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麻疹・はしか

最近話題の疾患、麻疹(はしか)。テレビで○月×日にここに行った、公共交通機関を使った・・などぎょっとするような個人情報が報道されるため、「不気味な疾患」という印象の方も多いと思います。

一方、ある一定以上の年齢の方においては、「当たり前」の病気だった時期もあり、医師の間でも、同年代だと「麻疹見たことないよね~」となりますが、年配の先生方の中には「普通にいる疾患」と認識のずれがあります。

麻疹、、一体何がそんなに恐ろしいのか、私自身実感があるわけではないのですが、予防しておいた方が良い疾患であることは間違いなさそうです。麻疹について紹介します。

□麻疹とは?

□症状は?→何がそんなに危険なの?

□診断は?

□治療は?

□予防は?

 

□麻疹とは

麻疹とは、麻疹ウイルスの感染によって引き起こされる全身に症状が出うる感染症です。

「ウイルス」感染であるため、抗生物質は効果がありません。

麻疹の特徴は何といってもその感染力の高さ!空気感染をしますので、通常のマスクでは防げず、同じ空間にいるだけで感染のリスクがあります。

Ex)電車内にCOVID19患者さん(接触・飛沫感染)がいる場合、飛沫が飛び散る範囲の乗客にリスクが生じますが、麻疹患者さんがいる場合は同じ車両の端と端でもリスクあり、下手すれば患者さんが下りた後2時間程度は同じ車両に乗り込むだけでもリスクあり!となります。

一人の患者さんが免疫力のない周囲何人に感染させ得るか、を基本再生産数と言いますが、圧倒的に基本再生産数が高いのが麻疹なのです。

麻しんの基本再生産数は12~18、風しんが5~7、おたふくかぜが4~7、SARSが4前後です。

 

□症状は?→何がそんなに危険なの?

症状は2段階に分かれて出現するのが特徴的です。

感染から数日~3週間の潜伏期間を経て(潜伏期間が長い!!)、まず風邪と見分けのつかない38℃台~の発熱、せき、鼻水、めやに、目が赤くなる、体がだるいといった症状が出はじめ、症状は3~5日間続きます。この時期をカタル期と呼びます。これらの症状はありふれており特徴的なものではありませんので、かぜと診断されることがほとんどだと思います。
しかし、発熱する1日前くらいから他者への感染力が生じるといわれている上、カタル期の感染力が最も強いと考えられていますので、とても厄介です。
その後、口の中の粘膜(奥歯のすぐ横付近)に白いぶつぶつができ、コプリック斑と呼ばれが、これがはかなり麻疹に特徴的とされます。

(・・ただ、現代の多くの医師は試験勉強でコップリック斑の知識はあっても、実物は見たことがないため、口内炎と思ったり、見逃してしまうことも多いと個人的には思っています。自分自身も適切に判断できるか、中々難しいと考えています。)

このコプリック斑は数日で消えてしまいます。
コプリック斑があらわれると、熱は37℃台に一時的に下がりますが、その期間は1日程度と短く、その後すぐに第2波の高熱(39~40度にもなる)、首すじや顔に発しん(赤いぶつぶつ)が出はじめます。発疹は顔からどんどん身体に下がっていくのが特徴とされます。

ここから回復することがほとんどですが、中には重篤な合併症や後遺症を残すのが麻疹の怖いところです。

●難聴:小児で両側の難聴を来すことがある

●脳炎:麻疹発症時だけでなく、何年も(5-10年)してからSSPEという不可逆的な脳疾患を起こすこともあります

●肺炎:高齢者、免疫不全者 時に致死的

麻疹の致死率は現代の日本では決して高くはありませんが(0.1%程度)、一方0.1%程度で脳炎を起こすと言われ、麻疹脳炎の致死率は15%と高くなっています。また命は助かっても40%に何らかの後遺症が残るとも言われ、危険な感染症であることが分かります。

 

□診断は?

症状だけで麻疹を疑うことは、その罹患率の低さ(患者の少なさ)を考えても難しいです。

一方、明らかな接触歴がある、海外渡航歴がある、などリスク因子がある患者さんの高熱や皮膚の発疹を見たら積極的に疑う必要があります。

診断は血液、尿、咽頭拭い液(綿棒を鼻の奥に入れる、インフルエンザの時にやる検査)のPCR検査によって麻疹ウイルスの存在を証明することが必要です。ちなみにこれらの検査は基本的に保健所が行うため、患者さんに金銭的な負担は生じません。(初診料や再診料、診察代、処方代などはかかります!!)

ただし、結果が出るまで患者さんが気軽に出歩くのを避けるため、我々医師は麻疹を「疑った」時点で保健所に届け出ることが義務とされています。

 

□治療は?

麻疹に効く抗ウイルス薬はありません。基本的には各症状に対して自宅で対症療法を行い、重症化の兆しがあれば全身管理ができる総合病院で入院加療が必要となります。

ただし、上述の通り、麻疹は空気感染をしてしまうため、普通の病室では入院が出来ず、陰圧室という、室内を陰圧にして、空気が外に漏れないようにした特別な部屋で診療を行う必要があります。

 

□予防は?

こんな恐ろしい麻疹ですが、ワクチンという素晴らしい方法で予防することが出来ます!

(麻疹ワクチンは立場・知識上、絶対に受けておいた方がいいよ、とお勧めするワクチンです)

人生で2回、麻疹のワクチンを受けている人は基本的には麻疹にかからず、かかっても軽症、しかも他者に移しづらいということが判明しています。(母子手帳の記録の確認が必要です)

現在は小児期に2回の接種が無料で受けられるため、ワクチンを受けられない理由がない限り、しっかり受けて免疫を持っておくことが重要です。

もちろん罹患歴があっても免疫は作られますが、罹患に伴うリスクの高さを考えれば、わざわざ危険な橋を渡らずに、ワクチンで予防してしまう方が良いと思います。

また、接種歴が不明な場合や不安な場合は自費ですが、抗体の量を測ることで、麻疹に免疫があるかを調べることが出来ます。血液検査1本で2-3日で結果が出ますので、ワクチン接種歴が不明で例えば麻疹流行地域に旅行する場合などは、調べておくことをお勧めします。(当院でも実施可能です)

 

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