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SYMPTOM

便秘 ~原因と受診のタイミング~

便秘でお困りですか??患者さんの中にも便秘でお困りの方、とても多いと実感しています。

かくいう私も困っています!!かれこれ10年以上便秘とはお友達・・下剤なしでは出ない。1週間くらい出ない、なんてのも薬に頼らなければザラにありました。でも薬に頼りつつ、便秘解消後は体調、皮膚の調子など目に見える改善もあり、便秘解消の重要性を身をもって実感しています。

今回は一段と気合が入っています!原因、お薬に、チェックリスト、見ていきましょう!

 

便秘の定義

医学的に表現する場合、便秘の定義は以下のようになります。

「糞便の腸管内における異常な停滞あるいは通過時間の延長により,排便回数や排便量が減少した状態」

排便習慣は個人差も大きく、また食事内容によっても変化するため、例えば排便回数や量をきっちりと数値で決めることはできません。一般的には排便回数の減少(3〜4日以上排便がない),便量の減少(35g/日以下),硬い糞便の排出があり、本人に自覚症状があれば便秘、と言えるでしょう。

外来に、「いつもは毎日出るのに2日間出ていません!」と言っていらっしゃる方もいますが、腹痛や腹部膨満、嘔吐などなければもうしばらく様子見ませんか、と申し上げることも多いです。

 

排便メカニズム

そもそも、どうやって排便しているか・・から確認しておきましょう。

食事をとると、内容にもよりますが、概ね12時間程度で便塊となって大腸から肛門を経て排泄されます。大腸は部位ごとに名称がありますが、左下腹部あたりにある、直腸直前の部位がS状結腸です。S状結腸と直腸の間の筋肉は緊張性に収縮しているため,便塊は直腸に出ていかず、S状結腸に蓄えられることになります。これらの便塊を直腸に送り込む強い蠕動運動が食後(特に朝食後)に起こり,このために直腸壁が伸展する(伸びる)と,便意が引き起こされます。したがって,健常者では朝食後に1回便意を覚えることが多いです。便意が感じられると反射的にS状結腸下部から直腸壁の収縮,肛門括約筋(肛門を締めておく筋肉)の弛緩(ゆるみ)が起こり,ます。さらに,意識的に腹筋,横隔膜を収縮させることによって腹圧が高められ,排便が行われるわけです。

たかが排便ですが、とても細かい神経や腸管の動きの調整、コンビネーションで行われていることがわかります。

 

 便秘の原因

上記のように、排便はとても細かい神経が複雑にかかわりますので、便が通過する経路に異常がある(器質的)場合と、排便機能そのものに原因がある(機能的)場合に排便の異常が起こることになります。大きくは時間経過で考えた急性/慢性と器質性/機能性の二つの軸で分類するとわかりやすくなります。

 

急性+機能性;食事の変化、運動不足、旅行などの普段と異なる生活状況

→“普段”の生活が戻れば大抵改善してきます。

 

急性+器質性:炎症性腸疾患,肛門の疾患,膵胆道系疾患,子宮付属器の炎症など、

腹部臓器の疾患、重篤な感染症,脳卒中

→各原因への介入が必要です

 

慢性+機能性:この分類は、さらに細かく3つに分類できます。

弛緩性(腸がゆるむ)、痙攣性(腸が不必要な収縮をする)、直腸性(直腸の排便コントロール不全)です。

弛緩性;文字通り腸が緩んで動きが悪くなります。高齢者、低栄養など

痙攣性;特にS状結腸がギュッと不適切に閉まってしまい、通過障害を来します。過敏性腸症候群の方など。

直腸性;直腸に便が流入して壁が伸びると便意が起こるんでしたね。これを習慣的にいつも我慢していたりすると、直腸に便が入ってきても排便の動きが起こらなくなってしまいます。また、下剤の乱用もリスクです。

 

慢性+器質性:物理的に腸管が狭くなり、通過障害を来します。最も怖いのはやはり大腸がんです。他にも女性なら子宮や卵巣の腫瘍、腫大で物理的に腸が圧迫されてしまい、便秘になってしまうこともあります。

 

治療

便秘だけ、で受診される方はあまり多くありませんが、何らかの症状で受診され、+αの症状としてで便秘もあるという方は本当にたくさんいます。一部の薬による副作用や神経疾患では極めて頑固な便秘を来します。また、上述のように、特に大腸の悪性腫瘍(がん)による場合は速やかに専門科への受診が必要です。

したがって、便秘の場合、ただ単純に下剤を処方するだけでなく、便潜血を調べたり、他の疾患がないか念頭に検査を進める必要があります。ただし、そうはいっても多くの場合原因となるのは機能性の便秘です。その改善には、食生活、運動習慣、それでもだめなら下剤、が必要です。

 

食事:まず、あまりに食事量が少なければ便秘になります。そのうえで、日々の生活で注意できる事としては・・・

①水分は十分摂取

②食物繊維を摂取する

*食物繊維は大きく水溶性と脂溶性に分けられます。どちらも便秘解消に働きます。

③朝ごはんを摂る

④ビフィズス菌の摂取 定番ですが乳酸菌飲料等に含まれます

+さらに追加でオリゴ糖を摂ると腸内のビフィズス菌発育を助けます

 

運動;ランニングなど少し走っただけでトイレに行きたくなることはありませんか?運動不足では腸管の動きも鈍ります。せめて階段を使うとかウォーキングの習慣を始めるなど、動くようにしましょう。便秘以外にも効果があります☆

 

下剤;それでもだめなら下剤を使います。下剤は新薬も含め、たくさん種類がありますが、大きくは便に水分を増やして出しやすくするタイプと腸を強制的に動かして排便を促すタイプ、に分けて考えればよいでしょう。ただし、腸を動かすタイプの下剤は徐々に効果が薄れてくるため、下剤を手放せなくなったり、量を増やさなければ効果が得られなくなるということも考えなければなりません。腎臓の機能によっては使えない下剤もありますので、かかりつけの医師にしっかり確認する必要があります。

 

チェックリスト

便秘で受診したい場合、以下の項目をまとめておくと、スムーズな受診につながります。

□いつから便秘がありますか? 週単位?月単位?年単位?

□便に血が混じりますか?

□便秘と下痢を繰り返している、ということはありますか?

□今までにかかった病気はありますか?(既往歴)

□今飲んでいる薬はありますか?(内服歴)

□最近の体重減少はありますか?

□その他随伴症状はありますか? Ex)嘔気、嘔吐、発熱、腹痛 など

 

最後に

便秘、辛いですね。慣れてしまうと、1週間くらい出なくても「またか・・」と重くなった下腹部を抱えて普通に生活できてしまったりしますが、身体に良いはずがありません。食事、運動、この忙しい現代社会で完璧を目指すのは難しいです。個人的には①すっきり出る、②薬を使ってでも出す、③出ない、の順で好ましいと考えていますので、薬を使用してでも便秘はしっかり解消すべきであると考えています。慢性の便秘は大腸がんのリスクにもなります。便秘でお困りの方はあまり気負わずに近医を受診してください。もちろん当院でも診療を行います!

 

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