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SYMPTOM

気を失う(失神)

気を失う・・飲酒後のBlack out、翌朝起きたら前日の記憶がない、なんてことも若いころはあるかもしれませんが、それとは違います。いわゆる失神、とは一過性(一時的)に意識を失う現象をさします。ずーっと意識が戻らなければ失神ではなく意識障害、ということになります。よって、失神、という場合は意識を失ったあと 、数秒~数分で完全に意識が回復する、ことを指します。これは失神した本人より周りの人間がびっくり仰天、救急搬送に至ることも多い症状です。大抵来院時にはけろっとしていますが、やはり普通は失神なんてしません。その原因をしっかり調べ、適切な対応をすることはとても大切です。

失神とは

一時的に意識を失い、数秒~数分で改善してくること、を広く失神と呼んでいます。原因は様々ですが、てんかん、心因性(精神的な要因)を除くと基本的に意識を失うのは、脳の血流が一時的に遮断された場合です。脳は非常に血流豊富な臓器で血流が途絶えたり減ったりすると一気に意識レベルが低下し失神します。わずか6~8秒の血流途絶で脳は一時的にその活動を止めてしまいます。その原因が様々なのです

*小学生くらいの時、息を止めても意識が保たれるのがとても不思議でしたが・・

呼吸は止めても心臓は動いているので脳血流は保たれており意識は保てるわけです。もし心臓が6-8秒止まると、すぐに意識は失われます。

 

どのくらいの人が失神を経験したことがあるか・・

アメリカである地域の住民を何十年、と追いかけた大規模な研究があります。(フラミンガム研究)それによれば、7814人の住民を大体17年追跡したところ、合計822人の失神が観察されました。計算すると、1年間に1000人当たり6.2人が失神を経験したことになります。結構な人数かもしれませんね・・

 

失神の原因

失神の原因は脳の一時的な虚血(血が足りなくなること)です。血圧が下がったり、心臓が不整脈で十分な量の血を送り出せないと脳が虚血になり、脳機能が低下、失神します。

人の身体は本当によくできていますので、ちょっとの血圧低下では脳の自己調節機能がフル回転して、脳血流を保ちます。ですが、それを超えて血圧が下がると、失神してしまうのです。

  • 起立性低血圧 立ち上がった直後に血圧がストンと下がってしまい、失神するパターンです。自律神経は姿勢の変化に応じて、血圧を変え、脳血流を保つ働きがありますが、自律神経障害などがあると、この調整機能がうまく働きません。加齢もその危険因子の一つです。いずれにしても、座ったところからふっと立ち上がったらくらっとしたことがあるかもしれませんが、これが重度になると、失神します。横になれば脳の血流が戻りますので、自然に意識は回復します。
  • 迷走神経反射、神経調節性失神 あまり聞きなれないかもしれませんが、じつはこれが一番多いです。失神の2割がこれ、とも言われます。迷走神経は脳神経の1つですが、自律神経の機能があり、頸動脈や心臓のほうまで下りてきています。この迷走神経は副交感神経をつかさどるため、この神経が働くと身体は“休息”状態になりますので、脈がゆっくりになったり、血圧は下がったりします。その血圧の低下が大きいと失神を来すわけです。迷走神経は頸動脈の分岐部に分布しているので、そこを刺激する(頸動脈洞マッサージ)だけで失神する人がいます。また、みぞおちを殴られて失神するのも胃に分布するこの神経のせいです。排尿時や排便時も、副交感神経優位となりますので、失神のシチュエーションとしてはしばしば見聞きします。(身体としては“休息”状態で出すものを出すわけです・・)

 

  • 心原性失神 最も危険な失神です。心臓が何らかの不整脈がおこったり、一時的な停止を起こしたりして失神するパターンで、基本的に精密検査とその後の厳重な循環器内科医師による管理を要すると考えられます。不整脈とは読んで字のごとく、脈が整わない状態です。本来、一定の間隔・一定のリズムを刻むべき脈が、リズムがバラバラになったり、早すぎたり遅すぎたりして結局脳に有効な血流を送れなくなれば失神の原因となります。最もわかり易いのは一過性心停止、他にも心室細動、心室頻拍などあまり聞きなれない不整脈が並びます。この失神の怖いところは、他の失神に比較して、明らかにその後も予後が悪いことです。心臓の機能が悪いことが想定されるため、失神、というエピソードがあったらまずは心原性でないことを確認する、というのが基本的なスタンスになります。

 

  • てんかん性失神  てんかん、と聞くとがくがくした痙攣発作を思い浮かべるかもしれませんが、てんかん、は脳波の異常を背景としたさまざまな症状があり、その中には痙攣はせず、意識を突然失い、すぐに回復する欠神発作、というものもあります。厳密には脳の虚血、はないため、上記の失神とは異なりますが、見た目で区別はつかず、臨床(病院など実際の診療現場)では重要な鑑別疾患になるわけです。

 

失神 チェックポイント

失神は周囲の人もあせって救急車を呼ぶこともあるため、受診の機会は多い疾患かもしれません。初めての失神であれば、1回は受診をお勧めします。貧血がないか、脱水がないか、体内のミネラルのバランスが崩れていないか、不整脈はないか、など一通り確認しておくと安心です。何度か失神をしたことがある場合、同じようなシチュエーションで失神するなら、怪我などなく、完全回復しているならば様子を見てもいいかもしれません。

変な言い方ですが、倒れ慣れている人は、できるだけそのシチュエーションに注意する(急に立ち上がらない等)、ふらっとした時点で失神しても怪我をしないようにする(かがむ、電車のホームの端は歩かない、不用意に高所など危険な場所に行かない等)、など注意が必要です。

 

以下の項目に当てはまる場合は早期受診を!

□初回失神

□失神の前に胸部の不快感(圧迫感や苦悶感、締め付けられるような感覚など)があった

□失神の前や覚醒してからも頭痛が伴う

□糖尿病や肝機能障害、腎機能障害などの既往がある

 

また、受診前余裕があれば是非以下の項目を確認し、受診していただくとスムーズかもしれません!

□どのようなシチュエーションで気を失いましたか?

□今まで失神または失神しそうになったことがありますか?

□今までされたお病気はありますか?(既往歴)

□今飲んでいる薬はありますか?(内服歴)

□すぐに目が覚めましたか?またはしばらくぼーっとした状態がつづきましたか?

 

最後に

気を失う、失神する、とても怖い体験であると思います。失神の場合、転倒・転落し受け身も取れないため、失神する場所によっては大きな怪我や致命的経過となる可能性もあり、決して軽んじてよい症状ではありません。たとえ受診しても原因がはっきりしないこともありますが、やはり失神のエピソードがあれば受診、検査を受けておく必要はあると思います。すでに目が覚めている場合、当院でもお話を聞いて必要な検査を行うことが可能です。必要時は専門科への連携を行います。是非ご相談ください!

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