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睡眠導入剤の使用について

実は内科でもしばしば処方するのが「睡眠薬」です。重度のうつ病やその他精神疾患に伴う不眠に関しては精神科受診をお勧めしていますが、一方、軽度の不眠の患者さんは非常に多く、内科でも睡眠剤は処方が増えている印象です。

睡眠剤には様々な種類、容量があり、生活習慣や不眠の程度にあった睡眠薬の選択が重要です。

※不眠症の原因等に関してはこちらをご覧ください

睡眠薬には様々な分類法がありますが、私としてはその働きから大きく2つに分けて考えるようにしています。

◎脳の機能を低下させて眠気を催す薬(眠りのスイッチを入れるイメージ)

非ベンゾジアゼピン系
超短時間型:マイスリ―・アモバン・ルネスタ

ベンゾジアゼピン系
超短時間型:ハルシオン
短時間型 :レンドルミン・エバミール/ロラメット・リスミー・デパス・サイレース
中間型  :ユーロジン・ベンザリン/ネルボン
長時間型 :ドラール

◎自然な眠気を強くする睡眠薬(覚醒のスイッチを切るイメージ)

メラトニン受容体作動薬:ロゼレム・メラトベル

オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ・デエビゴ

似て非なるメカニズムで脳に働きかけ、睡眠を促す薬がある、ということになります。歴史が長いのは脳の機能を強制的に低下させて眠りにいざなうベンゾジアゼピン系の薬で、作用時間やその強度も様々です。ただし、ベンゾジアゼピン系で得られる睡眠はいわゆる「質の悪い睡眠」になりやすいことが知られています。以下それぞれの特徴を比較してみます。

◎強さ

睡眠薬の強さは概ね以下のようなイメージになります。当然強い薬ほど睡眠を促す作用は強くなります。一方でベンゾジアゼピン系の薬は翌朝起きてみたら内服後の記憶が全くない!という健忘(電話したり、家族とは一見普通に話したりしている!!)や翌朝も眠気が残る持ち越し効果、特に高齢者の場合はふらつきから夜間トイレに行くときの転倒リスクが上がる、など注意しなければいけない副作用もあり、寝るために強い薬を使えばいい!というわけではありません。

◎睡眠の質

睡眠は大きく2つのフェーズに分けることができます。REM(レム)睡眠とnonREM(ノンレム)睡眠です。

REM睡眠:身体が休みをとり脳では情報処理を行う睡眠です。夢を見ているときの睡眠で、眼球が激しく動くことからRapid Eye Movementの頭文字をとってREM睡眠と称されます。REM睡眠が減ると身体の疲れが取れずに、記憶が定着しづらくなります。

nonREM睡眠:REM睡眠以外の睡眠状態を指し、4段階に睡眠の深さで分けられます。深い睡眠で、脳が休みを取るため、「深い睡眠」が減ると熟眠感がなくなり、身体的にも免疫が低下するなど悪影響が出て来ます。

これら2つの睡眠フェーズのメリハリで、睡眠の質が決まります。

睡眠薬はこれらのフェーズにそれぞれ異なった影響を与えます。

REM睡眠 浅いnon-REM睡眠 深いnon-REM睡眠
非ベンゾアゼピン系   →   →   ↑
ベンゾジアゼピン系   ↓   ↑   ↓
オレキシン受容体拮抗   ↑   ↓   ↑
メラトニン受容体作動    →   →   →

これを見るとベンゾジアゼピン系ではREM睡眠、深い睡眠共に減ってしまう=睡眠の質が下がる、ということがよくわかります。

当院では例えば飛行機に乗るから、時差を強制的に治したい、家庭の事情で一時的な不眠状態・・など短期間の使用が見込まれる場合は確実に効果が出やすいベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の内服を処方することがおおいですが、一方で比較的長期にわたる使用が見込まれる場合は、睡眠の質を改善できるベルソムラ、デエビゴなどのオレキシン受容体拮抗薬やより”サプリ”に近いメラトニン受容体作動薬であるロゼレムなどを試すことが多いです。

睡眠は日々の生活の質に非常に重要です。日本人は睡眠障害があっても受診率が低いことが知られています。お困りの時は是非気軽にご相談下さい。

 

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