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バセドウ病 若い女性に多い甲状腺疾患です

バセドウ病という名前を聞いたことがある方は多いかもしれません。本来外敵に立ち向かう免疫である「抗体」がまちがって甲状腺を「刺激して」(破壊じゃない!刺激してしまうのが珍しい点!)甲状腺ホルモンを必要以上に生産させてしまい、結果として甲状腺ホルモンが過剰となる病気です。若い女性に多く、合併症も多いため放置しない方が良い疾患です。

橋本病(甲状腺機能低下症)の対極にあるバセドウ病を紹介します。

(橋本病に関してはこちら→

 

バセドウ病とは?

原因は?

症状は?

診断は?

治療は?

最後に

 

バセドウ病とは?

甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌し、全身の代謝を調節しています。

甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても疾患につながるため、脳と連携して適量が分泌されるように微調整されています。ところが、本来外敵に対応するための免疫が誤って甲状腺をターゲットとし、甲状腺を破壊するのではなく、あたかも甲状腺刺激ホルモンのようにふるまうことで甲状腺からのホルモン分泌を促してしまうことがあります。これがバセドウ病で、ホルモンが過剰となることから甲状腺機能亢進症の原因となります。

バセドウ病は1,000人に1~3人程度が罹患するとされており、若い女性に発症しやすいのが特徴です。

 

原因は?

甲状腺に対する自己抗体が甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを過剰に分泌してしまうのがバセドウ病ですが、なぜ、甲状腺を刺激するような抗体が産生されるか、その根本原因は不明です。

 

症状は?

甲状腺ホルモンは身体を「元気にする」ホルモンであるため、甲状腺ホルモンが過剰になると以下のような症状が出現します。

・頻脈、動悸感、血圧上昇

・イライラや不眠

・体重減少

・手の震え

・過剰な発汗

・下痢

また、甲状腺が全体的に腫れて大きくなってくるため、首の前部分が腫れて盛り上がって見えたり、また目の周囲の脂肪組織が増殖し、眼球が押し出されるため、あたかも目が飛び出しているように突出してくる場合があります。(眼球突出)

診断は?

上記のような症状でバセドウ病を疑ったらまずは血液検査で実際に甲状腺ホルモンが増えていることを確認する必要があります。そして、併せて甲状腺を刺激するような自己抗体があるかも血液検査で調べることが出来ます。(TSH受容体抗体)

甲状腺ホルモンの過剰+甲状腺を刺激する抗体が陽性であればバセドウ病が確定診断となります。

追加の検査としてエコー検査による甲状腺の腫れの評価、心電図による頻脈や不整脈の評価なども行われます。

 

抗体が陰性となった場合は追加検査が行われる場合もあります。

放射性ヨウ素(アイソトープ)検査という検査で、甲状腺の働き具合を画像を用いて評価する検査です。甲状腺ホルモンの産生にはヨウ素が必要ですが、放射線を出すようにラベリングしたヨウ素も甲状腺に取り込まれる性質があります。バセドウ病のようにホルモン産生が過剰となる病態の場合はこのヨウ素の取り込み率が高くなります。よって血管にラベリングしたヨウ素を入れ、甲状腺に集まるかを確認する検査がこのアイソトープ検査です。

 

※ちなみにバセドウ病では甲状腺ホルモンであるfT3/fT4が高値となり、甲状腺を刺激するホルモンであるTSH(甲状腺刺激ホルモン)は低値となります。

治療は?

バセドウ病の治療には内服薬による治療、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療、手術の3種類があります。

最初から手術、となることはないため、最も簡単に導入できる内服薬で治療を開始することが多いです。一方内服薬でコントロールがつかない、副作用で内服できない、腫瘍合併の有無、眼の症状の状態などによってほかの治療を検討することになります。

 

1.内服薬による治療

甲状腺ホルモンが過剰であることが問題のため、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬を毎日内服します。

〇抗甲状腺薬

抗甲状腺薬にはチアマゾール(メルカゾール®)とプロピルチオウラシル(チウラジール®/プロパジール®)の2種類があります。どちらも頭痛薬や解熱剤のような即効性のある薬ではありませんので、服用を開始して2~3週間で効果が現れるのを待つこととなります。上手く治療が進めば2~3ヶ月程度で甲状腺のホルモン値が正常範囲まで下がります。

 

2.アイソトープ(放射性ヨウ素)治療

甲状腺はホルモン産生にヨウ素を必要とするため、ヨウ素を摂取すると甲状腺内に取り込まれ甲状腺ホルモンの合成に利用されます。アイソトープ(放射性ヨウ素)治療は放射線を発するヨウ素を服用することで、甲状腺内にアイソトープを取り込ませ、放射線の力で甲状腺細胞を破壊し、数を減らすことでホルモン産生量を軽減させる治療です。

専門施設での加療が必要となるため、一般のクリニックでの実施は困難です。

 

3.手術療法

甲状腺ホルモンを過剰分泌している甲状腺組織を外科的に切除し取り除いてしまうことで甲状腺ホルモン過剰の状態を改善させる治療法です。

甲状腺を全部切除してしまう甲状腺全摘術と一部のみを切除する部分切除術(亜全摘術)があります。

全摘術を受けた場合は完全に甲状腺ホルモンが欠乏することになるため、手術後は甲状腺ホルモン薬の内服が生涯にわたって必要となります。一方で全摘術を受ければ再発の可能性はなくなるため、ある意味バセドウ病は完治させることが出来ます。

全身麻酔での手術加療が行われるためやはり設備の整った病院での加療が必要であり、クリニックでは実施は困難です。

 

最後に

バセドウ病は放置してしまうと心臓に負担がかかり、心不全となったり、骨の代謝も更新して骨粗鬆症になるなど決して侮れない疾患です。また、甲状腺クリーゼという病態に陥れば命の危険もあるため、適切な診断と加療が必須の病気とも言えます。

動悸、イライラ、暑がりになった、何もしていないのに体重が減る、など気になるしょうじょうがあれば早めの受診で甲状腺ホルモンの値やTSH値などを確認することが重要です。

 

甲状腺クリーゼ

十分な治療を行っていない甲状腺機能亢進症の患者さんが、強いストレス(外傷、感染症、甲状腺以外の手術など)を受けたときに起こる、甲状腺機能亢進症の怖い合併症の一つです。多臓器不全から致命的経過をたどることもあります。治療開始早期や内服のコントロール不良、検査のための休薬などが原因となって発症することもあります。症状としては甲状腺ホルモンの過剰とそのホルモン過剰を代償する機構の破綻による意識障害、38度以上の発熱、頻脈(1分間に130回以上)、下痢等の胃腸症状、黄疸、心不全などがあります。

 

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