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脳梗塞 ~詳しい解説~

脳梗塞、脳卒中、脳溢血、脳出血、脳血管障害・・巷にあふれるこれらの脳の病気を表す言葉・・

使い分けるのは難しいですね。

今回は脳梗塞について紹介します。

→簡単な解説はこちらをご覧ください! 脳梗塞~まずはわかりやすい言葉で~

*脳卒中とは?

さて、まずは上に書いた脳にまつわる病名、使い分けを簡単に見ておきましょう。

脳の病気は沢山ありますが、その中で血管に原因があり、急激に起こる病気が

脳梗塞 と  脳出血 です。

脳卒中≒脳血管障害は上の二つを併せて表現しています。脳梗塞は血管が詰まる病気、脳出血≒脳溢血は血管が破れる病気で以下のように図で示すことができます。

 

 

 

 

 

*脳梗塞とは?

脳梗塞は一言で言えば、「脳の血管が詰まる病気」と表すことができます。

脳は身体を動かし、物を考え、外からの刺激を適切に受け取り・・常に働き続ける大事な臓器です。そのため、身体の他の部分と比べても必要な栄養、酸素の量が多く、さらに栄養を備蓄しておけないため、常に新鮮な血液が送られてくる必要があります。網目のように張り巡らされた血管、そのどこかが詰まると、その先で栄養や酸素を待つ脳の細胞は数分でダメージを受け、死んでいくことになります。

これが脳梗塞です。

*原因は?

脳梗塞の原因を考えるということは、血管がつまる原因を考えることになります。

大きくは2つ、血管そのものが動脈硬化で細くなり→詰まってしまう場合と、身体の別の部位から血の塊などが流れてきて→血管が詰まる、に分けて考えることができます。

①動脈硬化:生活習慣病を基礎として徐々に動脈が硬くなります。壁もザラザラになっていきます。血管自体が細くなると共に、そのザラザラの病面に血の塊ができてしまうと、突然血管がつまることになります。これが脳に血液を送る血管(首~脳の中の血管)に起こると脳梗塞を来します。

②血の塊などが飛んでくる:どんな時に血管の中に血の塊ができてしまうか・・稀な例まで挙げればきりがないのですが、最も多いのは心房細動という不整脈がある場合です。心臓は4つの部屋が適切に協力して血液を全身に送り出しますが、心房、と呼ばれる部位が年齢と共にブルブル震えたような状態になってしまうことがあります。その場合、血液は心房のなかでよどみますので、少しずつ血が固まり、血栓と呼ばれる血の塊ができてしまうことがあるのです。それが心臓から飛び出してしまうと、血流に乗って時にその血栓は脳に飛んでいきます。大きな動脈を通り過ぎた血栓は脳の血管で詰まることがあります。これが脳梗塞です。

 

 

 

 

 

 

 

 

*症状は?

脳はたった1.3-1.4Kg程度の臓器ですが、身体中の動きを司り、感覚の刺激を受取り、物を考え、、狭い範囲でたくさんの仕事を分担して行っています。

よって詰まる血管の部位、大きさによって症状は全く異なります。それが脳梗塞の早期発見を難しくしている一つの理由かもしれません。

しかし!よくある症状もあります。以下のような典型的な症状があればすぐに受診が必要です。

①片麻痺:半身不随という言葉を知っている方もいるかもしれません。運動を司る部位がダメージを受け、麻痺を起こします。特徴的なのは身体の右側だけ、または左側だけ、に症状が起こることです。上半身だけ、下半身だけ、という症状を起こす脳梗塞はまれです。

②顔面麻痺:体と同じく、顔も右だけ、または左だけの麻痺を起こすことがあります。鏡を見ると顔が左右対称でなく、どちらかの唇がだらんと下がってしまったり、顔のしわに左右差があったりします。

③構音障害:うまくしゃべれない、という症状が出ることがあります。言葉を生み出すのどや舌の筋肉の動きが悪くなることが原因です。また、似て非なる症状に“失語”もあります。

他にも、急に意識障害がおこったり、視野が欠けてしまったり、様々な症状がおこりうるのが脳梗塞です。気になる症状が特に“急に”起こる場合、一度は受診を検討していただければと思います。

*治療は?

脳梗塞の怖いところは脳の神経細胞が栄養や酸素がない状態にとても弱いことです。血液が十分にいきわたらなくなると数分で脳の神経細胞がダメージを受け、死んでいきます。

したがって、脳梗塞の治療は時間との闘いということになります。

2つの数字を示しておきます。

発症後4時間半:症状が現れて4.5時間以内の場合、(全例ではありませんが)tPAという点滴の薬を使うことができるかもしれません。血液をとにかくサラサラにして、血の塊を溶かしてしまうことが目標です。血液サラサラなら何時間たってもできるのでは?と思われるかもしれませんが、4.5時間以上たってから血液をサラサラにしすぎると、急激に脳出血の可能性が高まってしまうのです。

梗塞に至った部位は脳の組織がすっかり弱くなっています。したがって出血しやすいうえに、出血が始めると止まりづらくなる血液サラサラのお薬は、時に脳出血による死亡、という最悪の結果をもたらすこともあるのです。

発症後6時間(最大で12時間くらい・・):4.5時間を過ぎてしまっても、カテーテル治療という外科的な治療が適応となることがあります。こちらも全例で行えるわけではありませんが、詰まっている血管を物理的に広げたり、血の塊を取り除いてしまう、というある種根本的な治療法です。総合病院や大学病院などの大きな病院でしか受けることができない治療です。こちらの治療は様々な条件によって出来る時とできないときがあります。可能な時間に関しても上記の点滴薬ほど厳密に決まっていません。

発症直後はとにかく時間との闘い、すぐに病院に行ったり救急車を読んだりして適切な治療を受けることが必要です。

しばらく時間がたっている場合、上記の治療は行うことができません。一度完全にダメージを受けた細胞は残念ながら生き返ることがないためです。しかし、2回目以降の脳梗塞を起こさないようにすること、たとえ後遺症があっても、その後遺症をできるだけ軽くするためにリハビリをしていくこと、これらは非常に重要な治療と言えるでしょう。

予防:生活習慣病(糖尿病や高血圧症、脂質異常症など)がある場合、これらを適切に治療していくことは必須です。心房細動がある場合、まずは血液サラサラの薬を飲み、新しい血の塊ができないようにすることが必要です。また、より年齢が若い方の場合や、つい最近心房細動という不整脈になってしまった方の場合、心臓の専門の先生に相談、心房細動自体を止める治療ができる事もあります。

リハビリ;脳の神経細胞は再生が難しい一方、神経細胞同士の情報のやり取りがリハビリによってう回路を作り、いったん失われた機能が戻ってくることも多々あります。歩けなかった方が歩けるようになったり、自分で車いす操作ができるようになった例もたくさん見てきました。リハビリは専門のリハビリ医師、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの方に行って頂くことになります。

 

*最後に

神経内科の医師として最も沢山診療に当たらせていただいたのが脳梗塞の患者さんの治療です。残念ながら亡くなる患者さんもいました。命は助かっても、介護が必須になってしまった方も少なからずいました。もちろんどんなに元気な人、基礎疾患のない人でも次の瞬間脳梗塞になる可能性はあります。しかし、確率的には生活習慣病や心房細動を放置してしまう方のほうが危険性は明らかに高いといえます。そういう危険性を広く知っていただき、日々の生活習慣の中で改善できる部分がないか見直す機会をつくり、必要時、適切にお薬を飲むことで脳梗塞という病気を防ぐ・・ぜひクリニックとしても予防に向けたお手伝い、介入をしていきたいと考えています。


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