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心停止 その時心筋は・・

心停止、心臓の役割であるポンプ活動が停止している状況です。血液を血管に押し出す圧が失われるため、脳や各種重要臓器への血流が滞ることになります。

特に脳の神経細胞は虚血から数分で不可逆的ダメージを負ってしまうため、すぐに血流の回復=心拍の再開(または人工的な血液の灌流(PCPS等))が必要になります。

心停止の心電図波形は4つあります。

このうちVf(心室細動)とPulselessVT(無脈性心室頻拍)はAED(いわゆる電気ショック)の適応がある波形(Shock first)

一方、PEA(無脈性電気活動)とAsystole(心静止)はAEDの適応がなくアドレナリンの投与が優先される波形です(Drug first)

ある程度臨床経験を重ねれば当然の知識となっている上記ですが、初めてこれらを学ぶ方々にどう伝えるかなかなか悩ましいことがあります。

色々な説明方法がありますが、その中で(勝手に)比較的わかりやすいと思っているたとえ話を記載してみます。

心筋細胞を小学校の教室に例えます。(是非動画で想像しながら読んでみてください)

学級委員(洞結節)の号令で普段は各生徒(心筋細胞)は規則正しく動きます。「起立、礼!」「おはようございます」心臓はしっかりポンプ作用を営むことが可能です。

Vf(心室細動)の場合:学級崩壊です。てんでバラバラ、生徒(心筋細胞)は勝手に立ったり座ったり、好きなことをして騒いでいます。

PulselessVT(心室頻拍)の場合:学級委員(洞結節)の指示は無視、なぜか教室内で順番に生徒が立ったりかがんだりしてコンサート会場の如くウェーブをやっています・・てんでバラバラの心室細動ほどではありませんが、騒がしく授業になりません

PEA(無脈静電気活動)の場合:かわいそうに学級委員(洞結節)だけが懸命に「起立!礼!!」と声をかけていますが誰も従いません。教室は静か・・学級委員の声だけが響きますが徐々にその声も少なく、小さくなっていきます・・・(徐脈⇒心静止へ)

Asystole(心静止)の場合:もはや学級委員も何も言いません。全員無表情に座っています。教室には静寂が広がります・・

ここで、AEDは学校の先生です。教室の規律を取り戻すために「静かに!!!」と怒鳴り(電気ショック!)、生徒たちの動きを一斉に停止させる先生(AEDによる通電で心筋細胞は一旦電気活動がリセットされます)。

さて、この先生(AED)による一喝(ショック)が効果があるのは、教室が騒がしい時だけ、すなわち上記の中でもVfとPulseless VTの場合だけです。先生が静粛に!と怒鳴ってもそもそも多くの生徒が静か~にしているPEAやAsystoleでは効果がありません。むしろこの場合は生徒たちの積極性を再度鼓舞すべく、栄養(アドレナリン)が必要になります。

 

何となくのイメージが湧くでしょうか?

同じ心停止でも、波形を素早く読み取り、AEDなのかアドレナリン投与なのか、判断する必要があります。その時上記のようなイメージがあると、難しく考えずに判断できるのかな、と思っています。参考になれば幸いです。

なお、心停止の現場では常に、絶え間ない胸骨圧迫が最優先であることは明記しておきます!

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