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SYMPTOM

肥満 ~病気が隠れているかも・・二次性肥満をご紹介します~

肥満、医学的な言葉です。単に体重が重い“肥満”と、医学的に減量を要する“肥満症”があります。巷に氾濫するダイエット情報を見るだけで、現代人がどれだけ肥満、という状態に敏感であるかがよくわかります。ここではダイエット方法は記載しません。

基本的に肥満の原因はIn>Outで摂取カロリーが多い、これです。摂取カロリーを減らすか、消費カロリーを上げて、Out>Inになれば痩せます。変なお茶を飲むとか、怪しい通販の粉薬等に手を出すくらいなら、食べる量を減らして、運動する方がよっぽど健康的でしょう。ただ、少ないながら、2次性の肥満、というものがあるのです。何らかの基礎疾患(代謝疾患等)に基づく肥満です。その場合はその原因の病気(基礎疾患)の治療で肥満が解消されることもあります。つまり、肥満が症状の病気もあるということです。

よってここでは、肥満の原因と分類、病院受診を検討したほうが良い時を順番に示していきます。

 

肥満とは

2011年肥満症診断基準、というガイドラインが提唱されています。ここでは肥満、を脂肪組織の過剰な蓄積で、BMI>25Kg/㎡と規定しています。

*BMI=体重(Kg)÷(身長×身長)(㎡)

 

肥満、を主訴とした受診(つまり、ふとって困りますと言って病院に来る人)の詳細な数は不明ですが、98-99%が体質+過食などによる単純性肥満です。病院では治せません。日常生活の見直しから初めてみましょう。

*栄養指導の希望がある場合は、病院で相談してみましょう。

当院でも管理栄養士さんからの栄養相談導入を検討中です!

 

さて、残りの1-2%の方は二次性肥満、という分類に当てはまることになります。ありふれた“肥満”ですが、二次性、となると途端に専門性が増します。実際私も二次性肥満の患者さんを、肥満を治すために受け持った、という経験はありません。

 

原因

二次性肥満の多くが、内分泌疾患に起因します。稀な疾患が多いですが、いかに代表的な疾患を挙げます。

内分泌疾患

□クッシング症候群;腎臓の上にある副腎という臓器はさまざまなホルモンを産生しています。その一つがコルチゾールというホルモンです。原因はいくつかありますが、このコルチゾールというホルモンが過剰になるのが副腎皮質機能亢進症です。コルチゾールの過剰症状の一つが体幹の肥満(その割手足は痩せているので中心性肥満と呼びます。)です。他にも感染症にかかりやすくなったり、糖尿病のリスクが上がるなど全身に影響がでてきます。ホルモン値の検査など専門的な評価が必要になります。

□甲状腺機能低下症;頚部、気管の前にある甲状腺、という内分泌臓器の機能が低下する病気で、橋本病が有名です。甲状腺ホルモンは基本的に体を元気にする、ホルモンなので、これが不足すると、体温が低めになって、代謝が抑えられ、身体に水分が貯留しやすくなって、体重は増加します。甲状腺にかかわるホルモンの採血で可能性を調べることができますので、受診が肝要です。

□インスリノーマ;聞いたこともないかもしれません。インスリン、というホルモンを過剰に作ってしまう質の悪い腫瘍です。インスリン、ご存知の通り糖尿病で血糖値を下げるために注射をしている人もいるホルモンです。したがって、これが大量に放出されると低血糖症状を繰り返すなどの症状が出現します。詳しい話はここでは述べませんが、インスリンは血糖を下げる、わけですが、べつに血液の中の糖をさっと分解して消してなくすわけではありません。インスリンがあると細胞は血液中の糖を細胞内に取り込む=血中の糖は下がる、というメカニズムです。したがって、インスリンがいつも出ていると実は糖の取り込みが上昇して、エネルギー過多になるわけです。

ひどい糖尿病の人が痩せてくる、のは逆にインスリンが不足して、血液中の糖が細胞で利用できなくなるためです。

□その他

 

遺伝性肥満

あまり日常診療でお会いすることがない疾患が並びます。Key Wordとしては、視力障害、知能障害、性腺の発育異常、奇形など特徴的な身体所見がある場合に疑います。なかなか一般診療所で確定診断は困難ですが、心配な場合は、相談をしてみる、必要時は大学病院等に紹介してもらう、という流れが必要になると思います。

Ex)Edwards症候群、Bardet-Bield症候群、Prader-Willi症候群

今まで患者さんにお会いしたことはありません・・

 

視床下部性肥満

摂食中枢があるのが、脳の中でも、深部、鼻の奥の方に位置する視床下部、という場所です。ここに障害があり、食欲が増進されると視床下部性肥満、を起こします。

原因疾患としては腫瘍(頭蓋咽頭腫)や脳炎後後遺症、結核などがあり得ます。外からの診断は困難な事が多く、MRIなどの画像検査や、髄液検査で異常がないかを調べる必要があります。

 

薬剤性肥満

いくつかの薬剤は肥満を起こすことが報告されています。また、例えばステロイドやドグマチールなどは、その食欲増進作用をあえて拒食傾向の患者さんに処方して利用することもあります。よって、新しい薬を開始してから太り始めた、なんていうことがあれば、それも相談が必要です。

 

受診を考えるとき

*食事量が変化していないのに短期間で急激に体重が増えた

→特に数日で〇Kg単位の体重増加などの場合は実は肥満ではなく浮腫(水分が貯まる病態)の可能性もあります。心疾患や腎疾患の可能性もあり、早めの受診が必要です。

*他の症状がある:低体温や生理不順、足のむくみなど

*健診で肥満に加えて腎機能や肝機能、糖尿病の可能性が指摘されたとき

→肥満は単純性肥満かもしれませんが、その他の病気に介入が必要かもしれません。はやめの受診が必要です。

 

受診時チェックリスト

□どのくらいの期間でどのくらいの体重変化がありましたか?

□食生活の変化はありますか?

□今までかかったお病気はありますか?(既往歴)

□今飲んでいる薬はありますか?(内服歴)

□その他気になる症状はありますか?

□20歳の時の体重は?

 

最後に

日本人の多くは痩せすぎです。BMI22-25を是非自身の身長で計算してみましょう。近年流行りのBody Positive運動に代表されるように体重や体形は基本的に他人が口をだすものではないでしょう。ただし、医学的に治療が必要な疾患の症状としての肥満、もあるということは頭の片隅に入れておいていいと思います。また、やはり過度の肥満は高血圧や脂質異常症の原因となりますので、そういう場合は積極的に減量を目指す必要はあると思います。体調の良い、ベスト体重を見つけて維持できると良いですね。

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