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SYMPTOM

眼のかすみ~原因と受診のタイミング~

眼のかすみ PC作業の多い現代人には避けがたい症状の一つかもしれません。視野全体や一部にもやがかかったように見えたり、ピントが合わない、ピント合わせに時間がかかる、などの症状があります。疲れ目、ドライアイであれば適切な休息を挟んだり、点眼薬でドライアイを予防する、コンタクトレンズを適正に使用する、などで改善が期待できます。一方で緑内障や加齢黄斑変性、網膜色素変性症、ブドウ膜炎などの眼の疾患でもかすみ目が起こるため、その可能性がある場合は早めの眼科受診が必要になります。

 

かすみ目とは

一般的には突発発症でない視力の低下を指し「視野がぼやける」「もやがかかったよう」などの表現をされることが多いです。数日や数時間単位で急速に視界がぼやけたり、見えなくなる場合、緊急の眼科疾患である可能性もあり、早急な眼科受診が必要です。

 

かすみ目のメカニズム

目がかすむメカニズムはいくつかありますが、人が“物を見る”経路のどこかに異常があります。

調節能の異常(近視、遠視、乱視など)

最も多い原因です。眼精疲労もここに含まれます。

眼は細かい筋肉がレンズである水晶体の厚みを調整し、適切な像を網膜という目の中にあるスクリーンに結ぶことでピントを合わせています。この機能が一時的に低下すると眼精疲労、かすみ目の原因となります。またそもそも構造的にピントが合わない近視や遠視もその悪化でかすみ目を来します。

目の中の異常(白内障、硝子体混濁、ブドウ膜炎、角膜損傷等)

光が目に入ると、角膜、水晶体、硝子体を通って網膜に到達します。したがって、この経路のどこかに濁りがあると、視力障害になります。

スクリーンである網膜の異常(網膜変性、加齢黄斑変性、網膜剥離など)

眼を通った情報が映し出されるのが眼球の後方にあるスクリーン、網膜です。ここに異常があれば、像を適切に結ぶことができず、視力の障害が起こります。

 

視神経の障害

網膜に入った情報は視神経、という太い神経を通って脳まで到達します。

この神経の障害も視力障害を起こします。怪我などで急に視神経が傷つく場合を除くと、

例えば神経の炎症や腫瘍などが視力障害の原因となります。

Ex)視神経炎、リンパ腫など

 

※眼精疲労について

疾患、とまでは言えないため、ここで解説してしまいます!

眼精疲労、とは目を使う作業(逆に目を使わない作業があるのか、とも思いますが)によって目の症状(かすみ目、眼痛)や目以外の症状(肩こり、吐き気、眼瞼痙攣等)が起こってくる状態です。合わない眼鏡の使用や近視・遠視・老眼などの基礎疾患があることも多いですが、やはり現代人、PC作業の増加は大きな原因となっています。

残念ながら特効薬はありません。眼鏡が合わない場合はしっかりと検眼して眼鏡を作り直す、遠視、近視などを放置しない、そしてPC作業は適切な高さ、視線で適切な休息をとりながら仕事をする、などが対策になります。

 

かすみ目を来す病気

先ほど挙げたメカニズム、にかかわる疾患がかすみ目を来すことになります。

白内障;加齢とともに増える代表的な疾患ですね。レンズである水晶体が濁ってしまいます。眼科で手術も行われていますので、気になる場合は是非近くの眼科で相談してみて下さい。

ちなみに神経内科医として人の瞳孔はよく見ていましたが、濁りがわかる場合も多いですし、片側の白内障症状が強い場合、瞳孔の大きさ左右差を来すことがあります。

 

ブドウ膜炎:稀ですが重要な疾患です。「ブドウ膜」という名前にぎょっとするかもしれませんが、眼球のいわゆる「白目」の下はブドウを剥いた時のようなザラザラした膜があり、それがブドウ膜と呼ばれます。ここに炎症を起こすと、炎症にかかわる白血球などの細胞が眼球内にもどんどん入るため、本来透明の液体部分(房水や硝子体)が濁ってしまい、かすみ目の原因となります。他にも眼痛や流涙(つまり涙が出る事)などの症状がありますし、自己免疫疾患の症状のこともあります。早急な眼科受診が必要な疾患の一つです。

網膜剥離:読んで字のごとく、です。眼球の内側、後方にへばりついている網膜というスクリーンが怪我やその他原因ではがれてしまいます。視野障害、飛蚊症を訴えることも多いですが、かすみ目、という訴えの方もいます。やはり早急な眼科での対応が不可欠です。一般内科での対応は困難です。

緑内障;眼球の圧が高まってしまい、網膜がその圧で部分的に傷害され、視野欠損を来します。視力低下を来しますので、やはり視野の異常だけではなく、視覚障害、かすみ目を訴える方がいます。急性緑内障発作は急激に眼圧が高まるため、強い頭痛や眼痛を来し、緊急で眼圧を低下させる治療が必要な病態です。いわゆる眼科緊急疾患、と呼ばれ、たとえ夜間でも休日でも急いで眼科受診が必要となります。

糖尿病性網膜症;残念ながら日本の失明原因の一番が糖尿病性網膜症です。細かい血管が豊富に分布する網膜は、糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病の恰好のターゲットです。特に糖尿病性網膜症は糖尿病の重大な合併症の一つ、糖尿病と診断されたら定期的な眼科での網膜の評価が必要です。急激な血糖の補正なども網膜には良くないことがあり、注意が必要です。そもそも糖尿病にならないことも目標としたいものです。

視神経脊髄炎 

稀ですが急速に進行し失明の危険性もある疾患です。自分の免疫が誤って自分を攻撃してしまうタイプの疾患で、自己免疫疾患の一つです。病名の通り、視神経だけでなく脊髄、時に脳にも病変ができるため、免疫が攻撃してしまった部分に合わせ、多様な症状が出現します。目のかすみだけでなく手足の脱力や痺れ感、頸部の痛み、止まらないしゃっくり等、いつもと違う症状がある場合は早めに内科、神経内科を受診してください。過剰になってしまった免疫を抑える薬でできる限り早い段階で炎症を止めるのが目標です。

 

チェックリスト

かすみ目、多くの方は眼科を受診されると思います。上でも述べたように、時に緊急で治療、介入が必要な病気もありますので、特に急速に進行する視力障害は早期受診をお願いします。

□いつからかすみ目が気になりますか?

□目の痛みはありますか?

□目に限らずその他の症状はありますか?

□今までされたお病気はありますか?(既往歴)

□今飲んでいるお薬はありますか?(内服歴)

 

最後に

内科の外来にかすみ目をメインの問題として受診される方は多くありません。一方で、そういえば、最近目がかすむんですが・・とおっしゃる方もいます。疲れ目であるなら、やはり必要なのは適切な休息です。きっと眼だけでなく身も心も疲れていると思います。是非身体を休める時間も確保してください。一方で何度も書いていますが、眼科に関わる緊急疾患もあります!目は障害が残ってしまうと生活に相当の不自由が生じる大事な器官の一つです。心配な場合は、問題ないことの確認も含め、早期受診をしておきましょう!

 

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