気軽に検査を、と思う気持ちはわからなくありませんが、結果の取り扱いが出来ない検査は医師でさえも行ってはいけません。（自戒も込めて、結果がどう出ても対処法が変わらない検査はやらないほうがいいのではなく、やってはいけないものなのです。何かを確認したり、診断の手助けになるとき初めて検査の意義があります・・）

郵送での検査を選択する人が少なくないのは自費でのPCR検査が依然高価なのも原因かもしれませんが、結局陽性？という結果が出て医療機関を受診する場合、むしろ不要な心配や金銭的負担が発生します。

一般の方には引き続きそもそも新型コロナウイルス感染症に”かからない”ため手洗い、手指消毒、マスクを励行していただき、不安な症状があれば医療機関や県・都などが設置する窓口で相談していただきたいと思います。濃厚接触者にあたる方は保健所の指示を待ってください。何も症状がないけど心配だから検査したい、この場合は一般的な保険医療の理念から考えても保険や公費負担での検査を受けることはルール違反となります、クリニックで自費で検査を受けてましょう。

残念ながら新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、一見医療に見えるビジネスが拡がっているように思います。不安な気持ちにつけ入るようなビジネスには腹立たしさしかありませんが、冷静に判断し、自分が何を知りたいのか、結果がどう出たらどういう風に行動するのか、その辺りまで考えたうえで検査などを受けていただければと思います。