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SYMPTOM

頭痛 ~原因と受診のタイミング~

新年第1回目は頭痛についてです。

頭痛、本当に煩わしくてこまる症状の一つです。ありふれた症状ですが、脳出血やくも膜下出血、髄膜炎のような命にかかわる重大疾患から、生活の質を著しく下げうる片頭痛や群発頭痛、風邪の時の頭痛までその軽重は実に様々です。

医師として頭痛診療にあたる場合、やはり一番に絶対見逃せない危険な頭痛を除外したい、という気持ちになります。それらでなさそうな場合は少し落ち着いて原因に頭を巡らせます。この記事では絶対に見逃せない危ない頭痛とそれ以外の頭痛の見分け方や原因、治療法および受診時の確認事項について見ていきましょう。

 

 頭痛の分類

頭痛は一次性の頭痛、二次性の頭痛に分けて考えることができます。

一次性の頭痛は片頭痛や筋緊張性頭痛、群発頭痛を指します。

かなり生活に支障がある場合もありますが、「命」の面では危険な頭痛には入りません。

ただし、QOL=生活の質 という視点では是非治療したい頭痛です。

→ 一次性の頭痛 へ

 

一方で、二次性の頭痛、とは何らかの原因があって頭痛が起こってくる場合です。この中に“絶対に見逃せない頭痛”が入ります。重大性からも、まずは二次性頭痛の中でも絶対見逃せない頭痛の原因疾患、御三家を挙げておきます。

*すべて基本的には救急で病院に行く必要がある疾患です。

 

①絶対見逃せない頭痛

脳出血、クモ膜下出血、髄膜炎

稀な疾患を挙げるなら静脈洞血栓症なんかもありますが、とりあえず頻度から、この3つを挙げました。

*クモ膜下出血

「突然ハンマーで頭を殴られたような頭痛」は医学をかじった人間なら絶対にクモ膜下出血を思い起こすキーセンテンスです。“突然”とはそのタイミングが事細かに表現できるほど突然、という意味で。家に帰ってドアを開けた瞬間、とか3:14と時間がピンポイントにわかるほど突発性の頭痛を指しています。こういうどう考えても“一瞬で起こった頭痛”がある場合、CT検査など精査が必要です。頭痛の自覚をするまでもなく倒れて一回の出血で致命的になることもある出血から本出血の前触れ、警告出血、という場合もあります。多くの場合は脳の動脈瘤破裂が原因、必要時は脳外科で動脈瘤にコイルを詰めてしまう手術や、開頭してクリップで止めてしまう手術など、破裂予防ができる事もあります。

*脳出血

高血圧や血管の疾患(動脈硬化など)が原因となることが多いです。突然の頭痛と共に、出血した部位の脳の機能が侵されるため、手足・顔面の麻痺や意識障害、感覚障害、呂律が回らないなどの症状が伴うことも多いです。やはり早急に救急車で病院に行って血圧を下げる、止血剤を使う、血腫(脳にできた血の塊)を除く手術など対応が必要な場合が多いです。

*髄膜炎

医者泣かせの疾患の一つです。脳や脊髄は水(髄液)に浮いているのですが、その水の空間を作るのが髄膜です。(内側から軟膜―くも膜―硬膜)ここに細菌やウイルスなどが入って感染を起こすのが髄膜炎です。やはり致命的経過をたどったり、後遺症をのこしたりすることもある重大な疾患です。なぜ医者泣かせかと言いますと、一見“風邪”みたいに見えることがあるのです。熱が出て、だるくて、頭が痛い・・まぁ風邪かでほとんどの場合正解なのですが、その中に髄膜炎が紛れ込むのです。非常に頭痛が強い、意識障害がある、首が前に曲げられない(髄膜刺激兆候と言います)などがあれば髄液検査(腰椎穿刺)をしてそこにばい菌のいる兆候がないか確認する必要があります。そしてその兆候がある場合は入院で点滴で抗生剤を投与するなど治療が必要になります。

 

②その他の二次性頭痛

脳腫瘍:必ずしも頭痛で発症するわけではありませんが、重要な鑑別疾患です。特に朝がたに強い頭痛、というのは脳腫瘍をちらっと思い起こすキーワードです。どうも睡眠中に脳腫瘍が浮腫(むくみ)を起こし、起きた時に頭痛を起こすようです。CTやMRI検査が必要です。

