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TIA (一過性脳虚血発作)~絶対に侮れない脳梗塞なりかけの状態~

TIAという病名、聞いたことはありますか?

Transient Ischemic Attackの頭文字・・なんのこったという感じかもしれません。日本語にすると一過性脳虚血発作・・

血液が不足することを医学的には”虚血”と表します。よって、TIA=一過性脳虚血発作は読んで字のごとく、「一時的に脳の血が足りなくなる発作」といえます。

脳の血管が詰まって細胞が死んでしまうのが脳梗塞ですが、その前段階で脳の血が一時的に足りなくなり→幸い復活した状態がTIAです。

一時的とはいえ、血流が不足しますので、脳は一時的にその機能を失います。したがって、脳梗塞と同じように麻痺が起きたり、言葉が出づらくなったり、ろれつが回らなくなったり、意識が悪くなったりすることもあります。

→脳梗塞についてはこちらをご覧ください

今回はTIAについて詳しくみていきます!

*TIAとは?

上述のように「一時的に脳の血流が足りなくなる発作」のことです。

一時的であることが条件のため、24時間以内に完全に回復します。(しなければ脳梗塞になってしまったということです)基本的にMRIをとっても脳自体に変化は見られません。(見られたら脳梗塞になってしまったということです)

 

*原因は?

脳梗塞と同じ危険因子がTIAの危険因子です。特に動脈硬化は非常に怖い原因で、首の血管が細くなっている場合、血圧の低下や脱水などで血液の量が減ることでぎりぎり流れていた血流が遮断されてしまう可能性があります。

 

*TIAになってしまったら?

TIAの怖いところは2つあります。

一つ目は症状がある間はそのまま脳梗塞になってしまうのか、TIAで済むのか判断できません。したがって、脳梗塞として治療を開始してしまう必要があります。具体的には出血の可能性を十分に評価したうえで血液サラサラの薬を始めることになります。

二つ目の怖いところは、幸いTIAで済むと症状は何もなくなります・・患者さんの多くが大したことなかったから、とたとえ病院に来ていても自宅に帰ることを希望されるのです。自宅で様子を見た方は来院しないこともしばしばあります。しかし、TIAは脳梗塞の前段階・・もしかしたら今にも詰まりそうな血管があるかもしれない、そういう状態を示しています。したがって、基本的に入院をして、血液サラサラの薬を使ったり、首の血管や心臓の不整脈を調べるなど、検査が必要です。それでも脳梗塞に至ってしまうこともありますが、やはり病院にいれば自宅にいるより素早い対応が可能です。時間が勝負の脳梗塞、いったん発症すると時に命にかかわり、寝たきり、車いすなど重度の後遺症を残しうるこの疾患、決して甘く見ないでください!というのは病院でも何度も説明の機会がありました。

治療としては、基本的に入院し、脱水があればすぐに点滴などで補正をしつつ、血液サラサラのお薬を開始します。さらに脂質異常症や糖尿病がうまく管理されていなければそれらにも介入を行います。脳梗塞に準じた治療を開始してしまうことになります。

*本当に脳梗塞になるの?

TIAを起こした人全例で脳梗塞をきたすわけではありません。しかし、リスクが高いのもまた事実です。以下、少し専門的な内容になりますが、興味のある方はご覧ください。

一言で言うならば・・TIAを起こした人のうち、一番リスクが高い人(糖尿病があったり、高齢であったり等々)は2日以内に8%くらいの確率で脳梗塞になってしまう、というデータです。

今元気な人が12人いたら2日以内に1人が脳梗塞になってしまう・・恐ろしい数字だと思いませんか・・。

~以下ちょっと細かい話~

まずはTIAを起こした方を以下で点数分けします。当てはまる場合に加点していきます。

ABCD2スコア

 

 

 

 

 

 

 

2日以内の脳梗塞のリスク(%)

合計点が・・

  • 0-3点 = 1.0%
  • 4-5 点= 4.1%
  • 6-7 点= 8.1%

さらに90日後まで見ると・・以下のグラフのようになります。点数が高いほどその後の脳梗塞の可能性も高くなっていることがわかります。

 

 

 

 

 

 

 

*最後に

防げるかもしれない脳梗塞は全力で防ぎたい、そう考えるとTIAはそのぎりぎりの場所にいることを示す身体からの警告です。ぜひ甘く見ず、期を逸せずに治療介入したいものです。

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