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腸内細菌について ~その奥深い世界~
突然ですが、腸内にはどのくらいの数の細菌が住み着いていると思いますか?
ヒント?:人間の細胞はだいたい60兆個と言われます・・
→正解は100兆個!!重さにして1-2㎏とも言われます。
身体を作る以上の細菌が腸にいるのです。衝撃の数字です。
もちろん口の中や鼻の中、皮膚にも細菌は住んでいますが、やはり細菌のメッカ、密集地帯は腸管です。
彼らは彼らなりの縄張りや関係性を構築し、安定した“腸内環境”をつくり生息しています。
これだけの数の細菌がいる、というだけで腸内細菌の状態が人体にも良くも悪くも影響を与えることはなんとなく予想がつきます。実際に腸内細菌の状態が人体に様々な影響を与えることが近年どんどん知られるようになっています。
*ある種の癌
*肥満
*生活習慣病
*ストレス応答、精神疾患
*アレルギーなど免疫関連疾患 などなど
まだまだ研究途上の腸内細菌ですが、当院でも実施しているMykinso検査では、検便により簡単に自分の腸内細菌のプロファイルを知ることができます。
以下腸内細菌詳細
*腸内細菌 研究の歴史
腸内細菌の検査で最も大変であったのが、菌を分離、培養する技術の確立です。というのも、単純に便検体を寒天培地で育ててもうまく培養できない菌が数多くあったからです。
1950年代から培養技術の研究開発が進められていましたが、やはり腸内に住み着く細菌の70-80%は培養困難と言われていました。腸内という“他の菌がいる環境”を体外では再現しきれず、他の細菌がいないと育たない菌は分離できない、などの理由があったそうです。
その後爆発的に技術革新が進んだ遺伝子解析がブレイクスルーとなります。遺伝子を読み込むことで、培養できなかった菌(つまり死んだ菌でもDNAは残るので、検査可能!)の存在が明らかになっていきます。
こうして研究が進む中で、腸内細菌のプロファイル(種類や量)が極めて個人差の大きいものであることが知られるようになっていきます。
そして、ある種の腸内細菌プロファイルをもつ方と特定の疾患の関係が知られるようになっていくわけです。
*人の腸にいる菌
腸管に住む細菌、その分類は多岐にわたりますが、大きく以下の3種類に分類することができます。
〇善玉菌・・・ビフィズス菌、乳酸桿菌 等
〇悪玉菌・・・ウェルシュ菌、クロストリジウム、黄色ブドウ球菌 等
〇日和見菌・・バクテロイデス、非病原性大腸菌、ユーバクテリウム
善玉菌は消化吸収を助け、感染防御やビタミンの合成など人体に有益な菌を指します。
悪玉菌は発がん物質の産生、ガスの発生など人体に悪影響を与える菌を指します。
日和見菌は基本的にはそこにいるだけ、しかし体調が悪くなったりすると病原性をもって暴れ出すことがある菌を指します。
この善玉;悪玉;日和見のバランスが腸内環境には重要です。
*プロバイオティクス
しばらく前から話題となり、すっかり生活にも定着した感もあるプロバイオテイクスですが、
ざっくりと 「腸内環境を整え、腸内の異常環境を改善し、宿主(つまり人間)の健康状態に影響を与える生きた細菌細胞」をプロバイオティクスと言うことができます。
乳酸桿菌(乳酸菌)などがその代表選手ですが、以下のような効果が研究でも示されており、健康にも大いに役立ってくれることがわかります。
□整腸作用
□発がんリスクの低減;様々な研究で発がんリスクの低減が示されています。
□免疫の調整;免疫も極めて奥深い世界です。弱すぎれば感染の危険性が増し
暴走すればアレルギーや自己免疫疾患をおこす免疫、それをいい塩梅で調整
するのに腸内環境が重要な役割を持っています。
□コレステロール低下作用
□血圧降下
最後に
大学院時代に奨学金を頂いていました。その奨学金を主催する先生が腸内細菌の研究をされており、学生ながら興味深いお話に引き込まれました。もう10年くらい前になるわけですが、腸内細菌の重要性を語る先生のお姿がとても印象的でした。培養の難しさを語る先生のお話が好きでした。遺伝子解析で飛躍的に研究が進んだ今も先生の業績が色あせることはありません!研究自体で恩返しはできませんが、一般の方にその面白さ、重要性を知っていただく形で何か研究の世界にも貢献出来たらいいな、と考えています!