神経痛;外来診療をしていると意外におおいなぁという印象なのが大後頭神経痛など頭部の感覚神経が原因の神経痛です。頭部の感覚は首の神経が頭蓋骨の下縁からぐるっと出てきます。大後頭神経、小後頭神経があり、これらの神経痛で頭痛を来すことがあります。クシで髪をとかす時に一部変な感覚がする、という言い方をする方もいます。煩わしいですが、しばらくで治ります。痛みが強い場合はしばらく鎮痛剤を処方することもあります。当院で行っている鍼灸治療も効果がある場合があります。

 

③一次性頭痛

さて、命にはかかわらないものの、生活の質を低下させる一時性頭痛ですが、片頭痛、筋緊張性頭痛、群発頭痛が挙げられます。

片頭痛;典型的な片頭痛はとても分かりやすいです。目の前に急に明るくちかちかした線が現れ(閃輝暗点)、徐々に頭痛が出現、ひどい場合は身体を動かすこともつらく、音や光やにおいに敏感になります。そしてしばらくして軽快するものの、同じような発作を繰り返します。

片頭痛は基本的に若い女性に多く、御家族にも片頭痛の患者さんがいることが多いです。(家族歴)

ロキソニンやカロナールなども効きますが、片頭痛の場合は片頭痛に特化した薬、というのもあります。

原因としては血管の拡張があり、拡張した血管で刺激された三叉神経が頭痛を起こし→さらに頭痛を引き起こしていく という悪循環につながります。

→生活に支障があるような場合は“血管を収縮させる薬”の処方も可能かもしれません。是非内科や神経内科でご相談ください!

 

緊張型頭痛;肩、首の筋緊張由来の頭痛です。多くの現代人にとって避けがたい肩こりなどからくる頭痛・・筋緊張を緩めるお薬などもありますが・・むしろ当院で行っている鍼灸マッサージや生活改善(PC作業台の工夫や休憩時間の確保等)の方が根本的な解決につながると考えています。

→是非ご相談ください!

 

群発頭痛:「目の奥がえぐられるような頭痛」という過激な表現がされることがあります。それほどの頭痛が“群発”の文字通り、数週~数か月に群発して起こり、パタッと発作のない期間が来て→まだ頭痛が起こる、という頭痛です。20-40代、男性に多いといわれています。酸素吸入が効果的な場合もあります。耐え難い頭痛であり、まずは受診して鎮痛剤が必要になるでしょう。

 

④薬剤乱用頭痛

ロキソニンなどの鎮痛剤を飲みすぎることで悪化する頭痛です。とても厄介なのは薬がなくても頭痛(反跳頭痛)が起こるため、もはや鎮痛剤が手ばなせなくなる点です。頭痛日記をつけて、まずは月に何回鎮痛薬を飲んでいるか確認してみましょう。3か月以上にわたって10-15日/月以上お薬を内服している場合、診断基準に当てはまる可能性があります。

治療は原因となっているお薬の中止です。反跳頭痛への対応も必要であり、中々治療に難渋します。是非信頼できる内科、神経内科医師に相談しつつ、焦らず治療を進める必要があります。

 

受診時のチェックリスト

頭痛で内科や神経内科を受診するときは是非以下の項目を確認していただくとスムーズな診療ができるかと思います。

□いつから、どの辺りに頭痛がありますか?

□急に痛みが出ましたか?または徐々に悪化していますか?

□その他の症状はありますか?

目がちかちかする、吐き気、嘔吐、意識障害、手足の動きが悪い、発熱 など

□いわゆる頭痛持ちですか?(同じような頭痛を繰り返していますか?)

□今までされた病気はありますか?(既往歴)

□今飲んでいる薬はありますか?(内服歴)

□ご家族に脳血管疾患で突然死された方や片頭痛持ちの方はいますか?(家族歴)

□ここ最近で美容院や頸部のマッサージ(整体など)に行きましたか?

※鎮痛剤を常用している方は・・

□月何回くらい鎮痛剤を飲みますか?

 

最後に

頭痛についてはそのテーマだけの専門書があるくらい奥深い症状であり、もはやとてもブログで書ききれるものではありませんが、今回はよくある頭痛、見逃せない頭痛、という切り口で的を絞って記載しました。頭が痛い場合、何か重大疾患ではないか、と心配になると思います。意識障害や麻痺などの症状が伴う、発症時期が明確な突然の頭痛の場合は早急に、そうでないが生活に支障があり困っている場合は数日を目途に内科、神経内科の受診を検討していただければと思います。

もちろん当院でも診療可能ですし、精査が必要だと判断すればすぐに専門科に相談、連携を行います。

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