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慢性硬膜下血腫 認知症様症状が治ることもあります!

慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?あまりなじみのない病名だと思いますが、救急外来で働いていると、結構な頻度で遭遇する疾患です。転倒等によって頭をぶつけた数週間~2-3か月後に手足の動きが悪くなったり(麻痺)、急に意欲の低下、失禁、認知症のような症状が出現する場合に疑います。手術で血腫を取り除くとこれらの症状がよくなるため、見逃せない疾患です。

慢性硬膜下血腫とは?

慢性硬膜下血腫の原因、要因は?

慢性硬膜下血腫の症状は?

慢性硬膜下血腫の治療は?

放置するとどうなる!?

最後に

【慢性硬膜下血腫とは?】

慢性硬膜下血腫とは「慢性の経過で硬膜という脳を包む膜の下に血が溜まって血腫をつくる病気」です。(急性硬膜下血腫という疾患もあります。これは頭をぶつけた直後~数日以内に急激に硬膜下に血が溜まるため、致死的になりうる危険な疾患です。)圧倒的に高齢者に多く、また男性に多いという特徴があります。アルコール多飲者や抗凝固剤(血液サラサラの薬)を内服している場合もリスクになります。小児や女性でも罹患することはあるため、疑ったらCT検査が必要になります。

CT検査で特徴的な所見を認めたら確定診断となります。

 

【慢性硬膜下血腫の原因・要因は?】

脳はその表面から外側に向かって、軟膜、くも膜、硬膜、そして骨、皮膚によって保護されています。この硬膜とくも膜の間に血液(といっても真っ赤な血液そのものではなく、もっとサラサラの水分が多い、茶色っぽい液体)がゆっくりゆっくり溜まり慢性硬膜下血腫を来します。原因の多くは頭部打撲や転倒(頭をぶつけていなくても、脳が揺れることで起こることもあります!)ですが、これらの原因がなくても、アルコール多飲者や血液サラサラのお薬を内服している方、癌が硬膜に転移している方なども慢性硬膜下血腫になる場合があります。

 

【慢性硬膜下血腫の症状は?】

脳が圧迫されるため、その部位や圧迫の程度によってさまざまな症状が出ます。

〇持続的な頭痛

〇記憶障害や性格の変化 →認知症と勘違いされやすい症状

〇めまい、平衡感覚の喪失、歩行困難→歩くと片方に寄ってしまう、という人もいます

〇吐き気や嘔吐

〇錯乱や会話困難

〇無気力

〇手足の脱力、麻痺

血腫が急激に大きくなったり、慢性硬膜下血腫の血腫内にさらに急性の出血がかぶったりすると下記のような重症の状態となることもあります。この場合は救急搬送に至る場合が多いと思われます。

〇半身麻痺

〇痙攣

〇呼吸状態の悪化

〇高度の意識障害

この症状が出たら慢性硬膜下血腫!!という特徴的な症状があるわけではないため、心配な場合はかかりつけの内科や脳神経外科、神経内科で相談をしてみましょう。

 

【慢性硬膜下血腫の治療は?】

症状がほぼなかったり、血腫が薄かったり、また全身状態が悪く手術ができない場合は経過観察で保存的加療が行われる場合もあります。一方、症状が明らかで血腫が見られる場合、脳神経外科の医師による手術加療が必要です。血腫のある部位の頭蓋骨に1㎝程度の小さな穴をあけ、そこから細い管を入れて血腫の血液や水分を外に出してしまう、穿頭ドレナージ術が行われます。翌日にCTを確認し、しっかり血腫が抜けていれば1日で管を抜くこともできます。大きな開頭もなく、早い人は1週間弱で退院できる場合も少なくありません。ただし、10%程度の方で再発があるとも言われており、一度治療をしたからといって、その後はずっと安心、といわけではありません。

【慢性硬膜下血腫・・放置するとどうなる?】

血腫がゆっくり溜まるため、かなり脳が圧迫されて症状が出るまで気づかない方も多い疾患ですが、やはりたまり続ける水分を放置すれば脳の圧迫が進行し、時には命に関わる場合もあります。また、圧迫が長期間続いた場合、仮に手術をしても認知機能の低下や軽度の麻痺が残る場合もあります。早期介入によって、認知症!?と思われた症状が改善する場合もあるため、おかしいな、と思った場合はできるだけ早期に受診、CT検査につなげることが重要です。

【最後に】

慢性硬膜下血腫、なじみがない病名かもしれませんが、じつはありふれた疾患です。手術によって症状が良くなる病気であり、早期発見、早期治療が望ましいことは間違いありません。

これ!という確定的な症状がなく、見逃しやすい疾患ですが、特に高齢の方やそのご家族は数週間~数か月前に転んだあと、「最近身体が傾くな~」「なんか物忘れが増えたかな」「やけにぼーっとしてるな」などがあれば早めの受診を頂ければと思います。

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