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急性低音障害型感音難聴 闘病記

~急性低音障害型感音難聴~

2023年7月4日突然右耳の急性低音障害型感音難聴になりました。完治までやく1か月かかりました。その体験記をまとめてみました。

※今回は完全に患者目線で経過、治療、症状などについて書きます。

一個人の体をはった体験をもとにしていますので、ご自身が加療中の場合は多少参考にはなるかもしれませんが、あくまで耳鼻科の医師の指示に従い治療を受けるようにしてください。

→病気の詳細はこちら(急性低音障害型感音難聴:準備中)

〇発症1-2週間前~

コロナ診療が多少ひと段落したことに加え、今までは我慢していた友人との会食、自分のやりたかった外出を詰めに詰め込んだ予定を立て、明らかに過労、睡眠不足、飲み過ぎがあったように思います。1-2週間前から不眠傾向(中途覚醒)や起床時からの疲れ、全身のだるさやむくみ感がありましたが、そのうち良くなるであろう、とタカをくくっていました。特に顔面や頸部、背中のむくんだような不快感は利尿剤でも飲みたいな・・・と思うくらいの程度であり、今考えれば身体からのギリギリのSOSであったのだと思います。

発症1週間前からは左耳の詰まり感がなんとなく気になっていましたが、耳かきのし過ぎで外耳道に小さなかさぶたができていたため、そのせいだろう、とやはり無視をしてしまいました。

〇7月4日

朝起床時、スマホの音が2重に聞こえるため、まずはスマホが壊れたと思いました。変だなーと思いながら起床、テレビの音が明らかに二重な時点で、デバイスではなく、自分の耳がおかしいことを自覚しました。片耳ずつ試すと、右のほうがおかしいようです。仕事中も周りの音、人の声、自分の声すべてがハウリングして謎の電子音に近い高音が加わって聞こえます。ストレス!!この時点で概ね突発性難聴になってしまったというのは(職業柄)わかりました。果たして勝手にステロイドなどを開始して、後遺症が残るのは何としても避けたい!ということで本当に久々に自分が「患者」として、仕事終わりに伊勢佐木町の耳鼻科(火曜のみ20時まで開けていらしゃる!)を受診しました。緊急の聴力検査を実施していただき、低音域の聴力低下を確認・・・急性低音障害型感音難聴の確定診断となりました。(厳密には突発性難聴とは似て非なる疾患です!)聴力検査では、ものすごく集中するものの、やはり低音が聞こえず、耳鳴りもあるため、おそらく全然関係ないタイミングでボタンを押しまくっていたと思います。(検査担当のNsさんにはご迷惑をおかけしました。)医師からはできれば入院を、と言って頂きましたが、やはり仕事のことを考えると即入院は難しく、まずはステロイド剤、イソバイドシロップ、アデホス、メチコバールというお薬を処方していただき、帰宅しました。

〇7月5日 朝起きた瞬間から右耳が詰まっています。(水が入って耳抜きが出来ない感覚)音もさらに割れてハウリングが強く、そこそこ絶望的な気分になります。低音難聴に加え、高音(というか聞こえる音)は聴覚過敏になっており、物を置く音、水道の音全てがうるさい!!自分の声も無駄に大きく聞こえるため、喋るのもストレスフルでした。通常難聴では声が大きくなる印象ですが、自分の声がうるさいため、むしろ小声になっていたようで、患者さんから聞き返されることも増えてしまい・・仕事にも影響が、とまた落ち込みます。内服初日、ということで良くなるわけもないのですが、焦り感や不安感はます一方です。

〇7月6日 改善なし!悪化もなし!症状のことを考えてちょっとイライラしたりもしますが、とにかくストレスがよくないということで、できるだけ何も考えずに淡々とできる事だけをこなす方針としました。

〇7月7日 微妙に耳の詰まり感が良い時間帯もあったように思いますが、基本的には横ばい・・・この日は電車の音を聞くタイミングがありましたが、かなりうるさく聞こえ、駅のホームの放送や電車のブレーキ音がとにかく気になります。

〇7月8-9日 クリニックの仕事を半日にさせて頂き、とにかく耳を休める方針に!忙しかったこともあり、ある程度忙しさで耳の症状を忘れられる、気にしていられない瞬間がありましたが、逆にそこまで気にせずいられる程度のハウリングになったのか、慣れただけなのか・・・疑心暗鬼になりました。

〇7月10日 1日オフとしてできるだけ無音でだらだらと過ごします。少し改善を自覚出来てきたのがこの頃です。音割れの音同士が近づいてくる、そんな感覚(二重音→1.5重くらいの感覚)でした。

〇7月11日 この日は明らかに改善が自覚出来ました。まず耳の詰まり感が減り、音もある程度1重になりました。(一部の大きな音や特定の周波数の音はまだまだ二重です🤔)

〇7月12日 この難聴、改善と悪化を繰り返しながら治っていく、と言われていたので覚悟していましたが、前日よりは耳の詰まり感やハウリグは少しぶり返しています。ただ、聴覚過敏は改善を自覚でき、少し気長に付き合おうという気持ちになれました。

