045-264-6590
CLOSE

DISEASE_NAME

圧迫骨折 ~転倒、尻もちがリスクになります~

高齢者の転倒後、強い背部痛や腰痛をきたした場合に考えるのが圧迫骨折と呼ばれる骨折です。

脊椎は上から見るとこのような構造になっています。その椎体の部分に圧が加わり、つぶれてしまうのが圧迫骨折です。(骨折の形態によっては破裂骨折、となりますが、細かいお話は割愛します。)

 

今回は痛みにより寝たきりになってしまうこともある圧迫骨折について紹介します。 →腰痛について

*圧迫骨折とは?

上述のように、背骨の骨のなかでも椎体という部分がつぶれるように折れてしまう骨折です。腕の骨や足の骨のようにボキっと折れるのではなく、グシャっとつぶれる、という表現がよく当てはまります。痛みの症状が強く、入院が必要になってしまう場合からほぼ無症状の場合まであるため、詳しい有病率(罹患率)は不明ですが、骨粗しょう症がリスクとなるため、明らかに加齢とともに患者さんは増えており、80-84歳では症状の有無にかかわらず、40%の方に圧迫骨折があるともいわれます。非常にたくさんの患者さんがいることがわかります。

脊椎は首(頚椎)が7個、胸椎が12個、腰椎が5個の骨からできています。この中でも圧迫骨折をきたしやすいのが胸椎の12(Th12)と腰椎の1(L1)です。脊椎のカーブによって一番圧力がかかりやすい部分であるためです。ただし他の部分でも圧迫骨折は起こります。

*診断

やはり尻もちなどの転倒歴は非常に重要です。転倒後強い背中~腰の痛みがあれば圧迫骨折は考えなければなりません。続いて診察では背中のを見て実際の傷や打撲痕がないかを確認したり、実際に患部を押してみて圧痛がないかを確認します。さらに股関節を曲げたり、足の動き、しびれの有無も確認が必要です。

続いて、椎体のレントゲン検査を行います。痛みに加え、写真のようにつぶれた椎体があれば圧迫骨折の診断になります。

*治療

保存治療と手術加療があります。

保存治療;痛み止めを使用し鎮痛を図るとともに、コルセットを使用し、安静にしながら骨折部分が安定化するのを待ちます。骨折後1-2週間はかなり強い痛みがありますが、1カ月程度で骨折部分が骨化してきます。しかし、まだまだ骨は不安定であり、再度の骨折リスクもあることから、コルセットの必要期間はおおむね2-3カ月程度、人によっては半年程度必要になる場合もあります。痛みが緩和し、動けるようになってきたら積極的なリハビリも重要です。

※明らかな圧迫骨折があれば整形外科、または総合病院にご紹介することになるため、内科である当院でコルセットの処方や調節などはできません。

鎮痛に関しては、各種の内服薬や坐薬、貼り薬がありますので、それらを組み合わせて利用していくことになります。ただし、薬には副作用もあるため、定期的な副作用の確認をしつつ、薬の調整を行う必要があります。

また、並行して行う必要があるのが骨粗しょう症の治療です。若者の転落事故や交通事故による圧迫骨折を除けば、ほとんどの圧迫骨折患者さんは背景に骨粗しょう症を抱えた高齢者です。

骨粗鬆症の診断や治療も併せて行っていく必要があります。(骨粗しょう症についてはこちらをご覧下さい)

概ね90%程度の患者さんはこの保存治療を行っていくことになります。

手術加療;2011年からBKP(Balloon Kyphoplasty)という手術が保険適応となり、行われるようになっています。これはつぶれた椎体部分に器具を挿入し、風船(Ballooon)を膨らませ、椎体の形を治した後(整復後)、骨セメントという素材を注入する治療です。受傷後8週間たっても痛みがある場合に行われ、骨を早期に固めることで鎮痛効果が期待されるだけでなく、つぶれた骨の形を戻すことで、今後他の椎体にかかる外力も軽減し、次の圧迫骨折を予防する効果もあるようです。

他にも骨に金属製のねじを留置して固定し、安定性を確保する固定術もあります。

どのような手術治療が必要であるかは、もともとのADL(もともとどの程度動けていたか)や年齢、他の病気の有無によって変わるため、患者さん毎に整形外科の先生と十分な相談をする必要があります。

 

*予防

骨粗しょう症の治療はそれだけで腰椎圧迫骨折の予防になります。一般には飲み薬や点滴により、骨の分解を防いだり、カルシウム製剤を用いて骨がもろくなるのを防ぎます。

また、転倒予防も非常に重要です。転倒予防のためには、個人個人でできること、環境を整えること、それぞれの視点で考えることが重要です。

個人でできることとしては、筋力維持のためのリハビリや運動に加え、睡眠薬や血圧を下げる薬の内服は転倒リスクとなるため、薬の飲み方や飲むタイミングにも注意が必要です。

環境としては第一に転びやすい場所の確認(段差や電気コードなどつまずきやすいものの確認)、寝室を1階にするなど生活スタイルの変更などが挙げられます。

 

まとめ

圧迫骨折は痛みにより、安静が強いられることも多く、特に高齢者の場合は寝たきりの誘因になってしまうことも決して少なくない怖いケガの一つです。完全に防ぐことは難しい一方、適切な骨粗しょう症の評価、治療や筋力維持、環境整備で予防を図ることができる疾患でもあります。骨粗しょう症については内科でも評価、加療が可能です。気軽にご相談ください。

※骨折の原因として、悪性腫瘍(がん)が骨に転移し、もろくなってしまったことが原因の場合もあります。圧迫骨折の原因は転倒や骨粗しょう症だけではありませんので、幅広い視点での診療が必要です。

ページトップへ