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帯状疱疹
帯状疱疹、名前は聞いたことがある方も多いと思います。帯状(おびじょう)に身体に痛み、違和感が出現し、その後ブツブツと水疱が現れる病気です。神経に沿って炎症が進むため、細長い病変が見られること、痛みが強いことが特徴です。最近は帯状疱疹ワクチンのCMも多くみられるようになってきました。どんな疾患であるか、見ていきましょう。
□最後に
帯状疱疹とは実は読んで字のごとく、帯状にブツブツと水疱の発疹が出現する病気です。
日本における帯状疱疹の発生頻度は年間 1,000 人 あたり 5 人程度とされており、50歳を境に一気に発症率上がることから(70 歳以上では 1,000 人あたり 10 人以上が発症する)、中年以降、高齢者の病気、と言うことが出来ます。ただし、若い人、子供でもなることがあるので注意が必要です。
※COVID19の拡大後、クリニックの診療を通して若い人も含め帯状疱疹が増えたなーという感覚がありますが、実際の数の比較ができないため、あくまで実感です。ちなみに自分もかかりました・・
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうウイルス)によって起こされる疾患です。
水痘ウイルスに初めて感染すると、水痘(=水ぼうそう)になります。全身に水疱が出来て、熱が出るいわゆる子供の病気です(大人もなり得ますが)。その後熱や発疹が治った後もウイルスは身体から完全に排出されず、神経の一部(脊髄のすぐ近くにある後根神経節という部分)に潜伏感染をします。潜伏感染をしている間はウイルスは静か~に人体と共存するため、特に症状はありません。しかし、免疫力が低下したりストレスがかかった時にこのウイルスが再活性する場合があります。するとウイルスは再度増殖し、後根神経節から感覚神経を伝わって広がっていきます。この時炎症を起こすため、神経に沿った帯状の領域に痛み、そして水疱が出現するのです。
神経に沿って出現するため、身体の正中を大きく超えて広がったり、縦方向に長く伸びて発疹が起こったりすることはありません。(何本かの神経が同時に帯状疱疹を起こせば範囲が拡大することはあります。)
典型的な場合は1週間~数日前から何となく体の一部の皮膚やその奥がピリピリするような、普段の筋肉痛などとは異なる痛みが出現し、その後その部位に沿って米粒大の水疱がブツブツと現れます。痛みの程度は個人差がありますが、かなり強い痛みが生じることも多く、鎮痛剤が必要になることがほとんどです。水疱はその後徐々に痂疲化(乾いてかさぶた化)し、治癒していきます。帯状疱疹はその重症度によって経過が異なり、受診せずに軽快してしまう方から、炎症が強く、激しい疼痛が残ってしまう方(帯状疱疹後神経痛)、腱や等に炎症が波及し、手の動きが悪くなる(拘縮)など後遺症が残る方まで様々です。
また、危険な部位の帯状疱疹に顔面領域の発疹が挙げられます。目の知覚神経(三叉神経第1枝領域)の帯状疱疹では視力低下や失明、耳周囲の神経の帯状疱疹では顔面神経麻痺(RamzeyHunt症候群)や聴神経のダメージによる難治性のめまいなどを起こすこともあります。基本的には入院で注意深い観察と点滴などによる積極的な加療が必須です。
帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウイルスであるため、抗ウイルス薬の使用が可能です。発症後できるだけ早い時期での治療開始が望ましいです。飲み薬、または点滴製剤がありますので、重症度や外来で治療するか、入院で治療するかによって使い分けることが出来ます。
また、痛みが強い場合、まずは消炎鎮痛剤による鎮痛をはかることが多いです。カロナールやロキソニンなどが使われます。
また、神経の損傷があるため、その再生を促すビタミンB12製剤を追加したり、帯状疱疹の湿疹に加え、病変部に細菌感染が被るのを防ぐため、抗生物質の入った軟膏を処方する場合もあります。
帯状疱疹はまったく後遺症や傷あとを残さず治癒する場合もありますが、以下のような生活に支障を来す症状が残ってしまう場合もあります。とにかく早めの治療をお勧めしています。
〇帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹は神経に沿って水痘ウイルスが暴れまわる疾患のため、その神経そのものがダメージを受けてしまう場合があります。知覚神経がダメージを受けるため、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」疼くような痛みが起こり得ます。また、通常痛みを起こさない軽い接触だけでも痛く感じてしまう「アロディニア」と呼ばれる痛みも出現することがあります。こうなってしまうと普通の痛み止めでは効果が乏しいことも多く、神経痛用の痛み止め等を内服したり、ペインクリニックで注射治療が必要になる場合もあります。
〇角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎など目の障害:額~鼻先を支配する三叉神経第1枝領域に帯状疱疹が生じた場合、その知覚神経は角膜にも分布しているため、角膜炎など目の症状がでる場合があります。炎症が高度であれば視力低下や失明のリスクもあります。
〇Ramsey Hunt症候群:耳周囲にぶつぶつが現れるような帯状疱疹では感覚神経の障害だけでなく顔面神経麻痺を起こすこともあります。また、耳の神経がダメージを受けると難聴や高度のめまい、耳鳴りなど日常生活に支障を来す症状が出現することもあります。
〇機能障害:クリニックの患者さんは手のひら部分の重度の帯状疱疹によって腱膜のダメージが残ってしまい手を握る機能が著しく落ちてしまった、という方もいます。リハビリをしても完全には回復しておらず、調理など家事作業にも大きな支障が残ってしまいました。
帯状疱疹・・まさか!!と思いましたが、コロナ禍2年目私自身も足の帯状疱疹にかかりました。約1週間前からずきずきと大腿後面~ふくらはぎに何とも言えない痛みを感じ、寝ていても痛みで起きてしまうくらいになりました。その後ブツブツと数個の発疹が出現し、自分で確定診断をつけることが出来ました。その時感じたのが、帯状疱疹はかなり”痛い病気”であるということです。2歳ころに水痘に罹患し、大学生の頃に水痘ワクチンも打ち直していたにもかかわらず発症したことが驚きでした。自身は幸い水疱は5~6個程度で済みかなり軽症でしたが二度となりたくない!と強く思います。今後期を見てワクチンで予防しておこう、とも考えています。帯状疱疹はワクチンで予防、又はなっても悪化を防げる可能性がある疾患です。(帯状疱疹体験記はこちら→)
予防と発症したら早急な治療、を心がけたいものです。