〇7月13日 概ね12日とかわりません・・

〇7月14日 再度受診し、聴力検査を行いました。右耳の難聴はやや改善していますが、やはりまだまだ正常には及びません。上図2枚目グラフ

耳鼻科の先生とも相談し、再度ステロイドを増やし、徐々に減らしていくことになりました。

〇7月19日ころから、あまりにも改善しないため、だんだんと脳の異常が心配になってしまいました。なまじ知識があるため、聴神経腫瘍!?多発性硬化症!?などレアな疾患もどんどんあり得る気がしてきます。もはや不安で耐えられない!ということで、7月24日、近くの脳神経外科クリニックを受診、MRIを撮像していただきました。結果としてはやはり頭蓋内病変はなし・・純粋に耳(内耳)がおかしいことが確実となりました。

この頃ステロイドも中止となったためか、再度ハウリング症状が悪化、全ての音、声が頭の中に響いてしまい、とても普通には暮らせないぞ、という状況になりました。知り合いの患者諸先輩に色々聞くと共に、家族にも相談し、耳栓も買いました。耳栓をしても音は響きますが、かなり楽になることもわかりました。

ところが人体の不思議!

〇7月29日に急にハウリングが改善し、自覚できる程度に聴力もよくなりました。難聴がある間、頭上の換気扇の音が左から(つまり良い方から)聞こえていたのですが、それがてっぺんから聞こえるようになり、改善に気がつきました。その日は一時的にぐるんぐるんとした回転性めまいが生じ、若干吐き気もありましたが、どうも軽度のメニエール病発作であったように思います。

この日を境に耳の具合は明らかに改善傾向で横ばい、ある程度耳鳴りなど、症状の変動はありますが、概ね改善の波に乗れたぞ、と実感できたのでした。

〇8月5日 再度聴力検査を受けました。右耳の低音も左と変わらないくらい聞こえるようになっていました。これで一旦は完治!となりました。 上図3枚目 ”低音のささやき声”が聞こえるようになっています!

この急性低音障害型感音難聴はメニエール病に近い病態と言われ、繰り返すのが特徴とも言われています。とにかく過労、ストレス、飲み過ぎに注意して、願わくば二度と起こらないようにしたいと思っています!

 

さて、今回自身が患者となって、色々気づいたことがありました。

〇特に苦手な音(周波数,音質)がある

→救急車、トイレの洗浄音、駅の放送、いくつかの音がとにかく大きく、頭に響いて聞こえました。今まで気にしたこともない音たちがとても不快でした。きっと難聴や聴覚過敏の方にもそういうのがあるんだろうと身を持って実感しました。逆にあまり気にならない音もあるため、不思議です。

〇何となく首をかしげてしまう

→右耳が悪くなったためか、普通にしていても何となく右に首を傾ける癖が出ました。そのせいか首肩が凝る!!これも今回罹患して初めて気づいた+αの症状であり不調でした。また、常に耳閉感があるため、耳抜きのような感じであくび動作をすることが増えてしまい、結果として顎関節症も悪化した気がします・・・耳から色々な症状がひろがります。

〇不安に駆られて「耳に良い物」を探してしまう

→Amazonで買いました、亜鉛サプリ・・・。何か少しでもいいかもしれない事には頼りたくなるものですね。仕事柄ある程度根拠ある取捨選択はできると思っていますが、こういう弱った時の甘言はついつい頼りたくなるのだろうな・・とこれも身を持って実感しました。

〇鍼灸は効きそう

→クリニックに入っている鍼灸師さんにほぼ連日、昼に鍼灸指圧マッサージをしてもらいました。リラックス、首肩の凝りのほぐしメイン、など日によって少しずつ内容を変え、鍼灸を受けましたが、やはり施術直後は耳閉感も減り、全体としてリラックスもできるため、特に入院はできない多忙な患者さんの場合は内服、できるだけのリラックスに鍼灸指圧マッサージを加えるのは良い選択肢であると考えました。

〇不安、焦りは避けがたい!

→これはもうどうしようもないですし、できる限りのことをしたらあとは天に運を任せるしかないのでもどかしいことこの上ないのですが、難聴やハウリング、聴覚過敏の後遺症が残ったらどうしよう、めまいも出てきたらどうしよう、どのくらいまでのストレスなら許容なのか・・・ならないためにできたことはなかったのか・・思考が負のスパイラルモードになるのは避けがたい部分があります。時間経過でしか予後がわからない以上、考えてもよくなるわけではない以上、できるだけ自分を追い込まないことが重要ですが、とは言えそれが難しいのはよくわかります。自分の声もうるさいため、人に話を聞いてもらうわけにもいかず、音楽も聞けない・・・結構辛い病気です。一方自分は仕事はあるものの、周りの理解も得られ、仕事以外ではかなりしっかり耳を休める生活が出来たラッキーな患者であると思います。

急性低音障害型感音難聴を疑う場合は早めに耳鼻科を受診し、また治療はかなり気長に(月単位・・・)行うことが必要です。当院は内科クリニックのため急性低音障害型感音難聴そのものの診療や加療は行いませんが、鍼灸のご紹介などは可能です。不運にも急性低音障害型感音難聴にかかってしまった方は、是非一人で悶々と悩み過ぎず、周りに相談もしてみて下さい。

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