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SYMPTOM

むくみ どこがどうむくんでいるかが重要です

むくみ・・浮腫み、医学的には浮腫(ふしゅ)と呼びます。比較的ありふれた症状でありながら時に腎不全や心不全など重大な疾患のサインであることもあります。

むくみに関しては、どこに(全身性か局所性か)どのような(押すと凹みが残るか否か)浮腫が出現したかでタイプを分けて考えることができます。

以下自分に当てはまるものを確認してみてください。

*最初に 浮腫の種類

*⓪全身性にむくみが出現した

*①押すと凹みが残る浮腫が局所に出現した

*番外編;夕方になると足がむくんで靴がきつくなる

*最後に

*最初に 浮腫の種類

浮腫には大きく2つの種類があります。指でむくんだ部分を押すと凹みが残る浮腫(Pitting edema)と残らない浮腫(Non-pitting edema)です。

最初に浮腫が起こるメカニズムを確認します。通常身体の水分は血管内の血液、リンパ管内のリンパ液、血管や神経などの組織が通る空間である間質(かんしつ)にバランスよく分布しています。

このバランスが何らかの影響で破綻すると間質と呼ばれる部分の水分が増え、浮腫が起こります。

血管から水分が漏れやすくなったり、リンパ管にしっかり水分が戻らない、そもそも体内の水分が多すぎるなど原因は多岐にわたります。

*⓪全身性にむくみが出現した

それでは浮腫の出方から原因を確認していきましょう。

全身にむくみが生じる場合、心臓や腎臓、肝臓に何らかの異常が生じ、うまく体内の水分量が調節できなくなっている可能性があります。いわゆる心不全や腎不全、肝不全の状態です。その他内分泌系、いわゆるホルモンの異常でも全身性の浮腫をきたすことがあります。

心臓が原因;心臓はポンプとして全身に血液を絶え間なく送る機能があります。その心臓のポンプ機能が心筋梗塞や加齢性変化で低下してしまうと、上手くポンプ機能が果たせなくなり、結果として血流が滞り、体内に水分が溜まってしまいます。肺に水分が溜まれば胸水が生じ呼吸が苦しくなります。全身に水分が過剰になれば全身性の浮腫として症状が現れます。

腎臓が原因;腎臓は濾過機として血液から老廃物を分離、排泄しつつ、体内の水分バランスを適切に保つため尿量をコントロールしています。この腎臓の機能が低下すれば当然体内の水分がうまく排泄されなくなり、体内に水分が溜まってしまいます。腎機能低下が進行し、最重症の状態では水分やミネラルバランスをコントロールするために人工透析が必要になってしまいます。腎臓が悪くなる原因は感染症や腎梗塞など急性のものから、糖尿病による慢性腎臓病や腎硬化症など多岐に渡ります。

肝臓が原因;肝臓の重要な役割の一つに体内の主要なたんぱく質成分であるアルブミンの産生があります。このアルブミンは血管内で血液の浸透圧(膠質浸透圧)を決定する重要な成分です。肝臓の機能が肝炎やアルコールによる肝障害、脂肪肝や肝硬変によって低下するとこのアルブミンの産生が足りなくなります。すると血液中のアルブミンが低値となり、間質の水分がうまく血管内に戻らなくなり、浮腫を来たします。

他にも低栄養(→アルブミンが低下するため)やお薬(薬剤性浮腫)でも全身性の浮腫をきたすことがあります。これらの浮腫は基本的に押した時に凹みが残る、Pitting edemaです。

次に紹介する甲状腺ホルモン低下による浮腫は指で押してもすぐに戻る、凹みが残らないNon-pitting edemaを来たす主要な原因です。

甲状腺ホルモンの不足;甲状腺は首の前側にあり、甲状腺ホルモンを産生する大切な内分泌臓器です。この甲状腺ホルモンが不足すると全身の浮腫を来たすことがあります。甲状腺ホルモンは身体を元気にするホルモン(代謝を上げたり、心迫を上げたりします)、したがってこの甲状腺ホルモンが不足すると様々な全身性の症状が出現します。元気がなくなり、鬱っぽくなったり、体温が低下傾向となったりするのです。それに加え、ムコ多糖という物質が皮下にたまり、指で押しても凹みの残らないNon pitting edema(非圧痕性浮腫)が出現します。

 

*①押すと凹みが残る浮腫が局所に出現した

浮腫が身体の一部に生じることがあります。この場合は全身性の水分貯留ではなく、局所の静脈やリンパの流れの障害や炎症が原因となります。浮腫が出現するメカニズムとしては血管、リンパ管、間質の水分バランスが崩れることが原因です。したがって局所性に浮腫が生じた場合は大きく3つの原因を考えることができます。

☆静脈性浮腫:静脈の流れが局所的に妨げられるとその部分に血液が鬱滞し、間質からうまく血管に水分が戻らなくなり、局所的な浮腫を生じます。足の静脈に血栓(血液の塊)ができるエコノミークラス症候群はしばしば片足だけに浮腫がおこります。この血栓が静脈から流れ出し、肺に飛んでいくと時に命にかかわる肺塞栓症という重大な疾患につながることがあります。局所的だから、片足だから、と浮腫を放置してはいけません。

☆リンパ性浮腫:リンパ節が腫れたり、手術でリンパ管が傷ついて流れが滞ったり、(日本ではかなり稀ですが、西郷隆盛もかかっていた蚊が媒介する)フィラリア感染などでリンパの流れが妨げられると、局所性に浮腫が生じます。特に術後変化の場合、治療に難渋することがしばしばあります。(乳がん術後の腕の浮腫など)専門の先生やリハビリを要する病態です。

☆炎症性浮腫:局所的な感染やアレルギー、熱傷などの炎症で生じる浮腫です。足の皮下組織に細菌感染がおこる蜂窩織炎などが想像しやすいかもしれません。局所的な炎症がありますので、浮腫に加え、圧痛(押して痛い)、自発痛(何もしなくても痛い)、発赤(赤みが強い)、熱感(部分的に熱い)を認めます。もちろん炎症の程度が高度になれば発熱や悪寒を来たすこともあります。

これらの浮腫は原因に応じた治療を要する浮腫です。

*番外編;夕方になると足がむくんで靴がきつくなる

女性に多い訴えです。ほとんどの場合問題になりません。地球には重力があるため、身体の下側にある足にはどうしても水分が溜まりやすくなります。(※よって、寝たきりの人は下になっている背中やお尻全体にむくみが生じやすいです。)朝はすっきりしているのに、夕方以降靴がきつくなり、足が重だるくなるむくみについては薬などの医学的な治療より、椅子に座っているときに足を上げておく、弾性ストッキング(着圧ストッキング)を履く、など生活上の注意が重要です。

*最後に

浮腫、むくみはとてもありふれた症状の一つです。しかし原因は重力から重篤な心臓や腎臓などの内臓疾患、感染症まで多岐に渡ります。変わった原因として若い女性に多い好酸球性血管浮腫というものもあります。血液検査や心電図、胸のレントゲン検査などが診断の一助になることも少なくありません。浮腫が気になる場合、是非自己判断せず、内科の受診を検討してください。当院でも浮腫の診療をおこなっております。気軽にご相談ください。

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