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擦り傷 擦過傷(擦過傷)
擦り傷(すりきず)、擦過傷(さっかしょう)・・・転倒などで起こりやすい怪我ですが、地味なわりにひりひりと痛むし、きれいに治るかしら、と不安になりますよね。
通常、日常生活で負う程度の擦過傷で病院受診が必要なことはほぼありませんが、場所によってはできる限りきれいに治ってほしいものです。絶対に痕を残さない!というのは無理でも、清潔を保ち感染を予防し、下手に触らない、など実践することで傷痕を軽減できる場合もあります。
擦り傷とはどんな傷を指すのか、どういう処置が好ましいのか、見ていきましょう。
□治療
読んで字のごとく、転倒などで皮膚に外力が加わり、皮膚表面がすれて損傷を受けてしまう怪我、外傷です。転倒で起こるので膝やひじ、あご等ぶつけやすい部分に受傷しやすい傷です。医学部でも習いますが、皮膚科か形成外科の授業で少しだけ触れられる程度のため、いわゆる“専門家”はいないありふれた外傷です。
※上記は色々なキズの分類です。今回話題としている擦過傷(擦り傷)のほか、ぶつけて組織損傷が起こる挫創(ざそう)、刃物などで切ってしまう切創(せっそう)、何かが刺さることで受傷する刺創(しそう)、主に頭や膝で、骨と硬いものの間に挟まれ、皮膚が割れるように傷つく割創(かっそう)などがあります。
切り傷、切創についてはこちら
ほとんどの擦り傷は恐らく放置していても治ります。ただ、傷痕が残ることがあるのと、怪我をした場所によっては細菌感染のリスクがありますので、以下の場合は受診を検討してください。
□農場など、特殊な環境で、泥や土、錆びで汚れるような場所で怪我をした
→破傷風の予防接種をしておいたほうがいい場合があります。心配な場合は受診をお勧めします。
□咬み傷:人、動物の口の中は驚くほど汚いため、抗生剤の投与が必要になる場合も少なくありません。
□非常に広範→交通事故等では広範な擦過傷を負う場合があります。
□痛みが強く、関節が動かせない、など骨折などの可能性がある場合
→レントゲンなど骨折の可能性を確認しておく必要があります
□何が何でも傷を残したくない
→絶対傷跡が残らない、ということは難しい場合もありますが、後悔しないためには
一度受診をして、専門家に相談をするメリットがあります。皮膚科、形成外科受診を検討してください。
□転倒の原因が失神 →傷がどうの、より失神の原因を精査しておくべきでしょう
□しばらくして感染兆候が出てきた→膿が出たり、赤くなったり熱を持ったり、痛みが悪化する場合感染も疑われます。受診して適切な対処を仰ぐ必要があります。
では、とりあえず受診はしなくて様子を見ておこう、と思った場合、以下の注意を守りつつ、まずは数日様子を見てください。
- とにかくきれいに流水で洗う!
痛くてもしっかりと洗浄する必要があります。特に砂利などの異物が残ると感染の原因になったり、皮下に異物が残ったりします。(外傷性刺青)
ちなみに、救急外来では例えば汚い擦過傷は生理食塩水を勢いよくかけながら歯ブラシ(⁉)で異物がなくなるまでごしごし・・やっているこっちが辛くなるくらいごしごしと洗います。
- 消毒は必須ではない
一昔前まで、傷と言えば消毒!とされていましたが、普通の人なら免疫で多少の菌には打ち勝てますし、消毒は「毒」と書くだけあって、細菌だけでなく、皮膚の常在菌や人体の組織そのものにもダメージを与えます。きれいな傷なら、流水で洗って、きれいなガーゼで水分をぬぐっておけば問題ありません。
*タオルやティッシュで拭くのは?⇒自分の傷ならティッシュでも平気で拭いています。細かい線維が残らなければいいと思ってしまっています、が、医師の立場としてはタオル等の細かい繊維が傷面に付着、残留しうるので、明文化してお勧めはできません。ガーゼ等線維が残らないもので水分を除去してください。
- 乾燥させず、清潔なもので覆っておく
感染させないこと、だけ考えると創部をかっぴかぴに乾燥させてしまう、のは理に叶っています。しかし、乾燥した環境では細胞が生きながらえることができないのは人も同じです。つまり、傷が治る(細胞が働いて線維をつくったり、再生したりする)過程を考えるなら必要なのは乾燥ではなく湿潤環境です。湿潤療法のために、最も安価にできるのはサランラップで傷を覆ってテープで止めてしまう方法です。普通の傷ならこれでも十分です。市販の製品で湿潤療法をする場合、ジョンソンエンドジョンソン キズパワーパッドなどを使う方が多いようです。薬局で相談してみて下さい。
まとめ
擦り傷。特に子供のころ、それはもう避けて通れない外傷です。チェックリストに該当する場合は病院、クリニックで相談してみましょう。専門科でない場合は、なかなか適切な対応が難しいこともありますが、形成外科はあまり多くないため、どうしたらいいかわからない、という場合にはまずかかりつけ医(内科や皮膚科)に相談してもよいかもしれません。また、傷痕が残ってしまった場合も、「傷あと外来」などを行っている病院もあります。各病院のHP等確認をしてみて下さい。