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橋本病 ~甲状腺機能が低下して「元気」がなくなります~
日本人名がついた疾患の中でもよく聞くのが橋本病ではないでしょうか?(ほかには川崎病などが有名です)女性に多い自己免疫疾患(自分の免疫が間違って自分自身を攻撃してしまう病気)で、慢性的な甲状腺の炎症がおこります。炎症によって甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンが不足すると様々な症状が出現します。
最近甲状腺機能低下の患者さんを診る機会が多くなりました。今回は橋本病についてご紹介します。
甲状腺機構亢進症(バセドウ病)に関してはこちら→
□原因は?
□症状は?
□診断は?
□治療は?
□最後に
橋本病(慢性甲状腺炎)は自己免疫疾患の一つです。自己免疫疾患とは、本来外敵から体を守るための免疫が、誤って自分の臓器や細胞を標的にしてしまう病気の総称で、関節が壊れる関節リウマチなども自己免疫疾患です。橋本病では、この免疫が甲状腺を攻撃し、慢性的に炎症が生じます。よって橋本病は「慢性甲状腺炎」(そのまま・・・)とも呼ばれます。慢性的な炎症によって甲状腺の組織が少しずつ破壊されると甲状腺は本来の機能である甲状腺ホルモンを適切に作ることが出来なくなります。結果として甲状腺機能低下症となれば、様々な症状が生じてきます。
橋本病の原因となる、自分の甲状腺を攻撃する自己免疫がなぜ作られてしまうか、その原因は分かってはいません。
一方、橋本病(慢性甲状腺炎)は非常に頻度の高い病気で、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人に見られるとも言われます。ただし、大部分の人では甲状腺ホルモンは正常に保たれ、橋本病のうち症状が出るような甲状腺機能低下症になるのは4~5人に1人未満と言われます。この疾患は罹患率に男女差が大きく、圧倒的女性に多いのが特徴です。(男女比は1:20~30くらい)特に30~40代の女性に発症することが多いため、妊娠などに関し、問題になることがあります。男女差が大きい、ということで発症に性ホルモンが関わっている可能性がありそうです。
甲状腺機能が保たれている場合、例え甲状腺を攻撃する自己抗体があっても無症状で経過することがほとんどです。炎症によって甲状腺が痛みを伴わず全体的に腫れる場合もあります。甲状腺ホルモンが不足すると様々な症状が出現します。
甲状腺ホルモンは「元気を出すホルモン」のため、多すぎればカッカとしたり脈が速くなったりします。逆にホルモン不足になると(橋本病はこちら)以下のような症状が出て来ます。
・低体温、寒がり
・徐脈、低血圧
・体重増加
・むくみ、体重増加
・鬱、認知機能低下
・無気力、倦怠感
・便秘
・かすれ声
・女性では月経過多
高齢の場合、元気がない、鬱っぽい、認知症になってしまった、として橋本病が見逃されてしまう場合もあり、注意が必要です。
まずは症状から橋本病を疑うことが必要です。橋本病が疑われれば以下の検査が実施されます。
- 血液検査:甲状腺機能や甲状腺を攻撃する自己抗体の有無を調べます。
- エコー検査:橋本病があると、甲状腺は全体的に腫れ、また表面がごつごつとしたり、更に悪化すると、血流が少なくなったりします。また、腫瘍やその他の甲状腺疾患と見分けるためにもエコー検査が有用です。
その他心臓の機能確認で心電図をとったり、心臓の周りに水が溜まっていないかを確認するために胸のレントゲンを撮ったりすることもあります。
血液検査では主に甲状腺ホルモンそのもの(fT3/fT4 ふりーてぃーすりー、ふりーてぃーふぉー)やTSH(ティーエスエイチ:甲状腺刺激ホルモン)の値を調べます。
甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても病気につながるため、脳の下垂体というところから出るTSHというホルモンで微調整を受けています。
TSHの刺激によって甲状腺からはfT3/fT4と言った甲状腺ホルモンが分泌されます。もし甲状腺ホルモンが多ければ下垂体はTSHの量を減らして甲状腺ホルモン過剰を抑えようとします。逆に甲状腺ホルモンが少なければTSHの量を増やして甲状腺に頑張ってホルモンを出すように働きかけます。よって橋本病で甲状腺機能が低下する、と言った場合はfT3/fT4が低下し、TSHがどんどん増え、甲状腺にホルモンを出すように刺激を出してもfT3/fT4が低いまま、という状態に陥ります。(TSH高値、fT3/fT4低値)
甲状腺ホルモンが正常範囲の場合、通常治療は行いません。甲状腺ホルモンが少なくなってしまい、症状がある場合は甲状腺ホルモンを補充してTSHが正常範囲下がるよう徐々に調整していきます。
fT3/fT4が正常範囲であってもTSH(甲状腺刺激ホルモン)があまりに過剰になる場合はより甲状腺機能の低下が示唆されるため、甲状腺ホルモンの補充を行うことがあります。
※チラージン等
なんとなくだるさが続く、疲れが取れない・・忙しい現代社会では本当によくある症状ですが、その原因が甲状腺機能低下の場合、適切な治療でこれらの症状も改善できます。
検査自体も一般的な採血で概ね翌日には結果が出るため、そこまで大変なものではありません。最近疲れやすい、体重が増える、浮腫む、寒がりになった、など「元気がない感じ」の症状がある場合は一度は内科を受診して、ホルモンの異常やその他内科的疾患が隠れていないか確認することが必要です。