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外傷診療 骨折(開放骨折の分類など)

外傷治療でしばしば遭遇するのが骨折です。

一言で骨折と言っても基本的に保存的加療で経過を診ることが出来る骨折(指や肋骨)から大量出血を来たしショックの原因となりうる骨折(骨盤骨折や大腿骨骨折)、そして緊急に処置を要するような開放骨折まで様々な骨折があります。

今回は骨折全般の確認事項と開放骨折の分類について記載します。

救急外来での骨折診療

救急現場での外傷診療において、骨盤骨折や大腿骨骨折などショックを来す重篤な外傷はPrimaryまたはSeconday surveyで認知され、止血等の処置を行うこととなります。その他内臓等の危機的状況が落ち着いた後、四肢の骨折等に関する診療、処置が始まります。

四肢の損傷を認めた場合,直ちに

●開放創であるのか

●神経や血管損傷(しびれ,麻痺,灌流不良による血色不良、動脈触知困難等)があるのか

●コンパートメント症候群(損傷の程度に釣り合わない疼痛,蒼白,錯感覚,冷感,脈拍消失など)の徴候があるか

について評価を行います。これらの所見があれば早急に専門科(整形外科や形成外科)へのコンサルトが必要になります。

開放骨折の分類

骨折部位のすぐ近くに皮膚損傷がある場合、開放骨折の可能性があります。小さな皮膚損傷であっても一度骨折した骨が飛び出し⇒再度戻った、というような場合もあるため、十分な評価を要します。開放骨折の怖い点は何といっても感染リスクが高まることです。

開放骨折はGustilo-Anderson分類を用いて分類されます。

Grade I:創傷が1cm未満で,汚染,粉砕,および軟部組織損傷はごくわずかでおさまっている

Grade II:創傷が1cmを超え,軟部組織損傷は中等度だが、骨膜剥離はごくわずか

Grade IIIA:重度の軟部組織損傷およびかなりの汚染があるが軟部の組織被覆は十分

Grade IIIB:重度の軟部組織損傷およびかなりの汚染があり,軟部の組織被覆は不十分

Grade IIIC:修復を必要とする動脈損傷を伴う開放骨折

Gradeが高いほどその後の感染症と骨髄炎のリスクが高くなりますが、いわゆる全体に血液やその他外来物で汚染が強い場合、細かい分類は困難な場合も少なくないようです。

開放骨折の診療では早期の抗菌薬投与が必須となりますが、その場合簡単にターゲットとする菌について思いを巡らせることが出来ると抗菌薬選択の迷いが少なくなると言えます。

GradeI-IIの開放骨折ではメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)など表皮の菌を想定し、カバーする必要がありますが、更にGradeIII以上ではグラム陰性桿菌や嫌気性菌、汚染された水、土壌への暴露まで考慮が必要になります。(緑膿菌カバーの考慮等)

抗生剤の選択については、どこまでカバーするか適切な評価が必要+取りこぼしを防ぎたい(のちのちのDe-escalationでよいのでは?)という気持ちのせめぎあいになると思いますが・・

例えばある程度汚染のある開放骨折については、まずは piperacillin/tazobactam (PIPC/TAZ) 4.5g q8h、を始めてしまう、というのは許容されるのではないかと考えます。

 

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