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てんかん ~痙攣発作以外にも色々な症状があります~
てんかん、という病名は皆さんご存知だと思いますが、どういう病気か、と言われると戸惑ってしまうかもしれません。
てんかん、最もよく知られているのは急にがくがくと痙攣するてんかん発作だと思いますが、じつは意識を失うような痙攣をする=てんかん、というわけではありません。
痙攣で有名な子供の熱性痙攣もてんかんではありません。
(※てんかんのあるお子さんが発熱で痙攣しやすくなるのはありますが)
てんかん自体の詳細は成書を当たっていただくこととし、今回はてんかんの概要と、こんな症状もてんかんのことがある、というのを紹介します。
□原因は?
□症状は?
□治療は?
□予防は?
□最後に
てんかん、とは「てんかん発作」を繰り返し起こす病気です。
「てんかん発作」とは、脳の神経細胞の異常な電気活動により引き起こされる発作のことで、突然の運動、感覚、自律神経、意識、高次脳機能など様々な神経の系統に異常が起こり、症状が出現します。原因は脳の神経細胞の異常な活動にありますので、「脳の慢性疾患」ということができます。
(よって例えば1回だけの痙攣では通常“てんかん”の診断はつきません)
※脳の神経細胞は電気信号でお互いに情報のやり取りをしています。通常は決められた神経が決められた神経のみに情報を伝達することで例えば身体の動きを適切に生み出していますが、もし異常な電気信号が脳の神経細胞にランダムに伝わってしまえば意図したものとは別の筋肉の動きが出現したり、意識を失ったりしてしまうのです。
注)下記の図は異常な電気信号をわかりやすく概念的に描いたものです
てんかんは脳の病気ですが、例えば脳出血や脳腫瘍、脳挫傷などのようにはっきりとした「脳の傷」から異常信号が発されてしまう「症候性てんかん」と、脳には明らかな原因が見られない「特発性てんかん」があります。
また、異常信号が脳の一部のみで起こる「部分てんかん」と異常信号が脳全体に波及し、意識障害必発となる「全般てんかん」に分類されます。
部分てんかんが脳の全体に広がる場合もありますが、それは部分てんかんの二次性全般化(まずは一部で異常信号が出て、二次的に脳全体に異常信号が広がる、と言う意味)と呼ばれます。
かなり専門的な話題になるので、深入りは避けます。
てんかん発作の症状は脳のどこに異常信号が起こるかによって全く異なります。
以下の表に示しました。
がくがくと全身が痙攣する、わかりやすい「てんかん発作」もありますが、他にも
〇異常な感覚が出現する
〇一点を見つめボーっとして、話しかけても反応がない
〇口をもぐもぐ、ぺちゃぺちゃさせたり、所在なく手を動かしている
〇ビクッとしてものを落とす
〇ガクっと首が曲がったり、突然転倒する
など一見不思議な人に見えてしまうような症状の原因がてんかん発作である場合もあります。本人の意識がない場合、発作期間中の記憶はありませんので、周りの家族や友人、同僚が気づいてあげることが重要です。発作中の動画撮れると情報量が多く、診断の助けにもなります。
※強直間代性発作(大発作)の場合は基本的に救急車を呼ぶ、という方針で良いかと思います。慣れている人もいますが、呼吸が止まって真っ青になったり(チアノーゼ)、痙攣重積という状態になると医療機関での処置が必須になるためです。
基本的には内服で抗てんかん薬を飲み、発作を抑えることが重要です。
また、最近は外科的治療の効果が望めるタイプのてんかんの場合は、積極的に手術も行われるようになっています。
他にも特定のてんかんでホルモン剤を使った治療なども行われますが、かなり専門的な話になりますので、ここでは割愛します。
抗てんかん薬はかつては使える薬がかなり限られていましたが、日進月歩で開発が進み、より効果が高い薬、副作用が少ない薬、他の薬剤との飲み合わせが心配ない薬、が出回るようになっています。
目標は完全にてんかん発作を抑える事であり、それを達成するために薬剤の用量を調整したり、組み合わせを考えていくことが重要になります。
抗てんかん薬治療の難しいところは「薬が効いている」=発作がない、ということでせっかく薬剤ん使用によりてんかん発作が抑えられているのに、薬をちゃんと飲まなくなったり、自己中断してしまう人も少なくない点です。(コンプライアンス不良)
救急車の対応をしているとけいれん発作で運ばれてくる人も多いのですが、抗てんかん薬が出されているにも関わらずちゃんと飲めていない、という人も少なくないのが現状です。
てんかんの最大の予防は適切な薬剤をしっかり内服すること、に尽きます。
生活面ではストレス溜めすぎない、飲酒をしない、寝不足に注意する、自己判断で新規のサプリなどを始めないなどの注意が必要です。
また、仮に意識を失ったり、痙攣するような発作が起きても、事故にならないような生活を心がけることも重要です。具体的には
〇不用意に危険な場所に行かない
Ex)電車のホームで線路側を歩いたり、立って待たない
不必要な高所や水辺を避ける
〇風呂は家族がいる時のみとする
〇許可がない場合は絶対に車の運転などをしない
などが挙げられます。
当院ではてんかんの診断から治療までを一元的に行うことは難しいため、
てんかんを疑う症状の訴えがある場合は、総合病院やてんかん専門の神経内科クリニックに紹介を行います。
その後内服の調整がついて体調が安定すれば、定期的な受診を受け入れることは可能です。
先述のようにThe痙攣、以外にもてんかん発作には色々な症状があります。気になる症状がある場合はまずは近くの内科やかかりつけの医師に相談することが重要です。